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没落令嬢は護衛騎士と旅に出ます  作者: つきのくみん
第1章 旅立ちまでの物語
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11 ずっと俺のそばに

 マリアは、結婚の話をルーファスは知っているのかが気になった。彼にも、エドと同じように、自分のことを心配してほしかったのかもしれない。


 出会った当初は、ルーファスの悲しみを癒すために、マリアが彼を抱きしめていたが、今では彼の方が彼女を抱きしめることが当たり前になっていた。

 そのため、彼女はおねだりするように抱きついた。彼の腕の中は安心できる特別な場所だったから。


 今日もマリアはルーファスに抱きしめてもらい、腕の中で安心感に包まれながら思いきって尋ねた。


「ねぇ、ルーファス、私の結婚についてのお話が出てるのは知ってる……?」


 彼は少しだけ驚いた様子で頷いた。


「はい、知っています。ですが、お嬢様はその話を直接ギルバート様から聞かれたのですか?」

「いいえ、エドが教えてくれたのよ。セバスとドリーが話していたのですって」


 ルーファスはエドを一瞥し、彼に聞こえるようにため息をついた。ルーファスのため息に、エドがまたびくりと反応していた。昔からそうだが、エドはルーファスを怖がっているところがある。

 マリアにはその理由はまったく理解できなかったけれど……。


「ギルバート様はお嬢様の意思を尊重されるお方です。仮にそういう申し込みがあったとしても、お受けするかどうかはお嬢様に聞いてからにするでしょう。ギルバート様に直接聞いてみてはいかがですか?」


 ルーファスはマリアの不安を拭いさるように、彼女の頭を優しく撫でた。


 マリアはルーファスの大きな手の温もりに、鼓動がはやくなるのを感じた。胸のざわめきをもてあましながら、彼女は勇気を振り絞って彼に問いかけた。


「そうね、お父様に直接聞いてみるわ……。でも、もしもこの話が本当で、私が結婚してしまったら……ルーファスは寂しいって思ってくれ……る……?」


 マリアは自分から尋ねておきながら、ルーファスの答えを聞くのが怖くて、最後の方は消え入るような声になってしまった。彼の顔を見るのが怖くて、彼女はすっかりうつむいていた。


 でも、ルーファスはそんなマリアに微笑んで、耳元でそっと囁いた。弾かれるように顔を上げると、紺碧の瞳とぶつかり、頭の中で彼の声がリフレインする。


「マリア……昔、ずっと俺のそばにいるって約束しただろう……?」


 マリアはその甘い声音を思い出すと、なんだかルーファスに抱きついたままではいられなくて、そっと身体を離した。

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