転校生の場合 5
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彼方は自分以外はみんな自分の超能力を使いこなせているのかと思っていたが、少数ではあるが、まだ自分の能力がわからない生徒もいた。
そういう意味で、彼方は特別に浮くことはなかったが、転入生である彼方にみんな興味津々であった。
逆に彼方は月之山学院の校則の多様性、または緩さ、更には、生徒教師の許容範囲の広さに驚いて口が塞がらない。
染髪は言うまでもなく、制服の種類が多かった。上衣は4種類、下衣はスカート、ズボン、ハーフパンツやショートパンツを入れて合計9種類。その上、ワンピースまで2種類あった。男子もスカートを選択できて、実際、スカートを履いている男子生徒がいる。
ここの価値観はきっと、外には通じないだろうと彼方は思う。
彼方はジョガーパンツのようなスボンに少し大きめのワイシャツと無難な格好をしている。
ここの色に染まらないぞと強く決心した。
彼方は転校生で超能力について無知であったため、入学式の後特別講座を受けることになった。
「超能力は大きく、分けて、2種類あります。心体、つまり人の体と心ですね、を対象とした超能力とー、それ以外を、対象とした超能力でーす。心体を対象とした超能力がどんな能力か、分かりますか?」
「いや、今日初めて聞くんで……」
教卓に立っているほんわかした教師、田中先生は初等部から来たのだという。表情を大げさに変えて、幼い子供の興味を引くように話している。
「間違ってもいいんですよー。自分で、考えてる事が重要なんです」
「……身体強化とか、ですか」
「せいかーい!聴力筋力などを強化する能力ですね。それ以外にも治癒、透視、変幻、変身することですね、があります。テレパシーみたいな有名な能力もこの能力になります。覚えといて下さいね。基礎中の基礎ですから」
「はい」
「じゃ、次に物を対象とした超能力がどういう能力か当ててみて下さい」
「炎、氷、水、雷を操る感じですかね」
「そうです!木とか鳥を操る人もいます。稀に、空間や時間を操作する超能力者もいます。いわゆる、瞬間移動や過去視の事ですね。そういった能力は貴重だから国の保護対象になります」
保護対象と聞いただけで、彼方は、牢に入れられ食餌から排泄まで全てを管理されているパンダを思い浮かべた。
「はーい。ここが重要ですよ。超能力はそんな簡単に操れる物ではありません!みんな、条件付きなのです!」
「……条件ですか?」
「そうです!聖書や経典を詠みながら使う、とか、目を閉じてる時だけ能力が使える、とかです!どんな条件でも、その能力又はその超能力者の為人からしたら、難しい、恥ずかしい物となっています。多いのが、変な喋りを求める条件ですね」
「変な喋り、ですか?」
「ええ、例えば、……ふふふふ、にゃんとつける事が条件だと。にゃんと言わないと能力発動しないから、『競走だにゃん』と言って、飛躍強化してスピード競走するんです。能力発動中はずっと、にゃん付けでいるんです」
「そ、それは……」
「女の子でも、恥ずかしいのに、男の子はなかなか言えませんね。ふふふふ……。だからこそ、幼い頃から免疫をつけるんです。そういう事もあって、例外もありますが、超能力者はメンタルが強いと言われています。……ふふふふ。まぁ、それでも、ふふふふ……、断固拒否する子はいるんです」
「でしょうね……」
田中先生は思い出しているのか、笑いを我慢できなくなっているようだった。
「わたしの条件も、そうなる可能性があるんでしょうか」
「そうですね。可能性は充分あります。割合が高いだけで、他の条件もいっぱいありますよ」
彼方は自分の能力が明確になったとしても、使わないでおこうと思った。
「自分の能力が知りたければ、条件をまず探さないといけません。それがどういう条件なのか誰もわからないのです」
「……どうやって、それが条件だとわかるんでしょうか」
「これから教えますが、能力者にしかない物質、イトスニ、をまず、感じる訓練をします。最初はイトスニがわからないと思いますが、体調や心情で大きく変化しているので、自然と分かるようになります。そこから、条件を達成すると、それが熱くなるんです」
彼方は基本暑がりだ。夏になれば、三リットルの水を飲んでも、体の奥から発熱しているように感じ、鼻血がしばしば出る。体温は36.5前後で普通なのだが、ともかく、体の奥が熱い。夏の農作などは、前世に何の業を背負ったのか、八熱地獄のようだった。冬でも、体の外側は寒いが、奥が暖かいから、寒さに強かった。
白菜、レタス、キャベツ、ほうれん草、トマト、スイカなどの体を冷やす食べ物が年中離せない。
「あー、条件が見つかりませんように……」
これ以上の熱さはいらない。感じたくない。じゃないと、きっと、彼方は顔を真っ赤にして、鼻血を出しながら、氷を出したり、風を吹かしたりすることになる。その上、語尾ににゃんとつけている。
そんな自分を想像して、ゾッとした。
恥ずかしい人というよりは、狂人認定されそうだ。
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