野球場からお手紙を
贔屓にしている球団を追って、本拠地以外の野球場へと遠征することが、年に数回ある。
新幹線や飛行機での移動を伴う時には、せっかくの機会だからと、宿に泊まって、周辺の観光地を巡ったりしている。
そんな私が、ある野球場に遠征した時のことだ。
野球場に併設しているグッズショップで、絵葉書や切手が、何十種類と並んでいるのを見つけた。すぐ近くには、手紙を書くための机や椅子も用意されている。
たまには、こういうお土産もいいかもしれない。自分用のお土産だ。
まずは、絵葉書を選ぶことにする。この店の絵葉書はどれも、宛先を書く面が白ではなく、薄い黄緑色をしていた。
どれにしようか三〇分くらい悩んでいると、店員さんが話しかけてくる。
絵葉書について、何か助言をしてくれるのかと思いきや、
「こちらの切手が、特にお勧めですよ」
形に特徴こそあるものの、それ以外は地味な切手を勧めてきた。
その切手、中央部分には「切手の料金」、あとは「日本郵便」や「NIPPON」という文字が並んでいるだけで、何の絵も印刷されていない。そんな手抜きのデザインだ。
ところが、この切手こそ、ここでの人気ナンバーワンだそうで、
「実はですね・・・・・・」
店員さんの話に納得した私は、その切手を買うことに決めた。
絵葉書を選ぶと、会計を済ませる。
そして、店内の机と椅子を利用して、自分宛ての絵葉書を仕上げた。わくわくしながら、レジ前のポストに投函する。
数日後、旅先から自宅に戻ると、あの絵葉書が届いていた。
すぐさま切手を確認する。
白くて丸い切手には、赤い縫い目のような消印が押してあった。
切手の周囲が薄い黄緑色をしていることもあり、野球のボールが芝生の上に転がっているようにも見える。
あのグッズショップのポストに投函した場合、こうして特製の消印を押してくれるのだ。
白くて丸いだけの地味な切手、だからこその演出だった。他の切手では、この感動は味わえないだろう。
私は自然と笑みがこぼれてきた。
次回は「セミの声」のお話です。




