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雪の降らない冬の街中で  作者: 鯣 肴


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17/17

最終話 雪の降らない冬の街中で

――3年後――


『なるようになった、てことかぁ』

『そうなるとは思ってたけどね』

『時間の問題だってね。けど、思っていたよりもだいぶ早かったみたいね』


 冬の晴れ空。大学時代いた町よりはるか南にある、雪の降らない何処かの街。何処かの飲食店。その一席に僕と彼女と、今でも最上の親友たちと朝から集って、先ほど、その集いが終わって、別れてきたところだ。


 街中を彼女と並んで歩いていると、街の中に公園があって、だから僕らは自然とその中へを入っていって、敷かれた散歩コースの中にあった、横長の椅子に並んで腰かけていた。


 馬引は、小さいながら会社を興して、社長をしていた。勿論、イベント会社。子供をターゲットにした、地域で人々を大きく大きく巻き込んでいって、子供の思いつきのようなイベントを全力で行う。


 この前招待された、おかし買い食い祭りはとても面白かった。昨今、子供が好きに駄菓子を子供たちで好きに買いにいったりするのは危なくなった昨今。子供たちの夢と、大人たちの、できればさせてあげたいという気持ちを汲み取って、平和に、安全に、形にしたイベント。


 今後も、企画から、イベント実行のお願いなど、色々と仕事が来ているらしく、嬉しい悲鳴を上げなならが最近は全国を駆け巡っているらしい。


 立子さんと冬実さんは、自分たちと同じ悩みを持つ人たちに、それを隠す必要なんてなくて、堂々と生きていけばいいんだ、人に迷惑をかけなくてもそうやって生きていけるし、自分に自信を持っていいんだっていう集まりの取り仕切りをしている。


 副業として、服のデザイナーもやっていて、そっちの方で、最近、その界隈で有名になってきているらしい。


 自信と裏打ち。だかこそ、二人の生きざまには説得力がある。


 僕にはできないことだ。三人のやることなすこと。ちょっと遠いところにみんな行ってしまったんだな、って思ってたけれども、こうやって久しぶりに会って話してみたら、三人とも何も、変わってなんていなかった。


 相変わらず暖かかった。生暖かかった。


「みんな、変わっていなかったわね」


 そう、僕からではなくて、雪ちゃんから言ってきた。


「そうだね。長いこと離れていたのに、みんなあんなに凄い人になっているのに、僕らにとっては、昔と同じ、変わらないみんな。……ばれて、たね」


「ふふ。そうよね」


『報告すること、があるだって? 何か当ててやろうか? 『僕たち、私たち、結婚します』、だろう? それ位しか無ぇじゃねぇか。それ飛び越えて、子供ができました、とか言うたちじゃねぇだろうし。結婚しましたっていう事後報告なんてますますお前らに限っては無ぇだろう。こうやって、変わらず、いや、益々そうやって隣り合っているのが自然に見えるお前らあんだ。それっきゃ無ぇよな?』


「でも、まだ、なんだよね。そこは気づいていなかったみたい。あそこで言うのは違うかなって思って言わなかったけど。はぁ」


 そう、息を吐きながら、僕は体を椅子に預けて、空を見上げた。雲ひとつない、透き通った空が広がっていた。


 隣の雪ちゃんも、僕と同じようにしていた。


「はぁ。よく晴れているわね。冬の晴れ間って嫌いだったけれど、今は好きなの。だって、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「どういうこと?」


 僕は空を仰いだまま、ぼそり、そう言った。


「分かってるでしょう?」


 彼女も空を仰いだまま、ぼそり、そう言った。


「こういうこと、だよ」


 僕は立ち上がり、彼女の前に立ち、その両肩に両手をかけた。そして、彼女の仰ぐ顔を、僕は上から見下ろした。


 彼女の表情は穏やかだった。少しばかり、頬は赤く染まっていた。しっかりと、決めなくては。僕にできるように。僕ができる限りで。そう、


「ずっと一緒だって、約束を結ぼう。この見渡す限り続く青空みたいに、永遠の約束を」


 思い浮かんだ、素敵な言葉で。


 彼女は素敵に微笑んで、目をつぶった。鈍い僕でも、色々と分かるようになっていた。これはとてもとても分かりやすいし、返答の言葉なんていう、僕の最上の想像よりも、彼女の提示したそれは、ずっと上をいっていて、提示されたら、それがいい、そうしたい。そう思えた。


 僕は両手を彼女の両肩から、両腕辺りまで下げていきながら、腰を低くしていきながら、彼女の横に膝をかけて、抱くように、キスをした。


 そのキスは、生暖かくて、少しばかり――涙の味がしたのだった。


 そうして――雪の降らない冬の街中で、僕と彼女は、結ばれたのだった。



【完】

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― 新着の感想 ―
[良い点] 雪が降っていないのに、 雪をイメージしてしまう美しさが 色々なシーンにあってしみじみと 読めました! 変わってなんかいなかった。って 場面がカタルシスだなあと思いました
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