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#007「坩堝」

――家族とは、共同生活を営む一つの集合体である。

  *

「しばらく、向こうの部屋で看病するってさ」

「それなら、彼女に任せたほうが良さそうですね」

「まったく。母親がいるなら最初から言えよ、この親不孝者め」

「ウルサイ。子供扱いされたくなかったんだよ」

「病身の親に代わって食い扶持を稼ごうっていう志は感心だが」

「手段を選ぶべきですね」

「後先考えずに行動してるうちは、まだまだ半人前だな」

「ケッ。偉そうなこと言ってるけど、元はと言えば、自分たちの勝手なワガママを押し付けあってる大人たちが悪いんじゃないか。振り回される子供の身にもなれよ」

「争いの理由は、一部の人間が、くだらない面子に拘泥するせいだもんな」

「どうして、つまらないプライドにしがみつくんでしょうね」

「何の役にも立たないと理解していながらも、等身大の卑小な自分を受け容れられない人間は少なくないからだろうな」

「大人なら、ちゃんと責任を取れよ」

「どこで、そういう言葉を覚えるんだか」

「困ったものですね」

「見過ごせないな。しかし、危機的状況は、何かを始める機会でもある。そこで一つ、提案したい」

「……何だよ、じろじろ見やがって。何をする気なんだ?」

  *

「なるほど。四人で力を合わせれば、事態は好転するかもしれないな」

「私たちも、心置きなく旅を続けられますね」

「勝手に決めるな」

「親の了解も得られたんだ。ガタガタ言うな」

「そうと決まれば、長居は無用だな。それじゃあ、仲良くやれよ」

「ありがとうございました。娘さんにも、よろしくお伝えください」

「納得できない」

「こら、暴れるな。――言っておこう。達者でな」


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