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「12月、この月だから?」15.今までとこれからと


「スペシャル抽選はね、私だけで用意したり渡したりができない内容だったから、プレゼント候補に入れられなかったんだ」


 しおりはスノードームンにそう説明をしてから、おとなりさんを見た。


 おとなりさんの言葉にいろいろと想像をして、プレゼントをさがしてみていたこと。

 スペシャル抽選について。

 おとなりさんの言葉を実はかなり気にしていた栞の、考えや気持ちや、自室での様子。


 そういったことを、おとなりさんに説明する。


 おとなりさんを責める気持ちはない。

 でも、おとなりさんも関わっていることなのに、自分とスノードームンだけでわかり合っているという風にはしたくない。

 だから話す。


 それも、ちゃんと口にする。


「そうだったのね……それでもまずは、あらためて、ごめんなさいって謝らせて。そして、話してくれてありがとうとお礼を」


 おとなりさんは落ち着いた口調で、まっすぐに栞を見て言った。


 話した栞の考えや気持ちを、変に曲げることなく受けとってくれたうえでの言葉。

 そう、栞には感じられて、嬉しく思うと同時に、ほっとする。


「話してよかった……ありがとう」

 栞が言って笑みを浮かべると、おとなりさんもちょっとだけ笑みを返した。


 笑みをおさめたおとなりさんは、スノードームや七色のトナカイたち、月乃つきのさんネコにも視線を向けてから話し始める。


 おとなりさんに起きていたこと、栞に言ってしまった言葉、そのときのおとなりさん自身の状態、明らかになったことや現在の状況――。


 おとなりさんはそれらを説明したあとで、少し間を置いて、再び口を開く。


「自分がどういう心境や状況のときに、どういう言動をしがちなのか、今回わかったことを心に留めて、今後、気をつけます。いろいろ明かしてもらって、抱えさせてもらえたものを、壊してしまわないためにも」


「そのように真剣に向き合ってくださることを、とても嬉しく思います。ありがとうございます」

 月乃が、栞の心の中にもある気持ちを言葉にしてくれた。

 栞も月乃と一緒にお辞儀をさせてもらう。


 月乃が体を起こした気配がしたので体勢を戻し、私も、と栞は声を出す。


「得た情報の扱いに気をつけるという意識を、これまで以上に持っていたいと思います。おとなりさんに話したのは、私の判断によるものですし、私の責任です。そして、話さなければよかったとは思っていません。ですが、いろいろはっきり知った今後は、もし、新たに誰かに話したいと考えたとしても、自分の判断だけで話さず、みなさんに相談してからにします」


 大切なことやものを、大切にしていこうと考えるみんなで、守っていくためにも。

 そう思いながら、栞は口にした。


「私も心がけます」

 静かに、でも力のこもった声で、おとなりさん。


〈スノードームンさん『ありがとうございます』〉

 スマホの画面にそう表示され、そのすぐあとに月乃と三ネコがお辞儀をし、姿勢を戻す。

 栞とおとなりさんもお辞儀を返し、体を起こした。


〈リースさん『お二人の心、嬉しいけど、ボクたちまだ直接謝ることができてないから、心苦しくもあるよ』〉


「謝る?」

 栞は声を出す。


〈ツリーさん『ええ。その……心配させてしまったことを。テイクの方に伝えてはいただきましたが、今日お会いしたら直接謝りたいと思っていましたので』〉


「えっ、でもそれは、そもそも私がはやく帰ってきちゃったからで。私の予定を知ったうえで、間に合うように帰ってきてくれるつもりだったんでしょう?」


〈リースさん『そうだけど、心配させちゃったことは事実だし……』〉


「心配はすごくしたけど……。スノードームの、いつもと違いすぎる雰囲気にどんどん不安になって、手がかりさがして共有部分でしゃがみ込んでて、帰ってきたおとなりさんを心配させたりもしちゃったけど」


〈家さん『そのようなことが……』〉


 うん、と答えた栞は、帰宅して、スノードームがいつもと違う雰囲気であることに気づいたあたりから、おとなりさんと一緒にテイクへ相談文を送ったあたりまでのことを、短めにまとめて説明した。


〈雪だるまさん『謝りたい気持ちとお礼を言いたい気持ちを始めとして、いろいろな感情が……』〉

〈(六人口々に)『同じく』〉


〈スノードームンさん『ごめんなさい。そしていろいろと、ありがとうございます』〉


「気持ち、受けとるよ。ただ、私としては責める気はなくて。スノードームが、あの雰囲気だったときはどうしようかと思ったけど、帰るつもりで出かけたと知ってほっとしたし、無事にまた会えて嬉しいし」


〈リースさん『ありがとう』〉


〈家さん『気になったのですが……スノードームンみんながトナカイセットのほうに行ってしまうと、不安にさせてしまいますか? 想像以上に、普段の雰囲気や不在時の雰囲気が伝わっているようですから……』〉


「いないときの雰囲気を知って、普段の雰囲気を、よりはっきり認識した感じもあるかもだけど……とりあえず今は、みんなが七色のトナカイたちにそれぞれ入っている状態のときも、不安にはならないよ。たしかに、スノードームの空っぽ感はあるんだけど、でも、みんながちゃんといるって知ってるから大丈夫」


 栞が答え、おとなりさんが横で頷く。


〈家さん『それならよかったです』〉


〈リースさん『じゃあそのときどきで、どっちに入っているか選ぶね』〉


「うん」


〈リースさん『それと、ボクがメインでとは言ったけど、もちろんみんなも、みんなで、いろいろ話すよ。なのでトキさん、三ネコさん、誰が話したかわからなかったら遠慮なく訊いてください!』〉


〈(三ネコを代表して)トキ『はい。ありがとうございます』〉


(みんなといえば……)

「スノードームンさんは、最初から七人みんないたの?」


〈リースさん『自分自身がいるってわかったのは、七人ともほぼ同じ頃だと思うよ!』〉

〈(六人口々に)『そう思います』〉


「そうなんだ」

「……器物百年を経て……」

「あっ、その言葉。聞いたことある気がする」

 おとなりさんに反応してから、えっ? と栞は思う。

「じゃあスノードームンさん百歳以上!?」

「いえ、そうはならないのじゃないかしら」

 驚く栞に、おとなりさんが冷静に返す。


「たとえ、物としては百年以上経っていたとしても、それから精神が生じるとすれば。……あら? それとも年齢は、物ができたときからのカウントかしら……。それに、スノードームが二百年三百年物とかであれば、精神が生じてから百年以上ということも、あり得るかもしれないわね……やっぱり百歳以上もありかも」


「んー……でも、思わず驚いたけど……数年前に買ったとき、そんなに前につくられた物だとは言われなかったんだよね……」


「割り込み失礼します」

 月乃の声がして、栞はそちらに意識を向ける。


 月乃の説明によると、何年で、どんな条件やきっかけで、モノになるかは、実際はモノによってさまざまとのことだ。

 物ができたときから、できて数年で、ということもあるそう。


 そして、モノの年齢については、捉え方が難しいらしい。


 精神が生じた時点で、かなりの理解力や知識があったりすることも多く、0歳とカウントし表現するのは無理がある感じだったり。

 一年で一歳年をとるような感じなのかというと、そういう感じでもなかったり。


 その年齢の人間っぽいかは別として、シンプルに、モノとなってからの年数で数えるモノもいるし、そもそも、何歳といったことはあまり意識しないモノも多いとのこと。

 物ができてから何年だから何歳という数え方をするモノは少ないらしい。


〈ツリーさん『私たちが自分自身に気づいたとき、すでに栞さんが持ち主でしたが……』〉


「そうなんだ! じゃあまだモノになって数年……」


〈ツリーさん『ですが、モノとなってからの年数イコール年齢という意識は、私たち、あまりないような……』〉

〈(六人口々に)『はい』〉


「うん……聞いた私も、みんなを一桁歳と考えるのは難しい……」


 何歳でどんな感じというのはそれぞれなので、あくまでも、栞自身がそれくらいの年齢のときはどうだったかを、思い出せる範囲で考えると、ではあるのだけれど。


「いろいろ見聞きしてて、知ってて、理解してて、会話もしっかりで……」


〈リースさん『えっと、そのことなんだけどね……』〉


「ん?」


〈トナカイさん『こちらの一方的な判断で、あまり見ないほうがいいと思った場面は見ないようにとかも、してはいたのですが』〉


〈ソリさん『栞さんにはっきりお知らせできないまま、いろいろと見聞きしていたことを、心苦しく思っていて』〉


「あ、でも、もしかしたら見聞きしたり理解したりしてるかもと思ってはいたから……」

 思った以上に、ではあったけれど。


「……なんかむしろ、あまり具体的に想像してみることなく、のびのびすごしてた私に、みんなのほうが気遣って、いろいろ頑張ってくれてたり?」


〈ソリさん『いろいろ知ったうえで、そう考えてくださる心が嬉しいです』〉

〈(六人口々に)『です!』〉

「……ありがと」


〈スノードームンさん『おとなりさんにも……ごめんなさい』〉

「私も、ごめんなさい」

 栞もおとなりさんに謝る。


「責める気はないわ。仮に私がスノードームンさんや栞ちゃんだったとしても、同じような状態ですごしていたと思うもの。それに私も、まったくなにも気づいていなかったわけではないのだし」


〈スノードームンさん『ありがとうございます』〉

「ありがとう」

 おとなりさんにお礼を言ったあとで、栞はスノードームンに言う。

「今後は私のほうでも、場所を考えたり予告したり、気にしてみるね」


 けれど、そう言ったあたりで、持っていた不安が、一気に栞の中で上のほうに来た。

「……えっと……私もこれからも一緒にすごしていくって考えてて、いいの、かな……」

 ためらいつつ、スノードームと七色のトナカイたちに、栞は訊いた。


〈リースさん『いい!』〉

〈サンタさん『スノードームンは、それを望んでいますぞ。栞さんがどう思うか、気にしてもいますのう』〉

〈(六人口々に)『です!』〉


「よかった……。私自身、戸惑ったりもするだろうし、至らない面があってみんなに負担をかけちゃうかもしれないし……だけど。これからはお互い話し合ったりもしながら、工夫もしながら……って感じで、ここからまた新たに、一緒の毎日をスタートしていけたら嬉しいなって思ってます」

 栞は言って、笑みを浮かべる。


〈リースさん『やったー! 一緒にスタート!』〉

〈(六人口々に)『スタートー!』〉


〈家さん『おとなりさんも、これから、どうぞよろしくお願いします』〉

〈(六人口々に)『ます!』〉

「よろしくです」

 スノードームンに続いて栞も言い、おとなりさんにも笑みを向ける。


「嬉しいわ。こちらこそ、よろしく」

 微笑んでいたおとなりさんの、笑みが深くなった。


〈リースさん『栞さんとー、おとなりさんとー、スノードームンとー、テイクさんとー、素敵な関係をつくって続けていけるといいなっ。めでたい感じでスタートってことで! ツリーさん、よろしく!』〉


〈ツリーさん『はい。――では、スノードームをご覧ください。輝き、開始』〉


 ツリーの星が、キラキラキラキラ。キラキラキラキラ。


〈スノードームンさん『スターでスタート!』〉


 栞はますます笑顔になり、拍手をしようと手を動かした。




お読みくださり、ありがとうございます。


次の投稿は、12/13(土)夕方~12/14(日)朝あたりを予定しています【2025年12/7(日)現在】

(状況によっては、それよりあとの、(土)夕方~(日)朝あたりになるかもしれません)


今後もどうぞよろしくお願いいたします。



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