意識しているのは私だけ?
「…はぁ…喉乾いたわね」
放課後のベンチ。
私は自動販売機で買ったばかりのストロベリーティーを飲んで涼む。
可愛いを演出するためには可愛い飲み物。
これは定石。
でも、私はフルーツ系ならなんでも大好き。
好物すら可愛いなんて、可愛いに愛されすぎて可愛いの申し子と言って過言でもない。
可愛いがゲシュタルト崩壊してもおかしくないくらい私は可愛い。
そう。
私は、可愛い!
そんな私の隣には相変わらず涼しい顔でアルバが座っている。
彼女は運動部の助っ人を大活躍して終えたばかりで、首にタオルを巻きながら額にはうっすらと汗を浮かべていた。
その姿さえ信じられないほど“絵”になっていて、私はこちらを向いた彼女に思わず視線を逸らす。
そんな私を知ってか知らずか彼女は話しかけてきた。
「あ、いいな。それ、美味しそう」
アルバが私の手元をじっと見つめる。
そう言えば、終わってからすぐこちらへ来たので試合が終わってから今まで彼女が水分補給をしているところを見ていない。
私はおもむろに差し出しながら尋ねる。
「…飲む?あんたが喉乾いてるなら、一口くらいあげてもいいけど?」
私が何気なしに伝えた言葉。
それに彼女はぱあっと明るくなった。
「本当? ありがとう、リリィ」
アルバは私の手首をそっと掴んで固定するとそのまま身を乗り出した。
そして、私が今しがた口をつけていたストローをそのまま迷うことなく咥えた。
「……っ!!????」
(…え?よく考えたら、これ…。ちょっと待って?それって…!?)
ちゅーとストローから中身が吸われる小さな音が私の鼓動に混じって脳内に響き渡る。
アルバはぷはっと息を吐いて満足気に笑った。
「ふふ、これ、甘くて美味しいね」
「な…っ、ななな、あんた、それ、間接……っ!」
「え?どうかした?」
真っ赤になって口をぱくぱくさせる私にアルバは首を傾げた。
その瞳は残酷な程どこまでも無垢だ。
「…あ、もしかして、飲み方が汚かった?ごめんね、喉が乾いてて、つい…あ、ストロー、拭いた方がいい?」
「そうじゃなくて!!」
私は叫んだ。
彼女にとって、女の子同士で飲み物を共有するのは“お弁当のおかずを一個交換する”のと同じ!
ただの親愛の証のようだ。
そこに私だけが過剰に反応している“意識”なんて微塵も存在しない。
「…もう信じられない!あんた、誰にでもそんなことしてるの?」
「え?さすがに誰にでもはしないよ。…リリィだからだよ?」
アルバは私の目を真っ直ぐに見つめた。
…ずるい。
そんな“君は特別だよ”というニュアンスを本気で友情100%の善意でぶつけてくるとは…。
罪作りというか、なんて質が悪い。
「…っバカ!もう知らないっ!」
私は残りのストロベリーティーを奪い取ると一気に飲み干す。
そして、私は顔から火が出そうなのを隠すために空になったパックを握りつぶして歩きだした。
後ろから私の機嫌をどうして損ねたのか分からない様子のアルバがついてくる歩調にあわせながら。




