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箱庭ぱらだいす! Hakoniwa Paradise -“Arcadia” of graffiti-  作者: Saku†Project -ParadoX-
箱庭の迷い人編
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箱庭の迷い人編ー9.コロリルの秘薬

《キノコを無事に手に入れ、闇咲邸に戻ったレイナ。これでゆめを救うことができるね!》


「レイナ様、おかえりなさいませにゃ」

「おかえりー。おねーちゃん」

クロロや仲間たちが彼女を出迎える。

「はい、コロリル茸。これでゆめの奇病が治せるな。」

レイナはクロロにコロリル茸を渡した。

それを見たゆめは、早く元に戻ることを待ちきれない様子だ。

「やっためう!これで元に戻れる!」

「やれやれ」

ももかは『ゆめが、コロコロブクブクの姿のままだったら良かったのに』と、内心つまんなく思っていた。

「では、早速調合するので、少々お待ちくださいにゃ……」

クロロは、そう言ってコロリル茸をキッチンへ持っていった。

「案外……早かったね……」

ツギハギ顔の少女は、レイナに小声で話しかけた。

「まぁね」

「ところで、ユウリは……?」

「ちょっとしたら戻ってくると思うよ」

レイナがそう言うと、ツギハギ顔の少女は憂いの表情を見せた。

「……みーちゃん?どうしたの?」

レイナは、少女の顔色をうかがった。

「ダメっ……」

少女は、声を震わせている。

「え?」

「呼び戻して……」

少女は、そう言って涙まで流し始めた。このままだと彼に、何か悪い事でもあると思っているようだ。

レイナは、ミライの背中をさすっている。

「どういうこと?」

それを側から見ていたゆめとももか。

「あの子誰?」

「365日ハロウィンなのかな」

少女の顔は、ハロウィンを思わせる白塗りのツギハギメイク。ハーフツインテールにまとめた髪に、頭にはリボンのついた悪魔の小さなつの。

それがゆめとももかにとっては、見世物なのか、仮装なのか、または街で見る変人かのように映っていた。

そこへレナが、二人にあの子の事を簡単に紹介する。

「あの子はミライって言うの。結構内気でだから、優しくしてあげてね」

〈ミライ…ツギハギメイクの少女。内気だけど実は預言者……?〉

「へぇ……」

ゆめとももかは、やはりミライの事が気になって仕方なく、彼女をじろじろと見ていた。

するとミライが、自分にレーザーのように刺さってくる視線に気づく。

「……ひっ」

ミライは、急いでレイナの後ろに隠れてしまった。

壁にされたレイナは視線のする方を向いた。こちらに向かって、ゆめとももかの目がまっすぐに向いていた。

「あまり、じろじろ見てあげないでくれないかな?恥ずかしがり屋さんだから」

レイナは、ゆめとももかに向かって苦笑いしていた。

「そっか……お友達になりたいめう」

ゆめは、あの子に対して理解をした様子だ。

「私はパス。見た目からまともじゃない」

その一方でももかは、バッサリと言葉で切り取った。

それに対し、ゆめはももかを冷たい目で見る。

「お姉様は本当に視野が狭いんだから」

「ゆめも変人ね。ぷぷっ」

ももかは、小馬鹿にしたように笑った。

「多様な人間を認められないなんてお姉様、遅れてるぅ」

それに負けじと、ゆめも正論じみた煽りを入れる。

それに対してももかも反論。

「でも面倒そうじゃん。付き合う相手を選ぶのは大事よ?」

「じゃあやみしゃんはどうなんだよ。あれもよっぽど面倒そうな変人……そもそも雰囲気から人間なのか分からないじゃん」

「あれは……まぁ、しょうがないと思ってる。実害食らうのはあなたやりんたなんだし。私は関係ない」

「それ、友達としてどうなの……引くわ……」

突然始まった内部事情論争に、レイナとレナは少々引き気味であった。

「まぁまぁ……」

と小声で言ったものの、実質ノーコメント状態である。

それでも言い争いは止まらない。

「ゆめだってやみの事変人扱いしてるじゃん。自分で言っておいて引く……」

「しょうがないじゃん、本人たちには言えないけど」

「そう言ってるあなたもまともじゃないわよ?」

「お姉様だってまともじゃない癖に」

「私は天才だから大丈夫」

「お姉様はバカだ⑨だ!!」

「うるさいデブス」

「黙れビッチ」

「お待たせしました……にゃ?」

クロロは、目から稲妻を飛ばし合い睨みあっているゆめとももかの図を目撃した。

彼女は一瞬立ち止まったものの、すぐにそれを受け流した。

「まぁまぁ、落ち着いてください。秘薬・コロリルティーが出来上がりましたのにゃ」

テーブルの上に、ティーセットが置かれる。

ティーポットからカップに注がれたのは、一般的なお茶とはかけ離れた、毒々しい青紫色をした液体である。

「ゆめ様。さぁ、これをお飲みください」

ゆめの目の前に、そのティーカップが差し出される。

言い争いを繰り広げていたゆめ。しかし、それを見た瞬間、あまりの毒々しさに全意識がそのお茶に向くこととなる。

「……え、これを飲むの」

ワインやブドウジュースのような色ならまだしも、いかにも「毒です」というような青紫色をしている。

「え……」

隣にいたももかも、それを見た瞬間ぴたりと固まってしまった。

「これは……罰ゲームめう?私に死ねという」

ゆめの全身からは、冷や汗がたらたらと流れていた。

「ゆめそれ飲むんだ……」

ももかも冗談抜きで、友の命の危険を感じてい

るようだ。

「はい、これを飲めばゆめ様の身体はみるみるうちに元通り。何事も無いようになりますのにゃ。」

ゆめとももかは、クロロが言った事が信じられなかった。見方によっては、クロロがゆめを殺そうと思っているともとれるかもしれない。

「いや、これは……毒……なんじゃないかな?」

ゆめは、ゆっくりと後ろに転がっている。

「いえ、とんでもない。これはゆめ様の身体を元通りにする、魔法の秘薬ですのにゃ。」

クロロは、そんなとんでもないと誠実そうに言った。

「絶対に嘘めう……おあああああっ!!」

ゆめは、下がった動力で後ろにゴロゴロ転がった。そして、壁に勢いよくぶつかって止まる。

ゆめはそのショックで、目を回してしまった。

「あら」

クロロはそう言いつつ、ゆめの元へ行く。ゆめの口を開けると、秘薬を口の中へと入れている。

「ゆめが死ぬ……!」

ももかは、冗談抜きで恐怖を感じる。

「フフフ……」

レナは、後ろでそれを見て微笑んでいた。

「やばい」

ももかは、逃走準備をする。

……と。

「元通りになりましたのにゃ」

「え……」

ももかはゆめの方を振り向く。そこには壁の前に倒れて目を回している、元の体型になったゆめがいた。

「あれ。元に戻ってる」

「成功だね♪これ、たまに失敗するみたいだからね」

「めでたしなのですにゃ」

レナとクロロも、一安心している。

一方でももかは、それを聞いて血眼になっていた。

「って、失敗したらどうなってたのよ!!」

「さぁね。でも成功したんだしまぁ、後はしばらく休ませてあげよう?」

レナは、終わりよければ全て良しというように、その事に関して気に留めなかった。ゆめをじーっと見つめていた。

「ブランケットを用意しますのにゃ」

クロロは、そう言うとブランケットを空中から出現させた。

「やれやれ」

ももかも、ほっとため息をついた。



《めでたしめでたし。で、ミライが怯えている理由は?それは、次のお話で。》

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