見事な写真
夫がいない時に、女子高時代の友人が訪ねてきた。
先日の写真を整理しているタイミングだったので、「散らかってるよ」と言って居間に通す。
テーブルの上にあった写真、その一枚を友人が指先で拾い上げた。他にも複数の写真が散らばっていたのだけど、一番手前にあったので、目にとまったのだろう。
「これを撮ったのって、ご主人?」
そう言って、にこやかに笑う友人。
それを見て、私も笑った。
「見事な写真でしょ」
「ある意味、見事っちゃ見事だけど、ふふふふ。今の時代、こういう写真はなかなか撮れないよ。カメラの性能が、著しく向上しているから」
友人の反応は、私の期待を裏切らないものだった。
彼女の様子を少し観察してから、秘密の種明かしをする。
「それ、四枚目なんだよね。他の三枚と一緒にすると、見事な写真だってわかるよ」
私はテーブルの上から三枚の写真を選び取ると、友人の前に並べた。
どれも夫が野球場に行き、そこで撮ってきた写真だ。すべて同じ試合中のもの。
一枚目は、プロ野球の人気選手が打席でバットを振っている場面だ。それを外野席から撮影している。
二枚目では、選手の力強いスイングによって、空高くへと舞い上がるボール。
三枚目では、そのボールが落下し始めて・・・・・・。
「で、それが四枚目」
「あ! そういうことか! 笑ってごめん。たしかに見事な写真だよ、これは」
四枚目は、ボールが命中したところだ。それを至近距離でとらえた写真。
ピンぼけしていたり、レンズの前に指がかかっていたりと、素人目にも色々と「なっちゃいない」点はあるけれど、カメラマンの焦りが伝わってくる一枚だ。
カメラのレンズに、ホームランボールが直撃する瞬間にパシャリ! これを見事と言わずして、何と言おう。
「で、その時に壊れたカメラがこちら」
私はテーブルの上に、半分ほど潰れたカメラを置く。旧式のやつだ。
このカメラだと、焦点だったり、明るさだったり、さまざまな調整を自分でしなければならないが、味のある写真を撮ることができる。そのように夫はいつも言っていて、その正しさが今回、証明されたわけだ。
さらに私は話を続ける。
「夫が今度、カメラ仲間と一緒に、写真展を開くことになっていてね」
来場客による人気投票もあって、一位になれば賞金が出るそうだ。
私としては、これら四枚の写真と、壊れたカメラをセットにして、出展したいと考えている。
題名は『見事な写真』だ。夫は別の写真を出すと言っているので、妻名義での出展を予定している。
後日、写真展が開かれて、私の『見事な写真』は、来場客を楽しませた。
そして、めでたく人気投票の一位に輝き、賞金は全額、夫に渡した。
新しいカメラの購入代、その一部に使ってもらうのだ。
次回は「ドラフト会議、その翌日の教室」のお話です。




