第四百二十一話 興奮するじゃない!
まずは1人目です。翌日には間に合いませんでしたが、翌々日には間に合わせました。
「まずは貴方から事情聴取しましょうか」
「……ちっ、なんで俺がこんなことしないといけないんだよ」
「お名前は?」
「キャロス」
1人目の男の人、キャロスさんがぶっきらぼうに話す。やっぱり、犯人だって疑われているから嫌なのかな?
キャロスさんは大きな体の男の人だった。身長はノエルの3倍はありそうだ。そんな大きな体が全部隠れるほどに大きなコートを着ている。顔にはサングラスを欠けていて、目元は完全に隠れている。
なんというか、夏にする格好じゃない気がする。暑くないのかな?
そんなキャロスさんは不機嫌そうに話す。
「つーかさ、俺にあんたらに協力する義務があるわけ?」
「ありますね。拙者たちはこういう者なので」
ホウリお兄ちゃんとコナッツお兄ちゃんが手帳みたいなものを見せた。
「なんだそれ?」
「これは捜査許可状。事件と被害者がはっきりとしている場合にのみ、事情聴取や現場の管理などが可能になるのです」
「犯人がはっきりとした場合は、確保することも可能だ」
「なんでそんなのをお前らが持ってんだよ」
「憲兵へ一定以上の貢献をした者であれば貰えるのですよ。私は言わずもがなですが、助手が持っているとは思ってませんでしたな」
「俺も色々とあったんですよ」
色々(国家転覆の阻止)。
「捜査許可状がある者からの事情聴取は拒否できませんぞ?」
「拒否したら拘束しても良いことになっている」
「…………」
「抵抗しようとは考えないほうが良いですぞ?某のバリツは壁をも粉砕しますぞ?」
「俺も冒険者だ。抵抗や逃亡はおすすめしないぞ」
ホウリお兄ちゃんが木刀を、コナッツお兄ちゃんが足を挙げて4人を威嚇する。いざとなったらノエルも銃で援護できるし心配ないね。
「それで?あなたは素直に話してくれますかな?」
「……ちっ、何が聞きたいんだ?」
「まずはアリバイから聞きますかな。13時20分~13時31分には何を?」
「適当にこの辺をうろうろとしていた」
「この辺をうろうろ?なんのために?」
「そ、そんなの事件に関係ないだろ?」
「おや?動揺しましたね?何か隠しているのですかな?」
「まさか犯人か?」
「ち、ちげーよ!適当にホテルの中をうろつくのが悪いっていうのか!?」
明らかに動揺しているキャロスさん。これって本当に犯人かも?
「そういえばさ、無くなった指輪ってどんなのなの?」
「おお、説明するのをすっかりと忘れておりました」
コナッツお兄ちゃんが頭を掻きつつ写真を取り出した。写真には指輪ケースに収まった指輪が写っていた。青く輝く綺麗な宝石が指輪にはついている。
「大切な指輪なので、マダムは寝るときと入浴のとき以外には常に身に着けているそうです」
「13時20分~13時31分はお風呂に入ってたってこと?」
「その通りですぞ」
コナッツお兄ちゃんは写真をキャロスさんに見せる。
「話を続けますぞ。この指輪に見覚えはありますかな?」
「いや……無いな」
キャロスさんは写真をマジマジと見ながら答える。さっきとは違って動揺している感じはない。嘘じゃなさそうかな?
「ふむ、嘘はついていなさそうですな」
「なら次の質問だ。あんたは──」
「いい加減にしろよ!知らないって言ってるだろ!」
ホウリお兄ちゃんが質問を続けようとすると、キャロスさんが顔を真っ赤にして怒鳴り散らす。
「しつこいぞ!俺は関係ないって言ってるだろ!」
「確かにお前は関係なさそうだ」
「だったら!なんでまだ質問してくるんだよ!」
「だってな」
コナッツお兄ちゃんがキャロスさんの全身をなめるように見る。
「何処からどう見ても怪しいからですが?」
「だな。怪しいところで山手線ゲームが出来そうだ」
「お、良いですな。やりますかな?」
「やるな!事件の事情聴取中だろうが!」
「じゃあ、某からいきますぞ。(ぱんぱん)サングラスを掛けているところ」
「(ぱんぱん)季節外れのコート」
「(ぱんぱん)挙動不審なところ」
「(ぱんぱん)口調」
「(ぱんぱん)証言」
「(ぱんぱん)存在そのもの」
「もう私感じゃねえか!?探偵が言っていいセリフじゃねえからな!?」
山手線ゲームにかこつけて、言いたい放題のホウリお兄ちゃんとコナッツお兄ちゃん。
そんな2人に向かって堪忍袋の緒が切れたのか、キャロスさんが拳を振り上げる。
「いい加減に……しろ!」
キャロスさんの拳がホウリお兄ちゃんの頭に振り下ろされる。けど、ホウリお兄ちゃんは読んでいたのか、手のひらで拳を受け止めた。
「甘いな」
「くっ……」
拳を受け止められてキャロスさんが悔しそうな顔をする。……あれ?キャロスさんの袖から何か落ちた?
袖からヒラヒラと紙が落ちていく。
「何か落ちたよ?」
「あ!それは!」
落ちた紙を拾おうとすると、キャロスさんがノエルに手を伸ばしてくる。けど、ホウリお兄ちゃんに拳を握られているから、ノエルには手が届かない。
拾えないなら、代わりにノエルが取ってあげよう。そう思い紙を拾い上げる。
「……ナニコレ?」
「なんだそれは?」
「脱衣所の写真みたい。女の人の裸が写ってる」
「ほお?」
ノエルの言葉にキャロスさんの顔が青くなっていく。
ホウリお兄ちゃんが木刀を取り出して、コナッツお兄ちゃんが蹴りを繰り出せる体勢を取る。
「どういうことか説明してもらおうか?」
「えっと……その……てへっ☆」
「いや誤魔化せないからな?」
「説明したくないのなら、代わりに某が説明しましょうか?貴方は女湯の脱衣所に隠しカメラを仕掛けた。そして、13時20分~13時31分の間にカメラと写真を回収。人目を忍んで部屋に戻ろうとしたときに、某に呼び止められた。いかがですかな?」
「あ、うう……」
「確定みたいだな」
コナッツお兄ちゃんの言葉にキャロスさんが言葉を失う。
「どうする?先生?」
「とりあえず拘束しましょうか。その後にじっくりと身体検査をしましょう」
「オッケー」
「いででで!?」
ホウリお兄ちゃんが握っていた拳を勢いよくひねり上げる。そして、痛がっているキャロスさんを床に押し倒して、両腕と両足を縛りあげた。
「くそ!離せ!」
「いやいや、ここまで来たら離すわけないでしょう?」
「ノエル、こいつの服をひん剥いて、隠しているものを全部取り上げてくれ」
「む?ノエル君にやらせるのですか?」
「男である俺たちがやる訳にはいかないだろう?女で子供のノエルのほうが、被害者にとっても心理的な負担が少ないんじゃないか?」
「確かにそうですな。ノエル君、頼みましたぞ」
「はーい」
「や、やめろ!」
「ホウリ君、口も塞いでしまいなさい。うるさくてかなわない」
「ほいほい」
ホウリお兄ちゃんがタオルを取り出して、キャロスさんの口に巻く。
「むぐむぐー!」
「ノエル、気にしないで続けていいぞ」
「え?本当に気にしないで良いの?」
「ああ。こう見えて痛みはないからな。ただ動けないだけだから心配ない」
「そっか」
ホウリお兄ちゃんがそう言うのなら心配ないね。
ノエルは気にせずにキャロスさんのコートを開けて写真を探した。
☆ ☆ ☆ ☆
「205……206……207……全部で207枚だね」
「よくもまあ、そんなに撮ったものだな」
「呆れた性欲ですね」
写真を全部袋の中に入れて口を閉じる。
その様子をキャロスさんは悲しそうな視線で見てくる。ちょっと可哀そうって思ったけど、盗撮してるんだし、可哀そうに思わなくていっか。
「さてと、犯人は確保したわけですが……」
「窃盗犯じゃなくて盗撮犯だったわけだがな」
「この方のアリバイはあるみたいですし、窃盗犯ではなさそうですな」
「それじゃ」
ホウリお兄ちゃんは残りの3人のほうを向く。
「事情聴取を再開するか」
ホウリお兄ちゃんの言葉に、心なしか残りの3人の表情が青ざめたような気がした。
なんだこいつ。
次回は2人目の事情聴取です。
更新した日よりも、その前後の日のほうがPVが多いです。なんで?




