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神の悪戯  作者: 羽毛 330
第一章 ペン回しをし続けた男
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7話 ルンルから見たルンル殺害事件



 ルンルは非常に平凡な男であった。


 彼は若い頃から使用人として屋敷を転々として働き続け、そのまま年をとった。


 彼は真面目に働き続けた上に温厚な性格だったため、周りからの評判も良く、誰からも好かれていた。


 ルンルはほかの屋敷では、使用人としてリーダーを務め、周囲からは信用されていた。


 しかし、そんな彼の使用人としての生活も終わりを迎えようとしていた。


 彼はもう来年定年であったのである。


 彼はその事を寂しく思いつつ、老後の生活を楽しみにもしていた。


「他国に旅に出るのが夢だったんだよ…各地を旅しながら、初めての『冒険』ってやつをしたいんだ。でも、孫たちとまったり遊ぶのもいいかもなあ…」


 と、彼は楽しい老後ライフを夢見ていた。


 彼に特段の資産や名誉があった訳ではなかったが、彼は心から幸せを感じていた。


 しかし、その幸せもその頃までの事だった。


 彼はある日、いつも通り飯田さくを起こそうとさくの部屋に行った。


 だが、さくはいなかったのである。


 その後は、あの日の朝と同じだ。


 彼はかににさくを探すと申し上げたが、かにには探すなと言われてしまった。


 彼は息子を大切にしているかにが、なぜそのような行為をとるのか理解できなかったが、彼に断る権限もなかったためかにの命令をそのまま受け入れた。


 他の使用人たちには命令通り、さくは病気で休養中と説明した。


 ルンルはかにに不信感を覚えていたが、だからと言って何か出来る訳でもなかったためそのまま自室にて眠りについた。





 翌朝目覚めると、気分もすっきりしていた。


「きっとさくは家出したに違いない。かににはそれを知って少しさくに悪戯を仕掛けただけだろう。きっとそうだ。いや、そうに違いない。今日の昼にでも、さくはのこのこ帰ってくるだろう。そして私はさくに、家出はもう終わりかい?、と言ってからかうのだ。そして、みんな笑ってまた元の平穏な生活に戻るのだ。」


 そうした楽観的な事を考えつつ、ルンルはいつも通りかにの部屋に、持病のための薬を受け取りに行った。


 薬局で買うと高くつくため、医学に精通しているかにから毎日無料で薬を受け取っていたのである。


「かに様は優しいお方だ。使用人である私の健康と金銭面に気を遣ってくれるのだ。」


 彼は改めて感謝を感じつつかにから薬を受け取った。


「かに様はいつも通り笑顔で私に薬を渡してくれた。ありがたいことだ…」


 だが、ルンルには一つ見落としがあった。


 かにの目が笑っていなかった事にルンルは気付けなかったのである。


 そして、ルンルは何も知らずにその劇薬を飲み込んでしまった……


 しばらくするとすぐ彼は心臓発作を発症した。


 彼はとてつもない痛みに薄れゆく視界の中で自分の死を悟った。


 彼は自身が夢描いた老後を思い出した。


 次に、心から愛していた妻と、娘、孫たちを思い出した。


 彼は心から絶望した。


「まだ、私の人生はこれから、なの、に……」


 そのままルンルは命を落とした。


 悲しくも、自身最大の夢が始まる直前に死んでしまったのだ。


 こうして働き続けた男の人生はあっけなく幕を閉じた。


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