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57.道路工事下準備、の巻

「今回の道路作成ルートは、タイラー領から中央の拠点建設予定地まで一直線に作る。ここで、角度をつけて国境地帯まで一直線に道を伸ばす形で決まった」

「それぞれの区間を最短距離で結べるルートというわけですね」

「経路は決まったので、工事を始める前にまず周辺一帯の安全を確保しておく必要がある」

「視察の時にそれなりの数のモンスターがいましたからね。この道路建設ルートには手ごわい相手はいなかったと思うので、俺とザイード殿がそれなりの兵を率いればすぐに制圧できると思うが・・・」

「アレン、今のタイラー家の戦力は衛兵のみだ。その衛兵も本来の仕事があるのでそんなに兵力は出せないよ」

「サイラスの言うことはもっともだ。衛兵には衛兵の仕事がある・・・ここは傭兵を雇おう」

「なるほど、傭兵なら必要な時だけ兵力として使えますからいいですね。ゆくゆくは領独自の兵力もある程度必要になるでしょうが、今は傭兵雇用が最適ですね」

 その話を聞いて、ザイードが声をあげた。

「旦那、腕利きの傭兵なら心当たりがあるぜ。団長はキザな野郎だけど、信用できるヤツだ」

「おお~、ザイードがそういうなら信用できるな・・・紹介頼めるかい?」

「ああ、すぐに連絡を取ってみよう・・・でもな~」

 ザイードは、ニヤリと笑った。

「あいつら、ここの酒と料理食っちまったら居着いちまうかもしれないぜ~・・・俺みたいにな」

「えー・・・傭兵って食べ物の味が最優先なのかい?」

「そういう訳じゃねえけど、それほどビールとソーセージや唐揚げは魅惑的ってことさ」

 そういってザイードは、豪快に笑った。


 ________________________________________


 1週間後、ザイード商会の用兵団がタイラー領の領主館を訪ねてきた。

「お初にお目にかかります。ロレンツォ・ディ・ヴァローレと申します。焔花傭兵団の団長をしています」

 そう名乗った男は、日に焼けた肌に人懐っこい笑みを浮かべた伊達男で、歳の頃は30前後、いかにも熟練の傭兵と言ったいでたちだった。

「ザイード殿の要請なんてめったにないですから、最優先できたんですよ。 彼の紹介なら間違いないでしょうしね・・・我々もいただく報酬以上の成果は必ずあげますよ」

「こちらもザイードの紹介だから信用していますよ。今回の仕事は新しく建設する道の予定地に出没するモンスター討伐です。それと道路や建物の建設工事の際に警護をお願いしたいと思ってます」

「なるほど・・・うちの用兵団は、俺を入れて30人の部隊です。全員動員するという方向でよろしいですか?」

「ええ、全員でお願いします」

「でしたら……契約金は1月あたり金貨300枚でどうでしょうか?高いと思われるかもしれませんが全員が腕利きですので、これでもお安いぐらいですよ」

 ロレンツォは、悪びれる様子もなく言った。

「その条件でけっこうです。サイラス契約書を用意してもらえるかな?」

「すぐにご用意いたします」

「決断が早いですね・・・契約ありがとうございます」

 ロレンツォは、さわやかに笑うと軽く頭を下げた。


 ________________________________________


 契約がまとまってった翌日から、道路建設予定地のモンスター討伐が始まった。

 討伐の参加者は、ロレンツォ率いる焔花傭兵団と、ザイード・アレン・イグナーツそしてユウリの視察に出た4名だ。


「よお~ロレンツォ久しぶりだな。相変わらずキザな野郎だな・・・」

「ザイード殿お久しぶりです。よろしくお願いします」

 ロレンツォがザイードに頭を下げると、傭兵団員たちはざわついていた。

「団長があんなに丁寧にしてるの初めて見たぞ・・・貴族相手でも皮肉を飛ばす人なのに」

「今日は俺たち4人と、お前たちの用兵団どちらがたくさんモンスターを討伐するか勝負しないか?・・・負けた方が今度酒をおごるってことでどうだ?」

「ザイード殿、我々に酒をおごりたいんですか?我々の力はご存じでしょう?」

「知ってるよ・・・でもいい勝負になるんじゃねっかと思うんだよ」

 といってザイードは不敵に笑った。

「・・・そう言われては受けないわけにはいきますまい。この人数差です我々が必ず勝ちますよ」

「よーし、じゃあ公平に同じ場所で戦おう。そっちの指揮は当然お前がとるんだろう?こっちはユウリの旦那に任せるぜ」

「タイラー侯爵も前線に出られるので?」

「ユウリの旦那は俺に勝つほどの腕前だぜ・・・まあ次は負けねえけどな。今回は指揮と魔法の援護頼むよ。前線は俺とアレンで十分だろう」

 こうして1日目の討伐が始まった。

 モンスターの群れが現れるなり戦闘は瞬く間に決着がついた。

 ザイードとアレンは前衛でモンスターを次から次へと刈り取り、ユウリとイグナーツは逃げ出すモンスターを魔法で殲滅していった。

 最初それを見た焔花傭兵団の面々は呆然としていたが、すぐに負けてはいられないとモンスターを討伐し始めた。

 ロレンツォの指揮のもと一糸乱れぬ集団戦闘を展開し、効率的に敵を刈り取っていく。

 日が暮れて1日目の討伐が終わった。

「ロレンツォ、やるな~最後に追い上げられて負けるかと思ったぜ」

「ザイード殿の腕前は十分承知してましたが、お三方の実力は計算外でした・・・素晴らしい腕前です。よろこんでおごらせていただきます」

「おう、約束だぜ!それはそうとロレンツォ、腕を上げたな・・・アレンもそうだけど俺もうかうかしてられねえ」

 そういわれて、ロレンツォはうれしそうな顔で笑った。

「誰よりもザイード殿に、そう言っていただけると嬉しいですよ」

 こうして建設予定地の周辺モンスターはとんでもない速度で、刈り取られていくのだった。


 ________________________________________


 その日の夜、討伐を終えた用兵団とユウリ達は、焚き火を囲み休息を取っていた。

「旦那、今日は随分暴れたから腹が減ったな~・・・晩飯どうする?」

「よーし、みんな頑張ったからソーセージとビール出しちゃうかな・・・見張りに立つ人用は、ちゃんと用意するからね」

 そういいながら、ユウリは空間魔法で魔導冷蔵庫と大量のソーセージ、さらに茹でるための鍋をよういした。

 すぐに大量のソーセージが茹で上がり、皆に冷えたビールと共に配られた

「こいつは……何です?」

「まあ食べてみてよ。冷えたビールと最高の相性だよ♪」

 ロレンツォが代表して一本手に取って齧り付いた。

「!!! うまい」

「タイラー領の名物料理だよ。ビールも飲んでみてよ」

 ロレンツォは促されるままにビールを飲む。

「・・・・美味すぎる!!!お前たちもご馳走になれ!」

 その声と同時に傭兵団員たちはソーセージにかぶりつき、ビールを飲みだした。

 食べた端から驚愕の歓声が響いている。

「ユウリの旦那、こりゃ本当に居着いちまうかもしれないぜ・・・」

「うーん・・・・餌付け成功だな。みんな明日も討伐頑張ってくれたら、ビールとソーセージ振舞うから頼むよ~!」

 その言葉に傭兵団の面々は、目を輝かせて気炎を上げた。

「よーし、明日も気合入れてやるぞ!」

「冷えたビールのためなら何体でも狩ってやる!」

 すっかり士気の上がった傭兵たちを見ながら、ロレンツォは苦笑していた。

「侯爵は人の使い方が上手いですね・・・団員の士気が今までで一番高いような気がしますよ」

 こうして、たったの1週間で中央部道路建設予定地のモンスターは一掃された。


 ________________________________________


「道路予定地の木を切って用地を確保しましょう・・・木こりたち始めてくれ」

 ドーソン親方の指示のもと、タイラー領の木こりたちが、伐採に取り掛かった。

 焔花傭兵団は、周囲の警戒に当たる。

「周辺のモンスターは一掃したけど万が一ってことがあるので、周辺の警護は任せてください」

 ロレンツォが、剣の柄に手をのせて言った。

「ありがとう、安心して作業ができるから助かるよ」

「ずいぶん広く切り開いてますね~・・・何でですか?」

「道の周辺に森が残ると、モンスターの温床になりかねないからね。そのたびに討伐するのはアレンだっていやだろう?」

「なるほど……それはイヤですね。先の面倒をつぶすやり方、サイラスの案ですか」

「おっ・・・さすがに伊達に付き合いが長いわけじゃないな。当たりだ!」


 そんな話をしながら伐採の様子を眺めていたユウリは、木こりたちが大木の切り倒しにてこづっていることに気づいた。

 太い幹を斧で切り倒すのは、どうしても時間がかかる。

(チェーンソーがあればな・・・・魔道具で作れそうな気もするが危ないし)

「ちょっと俺も手伝ってみよう」

 ユウリは、大木の前に立つと右手を伸ばした。

(ウインドカッターを飛ばすんじゃなくて・回転させれば・・・)

 前世の記憶にあるチェーンソーのイメージしながら魔法を使ってみる・・・・ユウリの右手の先に開店する風の刃が形成された。

 その刃を大木の幹に当てると轟音とともに木屑が勢いよく舞い上がった。

 大木はものの数秒で真っ直ぐに切断され、倒れていった。

「う、嘘だろ!!斧なら倒すのに一時間はかかりそうな大木を・・・」

「ふむ・・・問題なさそうだな。大木は切り倒すのは俺がやるから、切った木の処理を木こりのみんなで頼むよ」

 ユウリは呆然としている木こりたちに指示を出した。

「……私もやってみてもいいですか?」

「イグナーツ、助かるよ」

「ユウリ様はいつも新しい発想をされますね・・・これはウインドカッターとはまた違った魔法の誕生だとおもいますよ」

 イグナーツは、そう言うと風の刃を同じように回転させた。

「さすがイグナーツ、難なくこなせるね」

「ウインドカッターに比べて魔力での制御が難しいですね・・いい鍛錬になりそうですよ」

 こうして、ユウリとイグナーツの魔法による伐採が加わったことで、作業の速度は一気に加速した。

「坊ちゃん、こりゃとんでもないスピードで伐採が進んでますな。予定では、2週間はかかると見てたんですが・・・」

「役に立てて何よりだよ。今回の工事はスピードが重要だからね・・・出来ることは何でもやるよ」


 通常ではありえない速度で伐採が進み、道路予定地周辺の森は、見る見るうちに切り開かれた。

 そうして切り開かれた土地をホーグ技師が指揮する土魔法部隊が、更地に形成していく。

 モンスターの脅威を払い、土地を切り拓き、道を建設する下準備は整った。

「ドーソン親方、ホーグ技師、いよいよ道路建設開始だ。建設の打ち合わせをしよう」

「ルートは決まってましたが、細部の詰めをしてませんでしたからね・・・まさかこんなに早く工事できるようになるとは思ってませんでしたからな」

 ドーソン親方が、苦笑言った。



拙い文章、読んでいただきありがとうございます。


多少なりとも楽しんでいただけたのなら幸いです。


お手数とは存じますが、ご評価いただけると励みになりますので、よろしくお願いいたします。

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