21 詩の告白
美術準備室。
エレオノーラは侯国に売り出すための新しい絵に向かっていた。
題材は、子どもたちの笑顔や、陽光に揺れる植物たち。
明るく、未来を感じさせるもの――そう決めて、手を動かしていた。
だが、ふと集中が途切れて顔を上げると……。
すぐ隣に座っていた景綱と目が合った。
「……!」
いつの間にそこにいたのか。
最近は気づけばいつも一緒にいる。
彼の赤い瞳は、真剣に彼女を映していた。
◇◇◇
静寂の中、景綱は低く囁くように王国語を紡ぎ始めた。
それは情熱的な愛の詩。
「……無味の雲は、空に溶けていく……
貴女を思えば……私は月となり……風となり……影となり……
貴女に跪き……ただただ、貴女を求める……」
燃えるような想いを告げ、永遠を誓い、彼女を唯一無二の存在として讃える言葉だった。
まだ不完全な発音がところどころ混じる。
けれど、その不器用さがかえって真実味を帯び、エレオノーラの心を激しく揺さぶった。
「っ……」
彼女は顔を真っ赤にして狼狽え、目を逸らす。
詩を終えると、景綱は真っ直ぐに言った。
「もちろんこれは……エレナ、貴女への詩だよ」
熱烈すぎる口説きに、エレオノーラは思わず鉛筆を取り落とした。
◇◇◇
その様子を、美術準備室の外で伺っていたアルベルトとエミリア。
「言葉が達者になられましたわ。素敵な詩でした」
「……愛だなぁ」
小声でやり取りする二人の横で、久蔵がハンカチを目に押し当てていた。
「若ぁ……お幸せに……」
「泣くなよ、護衛だろ」アルベルトが呆れる。
「……はい」
「気持ちはわかるけどさ」
「……はい」
エミリアはふふっと笑い、肩をすくめた。
◇◇◇
室内では、まだエレオノーラの頬が真っ赤に染まっていた。
逃げ場をなくすほど真っ直ぐな愛の言葉に、心臓の鼓動が止まらない。




