第40話 ストーカーに容赦? ご冗談を、火の粉は払って然るべきです
「くたばれッ! 国家の犬畜生が!!」
放たれる炸裂矢を、地面を蹴った瞬発力で回避。
爆発でえぐられる川を背に、互いに走りながら弓と拳銃を向け合った。
「『誘導』!!」
森向こうの崖上から飛んでくる弓矢全てを拳銃弾で次々に落とす。
サイレンサー越しに減音された発砲音が響いた。
相手はレアアイテムで加工した魔弓を使っているな?
様々な属性を付与できる上、威力も通常の弓矢より遥かに高いと聞く。
ただの剣士ならこの時点で狙い撃ちにされ、蜂の巣だろう。
しかし――――――
「達者なのは口だけかクロム? 1発も当たってないぞ!」
「ほざけ無駄飯食らい! なら――――これはどうだ?」
1本の輝く矢が直上へ放たれた。
放物線を描くにつれ、それは10―――20、30と増えていった。
「『レイン・アロー』!!!」
立ち止まり障壁を展開。
凄まじい数の矢が降りそそぎ、面制圧のような攻撃が行われた。
林道がさながら針山のように変貌した――――――
俺の周りだけを除いて。
「あれを防いだだと!? スケルトンメイジ群ですら全滅に追い込む技を......!!」
こちとら魔力だけは無尽蔵なんでな、対戦車ライフルくらいまでなら耐えられる。
林道から一気に森へ入り、崖上のクロムへ距離を詰めた。
――――
「あのクソ軍人め......!! 距離を詰めるつもりか」
高台に陣取るクロムは絶好の攻撃チャンスを2度逃し、森へ消えたエルドを血眼で探していた。
魔法は見たところほとんど使ってこない、銃とやらが矢を全て撃ち落としたことは彼にとっても驚きだったが、まだ許容範囲内。
「あれほどの攻撃を防いだんだ、もう魔力切れで付与魔法は使えまい。あとは見つけて射つ、それだけで終わる......!」
一瞬すら見逃さない、レベル63のアーチャー職としての自信はその強さから来るものだった。
おまけに魔法反射用のアイテムも持っている。
たかが王国軍魔導士1人、造作もないはずだった。
「見つけたぞぉッ!! そこかぁ!!!」
木の葉と見間違えるような草木の揺れを、クロムは見逃さなかった。
弓の照準を向け、一発必中を狙う。
だが――――――
「なにッ!?」
森から飛んできたのは石ころ。
反射的に射抜いたそれが、盛大に空中で爆発したのだ。
「付与魔法だと!? そんな、魔力が足りるわけがない!」
付与魔法――――特に『炸裂』の消費魔力は極めて激しく、クロムも最初に放った奇襲用の第1撃でしか使っていない。
そして、彼の眼前に広がる光景は常識はずれそのものだった。
『炸裂』の付与された石が次から次へと、矢継ぎ早に投げられてきたのだ。
「クッソ......!!」
食らってはひとたまりもない。
クロムは石を全て迎撃する。
結果、彼の視界は完璧に黒煙で覆い隠された。
「これが狙いかっ! どこから来る!?」
牽制しようとするも、煙を裂いて飛んできた弾丸がそれを阻んだ。
――――ダダダダダダダッ――――!!
「うおぉッ!?」
炸裂を付与されたアサルトライフルの弾が、クロムの足元へ連続で撃ち込まれ、崖が崩れたのだ。
巻き込まれることを避けるため緊急でジャンプ、森の中へ飛び降りた。
「ぐほぁッ!!?」
着地に失敗し、地面を盛大に転がる。
急いで起き上がろうとした時、目の前に黒い穴――――ショットガンの銃口が現れた。
「やっと相まみえたな、追跡魔さんよ」
「ちょ、まっ、待て......! 話せばわか――――――」
「問答無用」
彼のどてっ腹へ非殺傷弾が撃ち込まれた。