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ROUND1 俺は異世界で格ゲーのキャラになった

 宇野六郎(ろくろう)、39歳。

 独身。彼女なし。


 趣味——最近は特になし。

 仕事——会社員。

 特技——昔はあった気がする。


 俺はそんな、どこにでもいるようなサラリーマンだった。


「……眠い」


 朝の通勤。六郎は欠伸を噛み殺した。


 今日も仕事。

 明日も仕事。

 昨日も仕事だった。


 会社では上司に仕事を押し付けられ、部下からは相談を持ちかけられ、定時を過ぎれば「宇野君、悪いんだけど、これだけお願いできる?」という魔法の言葉。


 そして帰宅するころには、もう何かをする気力なんて残っていない。


 休日だって似たようなものだった。


 昼まで寝て、適当に飯を食って、動画を眺めて、気付けば夜。

 ——また月曜日。


「……退屈だな」


 駅へ向かう道を歩きながら、六郎は小さく呟いた。


 仕事して、納税して、また仕事して——

 こんなことがしたかったわけじゃない。いつから社会に飼い慣らされるようになったんだろう。

 

 ありふれた日常が幸せだというやつもいる。否定はしない。


 だけど——


 ふと、昔のことを思い出す。

 まだ10代だった頃。


 学校で遊んで、宿題も適当にやって、それから友達とよくゲーセンに通っていた。


 そこには格闘ゲームがあった。


 筐体の前に座り、50円玉を投入する。


 レバーを握る。

 ボタンを叩く。


『ROUND 1——FIGHT!』


 画面の中のキャラクターが激しくぶつかり合う。


 勝てば——

『っしゃあ!』


 負ければ——

『今のハメだろ! ノーカンな』


 友達とそんなことを言い合って、腹を抱えて笑った。


 上手いやつには敵わないし、大会に出るほどの腕前もない。


 でも、毎日楽しかった。


 目の前のゲームだけに夢中になっていた。

 躍動するキャラクターに、小気味いい電子音に、爽快感に、沸き立つ友達に——

 

 俺は熱中してた。


「……みんな、今頃どうしてるかな」


 結婚しただろうか。

 まだゲームをやっているだろうか。


 もう誰とも連絡を取らなくなって久しい。


 あの頃は良かった。

 本当に、楽しかった。


「……戻れたらな」


 そんなことを考えながら、六郎は歩いていた。


 ——そのときだった。


「危ない!」


 誰かの声がした。

 六郎が顔を上げる。


 小さな男の子が、転がったボールを追いかけて道路に飛び出していた。


 そこへ一台の車が迫る。

 止まる気配はない。脇見運転だ。


「——ッ!」


 考えるより先に、身体が動いていた。


「チッ!」


 六郎は道路へ飛び出した。


 男の子の身体を思い切り突き飛ばす。

 少年が道路脇へ転がる。


 そして、六郎の視界いっぱいに、迫りくる車体が映った。


 ——ドンッ!


 鈍い音。凄まじい衝撃。

 身体が宙に浮く。


 世界が回る。

 遠くで誰かが叫んでいる。

 

 ——ああ。

 死ぬんだな、俺。


 薄れていく意識の中で、六郎は妙に冷静だった。

 思えば、ろくでもない人生だった。


 仕事ばかり。

 恋愛もなし。

 結婚もなし。


 大した夢もなかった。

 何かを成し遂げたわけでもない。

 何も残せなかった。


「……ひどく……退屈な人生だったな」


 ——だけど。


 最後に、子供を助けることはできた。

 まあ、悪くはないか。


「……俺の人生にも……何か意味は……あったのかな……」


 そして——

 六郎の意識は、完全に途絶えた。


 

   ◇ ◇ ◇


 

「……ん?」


 目を開ける。


「…………」


 青い空。

 白い雲。


 そして、妙に鮮やかな緑色の草原。


「……は?」


 六郎は身体を起こした。


「…………ここ、どこ?」


 見渡す。

 

 道路はない。

 ビルもない。

 電線もない。


 そして何より——


「なんだ、この景色……」


 遠くには巨大な山。

 その麓には森が広がっている。


 現代日本ではまず見ない光景だった。


「……俺、死んだよな? 天国?」


 少なくとも地獄ではなさそうだ。

 

 身体を触る。

 どこにも怪我はない。


 そして、妙なことに気付いた。


「……若返ってる?」


 近くにあった水たまりを覗き込む。


 そこに映っていたのは——

 20歳くらいの青年だった。


「…………誰?」


 思わず水面に手を伸ばす。


 当然、そこに映る青年も同じように手を伸ばす。


「俺……だよな?」


 顔を触る。

 水面の青年も顔を触る。


「マジか……」


 六郎は頭を抱えた。


 そして、ようやく一つの可能性に思い至る。


「……これ、最近よく聞くやつか?」


 異世界転生。

 死んだ人間が別の世界へ生まれ変わるアレ。


「いやいやいや」


 六郎は苦笑する。


「そんなことあるわけ……」


 しかし、目の前の光景を見れば、否定するほうが難しかった。


 剣と魔法。

 中世ヨーロッパ風の街。

 異世界ファンタジー。


 もし本当にそういう世界なら——


「ステータスとか……出たりするのか?」


 六郎は右手を前に出した。


「ステータス、オープン!」


 何も起きない。


「……」


 もう一度。


「ステータス!」


 何も起きない。


「メニュー!」


 何も起きない。


「……鑑定!」


 当然、何も起きない。


「……ですよねー」


 六郎は肩を落とした。


 どうやら転生したからといって、都合よくゲームのようなステータス画面が出るわけではないらしい。


「じゃあ魔法は?」


 手のひらを前に向ける。


「ファイア!」


 何も起きない。


「ファイア!!」


 やっぱり何も起きない。 

 というか、恥ずかしくなってきた。


「……俺、ただ若返っただけ?」


 そのとき、ふと、頭の中に妙なものが浮かんだ。


「……ん?」


 それは——


 レバー。

 そして、いくつかのボタン。


「…………」


 六郎は眉をひそめる。


「アケコン……?」


 ゲームセンターで何百回、何千回と触ったもの。


 レバーとボタン。


 格闘ゲーム用のアーケードコントローラー。


「なんだ、これ……」


 念じてみる。

 すると、僅かにレバーが動いた。


「……え?」


 六郎は固まった。


「……操作できるのか?」


 しかし、それが何を意味するのか分からない。


「いや、まさかな」


 怖くなって、六郎は操作を止めた。


「とりあえず……最強スキルとか、そういうのはなさそうだな」


 ——残念だ。

 

 異世界転生したからといって、全員が全員チート能力をもらえるわけではない。

 そういうこともあるだろう。


 そう思っていた。


 魔物と戦闘になるまでは——


 

「きゃあああああっ!」


「——!」


 六郎は顔を上げた。

 声がした方向を見る。


「……何だ?」


 女の子の悲鳴。


 明らかにただ事ではない。

 六郎は走り出した。


 

   ◇ ◇ ◇


 

「グルルルル……!」


 森の中。

 そこには巨大な熊のような魔物がいた。


 体長は2メートルを超える。

 

 太い腕。

 巨大な爪。

 赤く光る目。


「な、何なのよ……こいつ……!」


 女の子が杖を構えている。


 長い栗色の髪。

 白い肌。

 青いローブ。


 年齢は10代後半くらいだろうか。


 その隣には、白い法衣を着た女の子。


 金色の髪を肩まで伸ばし、胸元で祈るように手を組んでいる。


「リディア! 私の後ろに!」


「でも、エレナさん……!」


「いいから!」


 二人とも明らかに怯えていた。


 六郎は物陰からその様子を見ていた。


「……異世界、マジかよ」


 魔法使い。

 僧侶。


 そして、魔物。


「いや、感心してる場合じゃない」


 あの二人だけでは勝てない。

 素人目に見てもわかる。


 獰猛な獣。

 鋼のような身体。

 分厚い外皮。

 

 並の魔法は通用しないだろう。


「よくわからんが、屈強な戦士とかそういう前衛が戦うやつだろ、これ」


 六郎は自分の身体を見る。


「俺が行ったところで……」


 格闘技の経験なんてない。

 喧嘩すらほとんどしたことがない。


 39年間、争いとは無縁に生きてきたのだ。


 こんな化け物と戦えるはずがない。


「……無理だろ」


 怖い。

 足が震える。


 それでも、六郎は一歩踏み出した。


 魔物と二人の間に割って入る。


「え……?」


 魔法使いの女の子が目を見開く。


「あなた……?」


「に……逃げてください!」


 僧侶の女の子が叫ぶ。


 六郎は答えなかった。

 ただ両手を広げ、二人を背中に隠す。


「……怖いな」


 正直に言えば、逃げたかった。


 ——でも。


「見過ごすわけにもいかないだろ」


 どうせ一度死んだ身だ。


「どうにでもなれ」


 魔物が唸った。


「グォォォォッ!」


 次の瞬間。


 巨大な爪が振り下ろされた。


「——ッ!」


 ドンッ!


 六郎の身体が吹き飛んだ。


「きゃあああっ!」


 地面を何度も転がり、木に激突する。


「そ、そんな……」


 二人の顔が青ざめる。


 あれだけの攻撃をまともに受けたのだ。

 無事で済むはずがない。


「し……死んだ……」


 二人ともそう思った。


 だが——


「痛っっっ——」


 六郎は、むくりと立ち上がった。


「——ったくない!?」


 身体を確認する。

 無傷。かすり傷一つない。

 痛みもまったくない。


「「ええええええーーーーっ!?」」


 女の子たちが同時に叫んだ。


 六郎自身も驚いている。


「いやいやいや! 今の絶対死んだろ!」


 熊よりも大きい化け物の一撃。

 

 それを受けてなんともない。

 普通に考えればあり得ない。


「ダメージを受けないのが俺の能力?」


 そのとき、六郎はあることに気づいた。


「……あれ?」


 頭の中に、先ほどのものが浮かんでいた。


 レバー。

 ボタン。


 そして、その上に一本の黄色いゲージがある。

 それが4分の1くらい赤くなっている。 


「……減ってるってこと?」


 このゲージ、見覚えがある。

 というか、よく知ってる。


「体力ゲージか」


 六郎の中で、何かが繋がった。


 ダメージは受ける。

 だが、俺自身(プレーヤー)に痛みはない。


 体力ゲージが残ってる限りは死なない。


 一つの仮説が成立する。それはつまり——


 次の瞬間。

 魔物が再び突進してきた。


「考えてる暇はない!」


 六郎は頭の中のレバーを握る。


 そして——

 

『↗』カチャッ。


 右上方向にレバーを動かす。


 すると——

 

「——え?」


 身体が跳ねた。


「うおっ!?」


 六郎の身体が、あり得ないほど高く飛び上がる。


 魔物の頭上を飛び越え、そのまま軽やかに一回転して、魔物の反対側に着地。


「…………」


 六郎は目を丸くした。


「今の……」


 身体が勝手に動いた。

 まるでゲームのキャラクターのように。


 それなら——


 頭の中のボタンを見る。


 右上にあるボタンを押す。


『強P』カチャッ。


「——ッ!」


 身体が勝手に動く。

 腰を落とし、拳を引き——


「せいっ!」


 正確無比な正拳突き。

 ズシンと六郎の拳が魔物の水月(みずおち)に突き刺さった。


「グォッ!?」


 巨体がよろめく。


「効いた……!」


 続けてボタンを弾く。


『強K』カチャッ!


「はぁっ!」


 六郎の右足が綺麗な弧を描く。

 鋭いハイキック。

 魔物の頭部を捉える。


 スパァンッ!!


「グルァッ!?」


 魔物が大きく仰け反った。


「…………」


 二人の女の子たちは唖然としていた。


「素手で……魔物と戦ってる……?」


「すごい……」


 六郎自身も驚いていた。


 だが、それ以上に——


 六郎は歓喜していた。


「すげぇ……」


 口元が自然に笑う。


「やっぱりそういうことか」


 これは格闘ゲームだ。

 レバーとボタンで思い通りの技が出せる。


 そして、自分自身が格ゲーのキャラ。

 子供の頃、夢見たようなシチュエーションだ。 


「この条件なら——」


 六郎の目が変わった。


「——俺は負けない」


 敵は重量級。

 ならばインファイトは禁物だ。


 昔、幾度となく戦ってきた。

 この手の相手に対する基本戦術。


「まずは距離を取る」


 レバー入力。


『←←』カカッ。


 バックステップ。

 身体が素早く後ろへ跳ねる。


「速い……!」


 魔法使いの女の子が目を見開く。


「次は——これだ」


 指が自然に動く。

 

『↓↘→+P』カチャッ。


 構えた両手の間に、青白い光が集まる。


「《波動拳》!」


 真っ直ぐ突き出された六郎の両手から光の球が放たれ、一直線に飛んでいく。


「魔法!?」


 魔法使いの女の子が叫ぶ。

 

 光の球が魔物に直撃する。


 ドォン!

 

「グォォッ!?」


 すかさず次。


「《波動拳》!」


 ドォン!


 次々打ち込んでいく六郎。

 魔物の身体に光弾が炸裂する。


 ドォン!


 ドォン!


 ドォン!


 六郎は淡々とコマンドを入力していく。

 操作ミスはない。

 それは、何千回、何万回と反復して体得した技術。体に染みついた動作。

 

 ゲームだろうと、命懸けだろうと、この指の動きは保証されている。


「グルルル……!」


 魔物は明らかにダメージを受けている。


 飛び道具による遠距離攻撃。

 魔物にとって一方的に不利な間合い。


「……さあ、来い」


 六郎は静かに待っていた。


 魔物が咆哮する。


 そして——


 跳んだ。

 空中から巨大な身体が迫る。


 だが——


 シンプルな設計で、手数がそれほど多くなかった初期の格闘ゲームにおける定石、最善手。

 

 それは『飛ばせて落とす』である。


 六郎はニヤリと笑った。


 魔物を十分に引き付ける。


 そして——

 

『→↓↘+P』


 カチャッ!


「《昇龍拳》!」


 身体が跳ね上がる。

 拳が真っ直ぐ突き上げられた。


 パァン!


 乾いた音。

 このサウンドがたまらない。


 六郎が思わずニヤける。


「グォォォッ!?」


 六郎の拳が魔物の顎を貫く。

 魔物の身体が宙へ打ち上げられる。


 そして——


 ドサリ。

 地面に落ちた。


「…………」


 二人の女の子は、もはや言葉を失っていた。


 六郎は魔物を見つめる。


「……しぶといな」


 魔物がゆっくり起き上がる。


 その瞬間、六郎は走り出した。

 復帰に合わせた『起き攻め』。


 タンッと跳ぶ。


『強K』▷


 空中から重い前蹴りを叩き込む。

 ドカッ!

 

 着地。

 と同時に——


▷『強P』▷


 ズンッ!

 拳が魔物の腹へ深々と突き刺さる。


「グォッ!」


 そして——

 最後のコマンド。


▷『→↓↘+P』


 通常攻撃動作をキャンセルして、無敵の必殺技へと繋げる。


「——《昇龍拳》ッ!」


 ドォン!


 懐かしいコンボ。威力は絶大だ。

 

 再び魔物が空高く打ち上げられる。


 巨大な身体が宙を舞い、そして地面に落ちた。

 今度こそ魔物は微動だにしない。


 六郎の頭の中に、聞き慣れた電子音が響いた。


《YOU WIN》!


 勝利を確認した六郎はゆっくり腕を組み、そして目を閉じる。


 ——勝利ポーズ。

 

 どこからともなく、規則正しく風が吹いて来る。


 ——勝利メッセージ。


『昇龍拳を破らぬ限り、お前に勝ち目はない』


 魔法使いの女の子は呆然としていた。

 僧侶の女の子も、口を半開きにしている。


「…………何、この人」


「……分かりません」


 二人は完全に理解が追いついていなかった。


 一方の六郎は——


「……やっっべぇ」


 拳を握る。


「気持ちいい……!」


 39歳。

 会社にこき使われ続けた、しがないサラリーマン。


 かつてゲームセンターで夢中になった感覚が、蘇っていた。


 久しぶりだ。

 こんなに熱くなったのは。


 本当に久しぶりだった。

 

 こんなに——


「楽しいのは……!」


 そのとき、倒れていた魔物が、わずかにピクリと動いた。


「……って、まだ生きてる!?」


「逃げましょう!」


 僧侶の女の子が叫ぶ。


「え?」


「今のうちです!」


「そ、そうだな!」


 三人は一目散にその場から逃げ出した。


 

   ◇ ◇ ◇


 

 森を抜けたところで、三人は足を止めた。


「はぁ……はぁ……」


 二人の女の子は息を切らせている。


 一方で、六郎はなんともない。

 

 『→→』カコカコっとレバーを入力したところ、ダッシュのモーションへ移行。

 ダッシュの最中、ゲームのようにスタミナが切れることはなかったからだ。


 いや。

 そんなことより——


「……助けてくれて、本当にありがとうございました」


 僧侶の女の子が深々と頭を下げた。


「私はリディアと申します」


 金色の髪。

 柔らかな雰囲気。


 そして隣の魔法使いの女の子も頭を下げた。


「あなたのおかげで助かったわ。私はエレナ、魔法使いよ」


 こちらは栗色の髪。

 活発そうな印象の女の子だ。


「……ああ、どうも」


 六郎も頭を下げる。


「俺は……」


 そこで少し考えた。


 日本での名前をそのまま名乗っていいものなのか。


 まあ、隠す理由もない。


「宇野六郎。ウノ・ロクロウだ」


「ウノロクロウ?」


 エレナが首を傾げる。


「ずいぶん長い名前ね」


「そうか?」


「うん。呼びにくい」


 六郎は苦笑する。


 そのとき、リディアが申し訳なさそうに言った。


「失礼ながら……『クロウ』という響きは、この地方ではあまり良い意味ではないんです」


「え?」


「古くから『忌み名』とされてまして……」


「ああ、そうなんだ」


 六郎は少し考えた。


「じゃあ……ロクでいいよ」


 それは昔、六郎が友達から呼ばれていた『あだ名』だった。


「ロク?」


「うん。その方が呼びやすいだろ」


 エレナが笑った。


「分かった。じゃあ、ロクね」


「はい。ロク様」


 二人の女の子が、それぞれ六郎をそう呼ぶ。


 ——ロク。


 それが、この世界での六郎の新しい名前になった。

 ——うん、悪くないな。


「……じゃあ、改めてよろしく!」


 六郎は二人に向かって微笑んだ。



   ◇ ◇ ◇

 


 こうして、どこにでもいるしがないサラリーマンだった男。

 宇野六郎の——いや、ロクの異世界生活が始まった。


 この世界では、誰一人として知らない。

 レバーとボタンによって戦う『格闘ゲーム』というものを。


 そして——


 かつてゲームセンターで戦いに明け暮れた一人の男の経験が、この世界ではとてつもない武器になることを。


 ロク自身も、まだ知らなかった。


 自分自身が——


 この世界で、どれほど無茶苦茶な存在になるのかを。

【参考動画】

このエピソードに出てくるコンボ

https://x.com/lcuf4yg/status/2094797310186467632?s=46

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