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22 妹たちの涙

 リリエンタール邸のアトリエ。

 窓から射す柔らかな光の下、エレオノーラは黙々と筆を走らせていた。

 侯国に出すための新作。明るい色彩に、未来を託すような子どもたちの笑顔を描いている。


 控えめなノックが響いた。

「お姉様」

 入ってきたのは双子――セレナとカミラだった。


「どうしたの?」

 筆を止めて振り向くと、二人はもじもじと視線を交わし、やがて揃って頷いた。


「余計なこととは思いましたが、セレアと――」

「カミラは、やっぱりお伝えしたくて参りました」


 言葉を選ぶように息を整え、声を合わせる。


「景綱様はとても」

「とーっても素敵な方だと思います」


 エレオノーラは思わず目を瞬かせた。

「……そうね。お姉様もそう思うわ」


「だから――お返事をきちんとしてあげてくださいませ」

「逃してはなりませんわ」


「え……」

 戸惑う姉を前に、双子の声は次第に震え始める。


「景綱様は異国人です」

「普通の家であれば、お断りすべきです」

「でも我がリリエンタール家は、侯爵家といえど王国きっての名家です」

「必ずお守りできます」


「え……?」


「そ、それに」

「それに景綱様は……」


 ぽろぽろと涙をこぼしながら、二人は必死に言葉を紡ぐ。


「剣技もお強いのです。お姉様を守ってくださいます」

「心も豊かです」

「お髪も素敵です」

「お声も低くて心地よいのです」

「景綱様であれば」

「お姉様を絶対守ってくださいます」


 ついに双子は声を揃えて泣き崩れた。

「お姉様には……」

「幸せになっていただきたいのです」


 エレオノーラは耐え切れず、二人を力いっぱい抱きしめた。


 ――ただただ、心のままに絵を描いてきた。

 誰に何を言われても気にしなかった。

 絵が描ければそれで良かった。


 でも、自分が無関心でいたせいで、心を痛めてくれていた人の存在にも気づけていなかった。


 守ってくれる人を守るために。

 愛する人に応えるために。

 自分は、自分の足で立たなければならないんだ。

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