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狐のあくび  作者: はしご
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第26話「業火焔龍」


 魔王様曰く、諸々の手続きを済ませたあとに、他の最高幹部の六人と顔合わせを行い、私は第一軍に配属されるのだとか。


 今日はまた別の用事があるらしいけれど、後日あるという顔合わせの方は、正直気乗りしない。


 私は魔王様の力になりたいだけで、他の魔族と仲良くなりたい訳じゃない。顔合わせなんて、はっきりいって面倒だ。


 ここ数年ずっと心休まる暇もなかったから忘れていたけれど、私は元々面倒なことが大嫌いな性格なんだ。


 ・・・ああ、でも。


 レイヴンさんとまた久しぶりに会えるというのは、楽しみかもしれない。


「・・・っていうか、魔王様。どこに向かってるんですか?」


 顔合わせの前にしたいこととは何なのか、検討もつかない。どこへ向かっているのかと尋ねても「着いてからのお楽しみさ」とだけ言われて、行先は教えてもらえなかった。


 まあ、魔王様が連れていってくれるなら、どこでもいっか。


「それより、カゲハ。その仮面、なんで今も付けてるんだ?」

「魔王様がくれたから」

「そ、そうか・・・息苦しかったら、外してもいいんだからな?」

「はい」


 そんな気遣いまでしてくれるとは、やっぱり魔王様は優しい。


 けど、これを外すつもりはない。これは魔王様が私にくれた大事なものだ。もし外してどこかに行ってしまったら大変だ。あの後、これが見つからなくて大変だった。結局魔王様が持っていたけれど。


 一応、理由はそれ以外にもあるけどね。


 たとえば、この仮面は何かしら私を守ってくれる魔法が組み込まれているらしいし、護身のためにも付けておいた方がいいだろう。


 そして何より、これを付ければ私の素顔は分からない。今はあまり、元クラスメイトたちとは会いたくないし、もし会ったとしても気付かれたくない。


 クラスメイトに知られる可能性を無くすためにも、私の顔を知っている人は少ない方がいい。だったらいっそのこと、隠してしまった方が都合がいい。ということだ。


 まあ一番の理由は、魔王様のプレゼントを四六時中身につけていたいっていうのなんだけど。


「・・・なんか危険な方向に成長してしまったなぁ」

「あれ、今なにか言いました?」

「いいや、何でもない」


 何か言われた気がしたけど・・・気の所為かな。


 私は意識を切り替え、馬車の外を眺める。馬車に乗るのは二度目だ。でも、最初みたいな不安はない。なぜなら、魔王様がいるから。


 馬車がどこへ向かうのかも分からないまま、気付けば私は眠ってしまっていた。



  ◇◇◇



「・・・んっ?」


 なんだか暑い。いや、暑いというより───熱い。


「なに、これ」


 ゆっくりと目を開けると、そこは火の海だった。


 ・・・どういうことだろう。つい先程まで私は魔王様と一緒に馬車に乗っていたはずだ。たぶん、心地よくて寝てしまったんだろうけど・・・起きたら火の海って、さすがにそれはおかしい。


 しかも、見た感じここは洞窟の中のようだ。ますます意味が分からない。


 私は取り敢えず目を瞑り、周囲の魔力や空気を感じ取った。そして、すぐに気が付く。この炎・・・人為的に魔法で作られたものだ。


 つまり、誰かが私を意図的にこの炎の中に閉じ込めたということだ。


「・・・魔王様ー? いますかー?」


 返事はない。それに、この炎の放つ魔力のせいで、周囲の魔力を辿りづらい。


 こんなの、一体誰が・・・


「────え?」


 瞬間、炎が形を歪め、私目掛けて降り注いできた。まるでそれは、巨大な槍のように、私の命を狩ろうと飛んできた。


 もし、これに当たったら、私は・・・死ぬ。


「くっ!!」


 考えるより先に、体を動かせ。


 炎が触れるすんでのところで、私は身体をそらし、なんとか避けた。・・・危なかった。けど、これで確定した。


 この炎は間違いなく、私に対する”攻撃”だ。


 誰かが、私を苦しめようとしている。私を傷つけようとしている。


 なら・・・─────邪魔者は、殺す。


 幸い、魔王様からもらった刀は腰にある。だったら、怖いものなんてない。それに・・・今の私の力がどれくらい通じるのか、試してみたい。


 だって、あんな人間の雑魚兵士相手じゃ、物足りなかったから。


「・・・あははっ」


 炎は静止することなく再び私に襲いかかる。けど、今度は躱さない。代わりに刀の鞘を握りしめる。この炎は魔法だ。つまりは魔力でできた力だ。


 だったらそれは、斬れる。私なら。


 さあ、感覚を研ぎ澄ませ。全身の魔力を、刀身に注げ。満たして、満たして、満たして・・・刃を作れ。


 そして、全て────



「────壊れろ」



 抜刀。


 全身の魔力を込めた、迫真の一撃。


 それは空を切り、襲い来る炎を斬り裂いた。よし、上手くいった・・・けど、どうしよう。勢い余って、洞窟の天井まで斬ってしまった。


 まずい。洞窟が一部崩れ始めた。こ、これ、魔力障壁で防げるかな。でもさっきので結構魔力を・・・



「─────これはまた、派手にやったのぉ」



「え?」


 その時、洞窟に声が響いた。これは魔王様の声ではない。男性の、それも老人の声だった。


「・・・っ!? 炎が・・・」

「この攻撃力、話には聞いていたが凄まじい」


 なんの前触れもなく、炎が消え去った。しかしその代わりに、一人の老人が現れた。


 老人の頭部からは、二本の角のようなものが生えている。それは、レイヴンさんのような鬼人のものとは違う。龍の、角だった。


「だが・・・ちと計画性に欠けるな。それにコントロールも拙いのぅ」


 瞬間、凄まじい”業火”が老人から放たれた。


 それらは崩落した岩石を破壊し、そして────吹き飛ばした。たった一瞬、たった一撃で、降り注いできた岩石を消し去ってしまった。まるで蒸発したかのようだ。


 ・・・ありえない。なんて力なの? こんなこと、普通できる? でも、目の前の老人は平然とやってのけた。


「まったく全部崩れたらどうするつもりじゃったんだか・・・」

「あなた・・・何者?」


 この感覚、初めてじゃない。


 レイヴンさんや、魔王様と出会った時に感じたのと同じ・・・圧倒的なまでの、強さだ。



「ほっほっほ。お主とは初めましてじゃな。儂の名は、オルヴァ・レングウ。魔王軍第一軍に所属しておる。よろしくの」



 ま、魔王軍!? この人、魔王軍の人だったんだ・・・。っていうか、第一軍ってことは、最高幹部じゃないか。


 道理で魔王様やレイヴンさんと同じような感じがするわけだ。・・・すごい。これが、最高幹部の実力なのか。やっぱり規格外だ。


「やあカゲハ。驚いたかい?」

「魔王様!」


 顔を上げると、岩陰から魔王様がひょこっと顔を出した。もしかして、ずっとそこで隠れていたんだろうか。少しも気が付かなかった。あの魔王様の気配が分からないなんて・・・それほどに、彼の魔力の濃度は凄まじかったんだろう。


「あの、魔王様・・・どうして、こんなことを?」

「最高幹部の皆に紹介するより前に、彼に君を紹介したかったからな。ただ、普通に会うだけじゃつまらないだろう? まずは君の実力を直接見せてあげようと思ったのさ」


 紹介? 確かに、最高幹部の人と顔合わせをするとは聞いていたけれど・・・なぜ、わざわざこの人だけ先になんだろう?


「えっと、オルヴァさんは最高幹部の中でも、何か特別な役職だったりするんですか?」

「んー。まあ、それもあるな。彼は《業火焔龍》と呼ばれる、我が軍最強の魔族だからな」

「最強・・・!?」

「ほっほー。魔王様にそう言っていただけるとは、光栄じゃのぅ」


 業火焔龍・・・確かに、先程の炎は凄まじかった。正直、次元が違うとさえ思わされた。


 魔王軍最強ってことは、あのレイヴンさんよりも強いということになるけれど・・・あれを見せられれば、それも納得できてしまう。


 ということはつまり、第一軍のリーダー的存在だから、先にしたってことなのかな?


「ただ、理由はそれだけじゃないさ」

「え?」


 言葉を失っていた私に、魔王様はニヤリと笑った。


「改めて紹介しよう。彼はオルヴァ・レングウ。今日から、カゲハのおじいちゃんになる人だ」





 ・・・・・・・・は?





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