第46話 夜中の散歩
海の近くにある宿だからね。
「・・・眠れん」
真夜中、俺はなぜか目がさえて眠れなかった。いや、理由は明白である。
「むにゅう・・・ラル様・・手がぁ・・・」
「迫ってくるのじゃ・・・二つなぎの手が・・・」
「鬼神様・・・負けじと私たちも・・・」
なんの夢見ているんだこいつら。
今、泊まっているこの部屋にて、ソティス達も一緒に寝ているのである。
今は転生して鬼神とはいえ、精神は転生前の健全な男子高校。
美女ともいえる女の子たちに囲まれて眠れるわけがない。理性を保つのに必死である。
「仕方がない、ちょっと散歩してくるか」
眠れないのでとりあえず彼女たちを起こさないように部屋を出て、俺は海岸沿いを少し歩くことにした。もちろん、金棒は忘れずに。
ざざーん ざざーん
「波の音はどの世界でも同じ感じだな・・・」
この世界の月の光も前世とはあまり変わってない。ここが一瞬異世界だと忘れそうにはなるが、たまにモンスターの影が見えるから異世界だと再認識する。
海岸沿いを歩きながら俺はふと思った。前世・・・いや、地球での家族はどうなっているのだろうかと。
あの嫌なオヤジは別にどうでもいいとして、下の妹たちなどが少し心配になった。ついでに高校での悪友なんかもな。ついで扱いなのは・・・まあ、どうでもいいかな?あいつがこの世界の今の俺の状況を見たらうらやましがるだろうが、これでも結構理性頑張ってんだぞ。
もしかしたら下の妹たちは俺の代わりに家を継がされるかもな。いや、あの親父は男以外は認めなかったな。他のところに嫁がせてその男に・・もないか?養子の点もだな。あの親父、確か血縁なんかにもこだわっていたな。親戚とかの手段を思いつくだろう。頭が悪くなければな。
「ん?」
ひょっこ ひょっこ ひょっこ
何かが海岸沿いに向こうからきている。あれは・・・・。
「手!?」
怪談話に出てきた手をつなぎ合わせている手だった。あの話まじだったのかよ!!なんかもう骨だけになっているが。
そのまま仲よさそうに手をつなぎ合わせた骨の手たちは俺のそばを通り過ぎてそのままどこかへ行った。
・・・見なかったことにしようか。これ話したら絶対にあいつらまた怖がるからな。
にしても、死んだ後もああやって仲睦まじくか・・・。俺は鬼神。この世界でああいう感じに愛し合えるような相手はできるのだろうか?寿命の違いなんかがあるからな・・・・。
ん?ソティス達?今のところは大事な仲間だよ。今のところは・・・・。
そのあと、深く考えるのもやめ、すぐに宿の布団に戻ったのであった。念のために布団を離れさせたけどな。寝相なんかで来られたらいろいろ困る。
「うーん、手がぁ、手がぁ」
「迫ってくるのじゃ・・・」
「もっと密着してくださいませ鬼神様・・・」
お前らまだわけのわかんない夢みてたの?
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ラルが布団に入ったそのころ、上空を飛んでいるものがあった。
「ううっ・・・暗いです怖いです・・・でも、お兄様の気配が近いです・・・」
そういいながらそれは飛んでいった・・・・
悪友?それはまた別の話に出てくるよ。




