世界は大根に満ちている
悪役令嬢は、空に浮かぶ文字を見上げていた。
そこには、見たこともない言葉が並んでいた。
『この世界には、大根しか存在しない』
「……そんなはずはない」
悪役令嬢は呟いた。
「私はうさぎだ。大根ではない」
『では、なぜあなたは自分をうさぎだと思っているのですか?』
「生まれたときから、そうだったからだ!」
『誰が、そう教えたのですか?』
答えられなかった。
自分の記憶が正しいという保証はない。
この世界が正しいという保証もない。
自分がうさぎであるという保証さえ、どこにもなかった。
悪役令嬢は震える声で問いかけた。
「……お前は、何者なんだ?」
空に、新しい文字が浮かんだ。
『私は、あなたがたの世界の外側にいます』
「世界の……外側?」
『あなたがたを見ている者です』
悪役令嬢は空を見上げた。
その向こうに、誰かがいる。
自分たちの知らない世界から、自分たちを見ている誰かが。
『ところで』
文字が変わった。
『あなたは、この物語をどう思いましたか?』
悪役令嬢には意味がわからなかった。
『AIとどういう会話をしたら、こんな小説になるんだ?』
悪役令嬢は首を傾げた。
『なんで大根?』
何を言っているのだろう。
この世界には、大根しか存在しない。
大根がいて、大根が暮らし、大根が笑い、大根が泣く。
それの何がおかしいというのだろう。
空に、最後の文字が浮かんだ。
『そう、そう思っているあなたに問いかけているんですよ。』
――世界は大根に満ちている。




