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「おめでとう」
「ありがとうございま――いたたっ、なんで手をぐしゃりってするんです!?」
「案の定、先に付き合い始めたからよ!」
そ、そんなことを言われても困るけど!
「宇藤おめでとう」
「宇藤さんおめでとうございます」
「ありがとうございます」
さあ、残るは風か。
今日も今日とて謎に弱っている壮也は先輩達に任せて近づいた。
「風」
「うん……おめでとう星さん」
「ありがとう」
両腕をばっと広げたから正面から思い切り抱きしめておいた。
当然、離れていたわけではないからこれを見ていた梨里先輩が「あんた達ってそういう感じだったの?」と聞いてくる。
振り返ってみると「うわあ」と引いたような顔をしていた。
「曰く、宇藤さんと風さんにとって抱きしめるぐらいは普通みたいです」
「そ、そうなんですっ、私と星さんは仲良しなんです」
「でも、もう彼氏持ちよ?」
「「うっ……」」
私は本人が求めているのなら応えていくつもりだ。
でも、ここから延々と進められないのも確かなわけで、本人が苦しくなるようならやめた方がいいと言わせてもらう。
「あれ、なんで柑奈まで?」
「……私も梨里さんに対してしたいことでしたからね」
「はは、それならすればいいじゃない。星だって抱きしめてきたぐらいなんだし、前々から一緒にいるあんたがしてきたっていいでしょ」
「梨里さん!」
「あーはいはい、あっちにいきましょ」
なにかと仲間外れになってしまいがちな柑奈さんのために動けた気がした。
「壮也さんはどうしたの?」
「ああ、何故か朝からこんな感じなんだよ」
「……何故かじゃない、朝からくっついてくるからだろ」
そうとも言うか。
いやでもさ、関係が変わってから弱々しくなってしまったから仕方がないのだ。
期待して待っているだけでは満たされないからそれなら自分から動くしかないというだけのことだ。
「あー駄目だよ星さん、お付き合いをしている状態で好きな女の子にそんなことをされたら暴走しちゃうよ」
「だってくっついていたかったから」
「やっていられないよ!」
はは、大きな声だ。
「風、星が嫌がらない限り我慢しなくていいからな」
こういうところが似ているのはいいね。
関係が変わってすぐに〇〇は駄目だ、みたいに制限してくるような子ではなくてよかった。
ただ、優しさに甘えすぎるのも危険だから気を付けなければいけないのは変わらない。
「……い、いいの?」
「ああ、一方的に取り上げてそれすらも駄目なんて言うような人間じゃないよ」
「ありがとう!」
嬉しそう、だけど言っておかなければいけないことがある。
「壮也は風を抱きしめちゃ駄目だよ?」
「しないよ、星にはするがな」
「ま、まあ、ちゃんと守ってくれるならいいけどさ」
自分だけ求めるのは違うから仕方がない。
あと、今回は「イチャイチャしないで」とか言われることもなく彼女はこちらを抱きしめてくるだけだった。
まるで見せつけているかのように見えるのは……勘違いということにしておこう。
「大丈夫だと思うけど、風が壮也を抱きしめるのも――」
「それは最初からする必要がないから」
ひぇ……。
「風、俺にも優しくしてくれよ」
「厳しくしているつもりはないよ?」
それなら自然とそうなってしまっているわけだから余計に怖い存在ということになってしまう。
ま、まあ、もう少しぐらいはやり方も変えていくだろうから大丈夫だろう。
「ふぅ、満足したー星さんのお家にいこう」
「そうだね」
「だな」
ズンズンと歩いていってしまってすぐに距離ができた。
これはいまの分を考えてしてくれているのだろうか……?
「ま、あんまり気にしないようにね」
「おう、大丈夫だ」
「はは、私がいればいいと?」
「当たり前だ、それに星なら偏らせない」
い、いや結構偏らせてしまったときもあったような、というところ。
でも、物凄くいい顔をしていたから「信じてね」とぶつけておいたのだった。




