第49話:地平線の彼方から漂う、"死臭"の予兆
セラフィナが楽しそうに雑巾掛けをする姿を見て、アレンは「……まあ、清潔なのはいいことだ」と一息ついた。彼女は、聖女の皮を剥いだ後、ただの清掃員として生きることに喜びを見出したらしい。
だが。そんな爽快感に浸っていた俺の鼻を、再び"ありえないほどの不浄"が掠めた。
「……っ。なんだ、今の臭いは」
せっかく消毒し、リセットしたばかりのこの空間を、再び泥靴で踏みにじるような。今までの"黒カビ"など生易しいと思わせる、世界の根理を腐らせるような、救いようのない絶望的な死臭。
それは、特定の個人から漂うものではない。地平線の彼方。この世界の"最果て"にあるとされる、魔の領域から漂ってくる、究極のバグ。
「……魔王、か」
俺の【極清鑑定】が、かつてないほど激しく赤色に点灯する。そこから漂ってくるのは、"世界の全データを腐らせ、溶解させ、不潔なカオスへと変えようとする、根源的なノイズ"。
「……汚ねえな。世界そのものが、巨大な生ゴミの山になろうとしているじゃないか」
俺は、一歩を踏み出した。次の掃除場所は、決まった。この世界の全てのバグを消し去り、魔王という名の"究極の汚物"を根こそぎ除菌してやる。
アレンの戦いは、終わらない。この宇宙が、完璧な"工場出荷状態"に戻るその日まで。




