「12月、この月だから?」14.いろいろ話す、想いを渡す
三ネコ、月乃、スノードームと七色のトナカイたちに、順に視線を向けてから栞は口を開く。
「スノードームンさんと三ネコさんの声の感じを知ることができて嬉しいです。ありがとうございます。もし伺ってもよければ、スノードームンさんの精神体がどういう姿なのかも知りたくて……」
〈リースさん『スノードーム内のそれぞれの物が、大きくなったような感じだよ』〉
「二リットルのペットボトルの高さをイメージして考える感じ、と表現したメンバーがいます」
月乃が言う。
そのメンバーによると、トナカイとソリの長さ、サンタクロースとクリスマスツリーと家と雪だるまの高さ、クリスマスリースの直径がそれぞれ、そのサイズに近い気がする、とのことだ。
陶磁器のような質感の置物の、そのサイズの物が七体いる場面を、栞は想像してみる。
(おおー、存在感。……ん? バランスが……)
栞は訊いてみる。
「お互いのサイズ感は、実物と違う感じ? リースさん、家さんのドアにかかるには大きい?」
それに、サンタとツリーと家と雪だるまはスノードーム内では同じ高さではないし、いろいろと違う点が。
〈リースさん『うん!』〉
〈雪だるまさん『それと見た感じ、半透明……透け感があります。おそらく私も』〉
〈リースさん『だね!』〉
栞の頭の中に浮かんでいる姿たちを、半透明にしてみる。
「なんとなくこんな感じかな……って姿を思い浮かべることができたような……えっと、この精神体の姿で、珠水村に」
〈リースさん『そう!』〉
スノードームンの説明によると、本体であるスノードームごと動こうとすると、かなり力を使うし、移動にとても時間がかかるらしい。
それに、閉まっているドアなど物体をすり抜けるといったこともできないし、ドーム内から出られないし、個々で動けるのはドーム内だけと、いろいろ動きづらいそうだ。
スノードームンの場合、精神体で動くなら、それらの問題がクリアできるので、それぞれ精神体で行動だ! となったとのこと。
(なるほど……そういう事情や状況だったんだ)
〈雪だるまさん『……身近にいる存在が、そういう精神体で動けると知って、警戒されたり、不快に思われたりするかもしれませんが……』〉
「えっ!?」
栞は驚いて声を出す。
説明を聞いて納得していたら、栞にとっては思わぬことを、相手は心配していた。
「でも、室内に置いているとかドアを閉めてあるとかは、私の事情というか都合というかだし。それに、精神体ならいろいろ可能だからって、やりたい放題する人たちとは、とても思えないけど」
(って、思うんだけど、のんきすぎるのかな)
答えつつ不安になり、栞は思わずおとなりさんを見る。
栞の視線を受けて、おとなりさんが口を開いた。
「できるのをいいことに、なんでもしてしまおうとする人たちだとは、私にも思えないわ。それに、自分にとっての日常や通常が相手にとってはどうかを気にすること……私のほうこそ不足しがちかも、とも思った」
〈雪だるまさん『お二人にそう言っていただけて……ありがたいです』〉
「あっあの、私のほうこそいろいろ訊いちゃって、でも実は、まだいろいろ知りたいって思ってて。嫌だったら遠慮なく言ってください……」
栞は気になって、そう口にした。
〈サンタさん『質問されるのはかまいませんぞ。答えづらいときはそう言いますしの』〉
〈(六人口々に)(そして三ネコも)『です!』〉
月乃も頷く。
「ありがとうございます。えっと、じゃあ……スノードームごと動こうとすると移動に時間がかかるって、どのくらい?」
栞が訊くと。
〈トナカイさん『動いてみましょう! スノードームン、いったんみんなドーム内へ!』〉
〈(六人口々に)『ほいさ!』〉
「かなり力使うんだよね、言葉での説明でいいよ!」
栞はあわてて言う。
〈ソリさん『大丈夫です! ほどほどにします。見ててくださいね』〉
栞は、わかったと返事をし、スノードームを見つめる。
見つめる。
……見つめ、(あっ、ちょっとだけ動いた? かも?)
長テーブル上、スノードームが、ほんのちょっとだけ、前にズズっと。
〈ツリーさん『お待たせしました。このような感じだと思っていただけましたら』〉
「……よく、わかりました。ありがとう。精神体だと動きやすいし、スピードも出せる?」
お礼のあとで栞は訊いてみる。
〈リースさん『うん! 栞さんの部屋を朝、出発して、猛スピードじゃなくても午後には珠水村に着くくらい! 疲れきってもなかったし』〉
「えっ? かなり速いのね。すごい」
おとなりさんが驚きを込めた声で言う。
〈リースさん『えへへ』〉
(あれ? ということは)
「珠水村まで、自分たちの力で移動した感じ? なにかに乗るとかじゃなく」
みんなで歩道上をビューンと進むとかしたのだろうか。頭の片隅で想像しつつ栞は訊く。
〈家さん『勝手に乗るわけにもいきませんし……』〉
「……そうだよね。ごめん、疑ったとかじゃないんだけど」
〈家さん『いえいえ、お気になさらず。そして、乗らずに移動も楽しいですよ』〉
〈リースさん『そうそう! 空をタッタッタッターって!』〉
「空を?」
「タッタッタッター?」
順に声を出す栞とおとなりさん。
〈リースさん『ボクたちクリスマステーマだから。トナカイさん、ソリさん、サンタさんもいるし、みんなで空を目的地へ! って感じで!』〉
「でも、タッタッタッター?」
「飛んだり滑ったりの音とは違う感じね」
〈リースさん『うん! 走った音!』〉
栞とおとなりさんに、リースが答える。
「走ると移動しやすいのかしら」
と、おとなりさん。
〈サンタさん『そこはそれぞれですかのう』〉
〈リースさん『でも今、師走だから!!』〉
表示された字からも、力を入れている感が伝わってくるような、リースの言葉。
(師走だから……?)
「あ、走るっていう字が入っている月だから走るべし! とか?」
「あら。モノの方には、そういうルールが?」
栞の言葉を受けて、おとなりさんも訊く。
〈サー『そのようなルールはありませんよ』〉
〈サンタさん『うむうむ。ルールはありませんぞ』〉
〈ツリーさん『はい。ただ、師、のほうは一致させるのは難しくても、走の字のほうなら、と』〉
〈サンタさん『意見が一致しましての』〉
〈(六人口々に)『そうそう!』〉
〈ヴァン『三ネコとしては、大変、納得アンド共感できる選択理由ですね』〉
〈サー、トキ『ですね』〉
〈スノードームンさん『ねっ!』〉
(楽しそう)
栞は笑みを深めて、表示されていく文を読んでいた。
「楽しそうな移動の様子でほっとした。でも、けっこう距離あるし、地図とか見ながらじゃないだろうし……無事着いてよかったよ」
その点もあらためてほっとしながら、栞は言う。
〈リースさん『ボクたち、目指すところへの、だいたいの行き方がわかるんだ。行き来に関して、いろいろわかることもあるから』〉
〈ツリーさん『そして向かう途中、空でテイクのメンバーの方が、私たちに気づいてくださったので、より、着きやすく』〉
「相当な速さで進んでいたんでしょう? それなのに気づくって、そのメンバーの方もすごいのね!」
おとなりさんが驚く。
(動体視力がすごくいいとか? それとも、お互い同じようなスピードで動いていれば、お互い同士はちゃんと見えるとか、そういう感じ?)
「いろいろなメンバーが活動しています」
月乃が明るい感じの声で言う。
〈リースさん『そのメンバーの方が、テイクさんにスムーズに相談できるよう、いろいろしてくださったんだ! そして、いろいろな方に対応していただいたよ!』〉
「よかったね。――私からも、お礼を言わせてください。ありがとうございます」
「代表して、受けとらせていただきます」
栞と月乃でお辞儀し合い、それぞれ姿勢を戻す。
(……スムーズに相談は、もちろんよかったんだけど……)
相談内容は、なんだろう。
気になるし、訊きたいし。でも、訊いていいのか。そして、どんなことなのか内容を聞くのが、少し怖い気も。
(でも訊くなら、今訊いたほうが)
入力して伝えることをスムーズにできる三ネコがいて、モノとのことに対応できるテイクのメンバーたちがいる、この場で訊くほうが。
栞は思いきって言い始める。
「あのね、スノードームンさんがなにを相談したのか、実はとても気になっていて。ほかの人の相談内容を訊くのはどうかなとは思うし、教えたくなかったらそれはそれで全然かまわないし、踏み込んで訊いて不快にさせちゃったらごめんなさい、なんだけど」
栞は一度言葉を切り、再び口を開く。
「もし、相談内容が、私とのこととか、私の部屋での生活環境についてとか、なにか私が聞くことで、少しでも私が対応とか、あらためたりとか、できることがあればと思って」
〈雪だるまさん『不快ではないですし、教えたくないとも思いませんよ』〉
〈(六人口々に)『です』〉
〈サンタさん『すぐに断念してしまったスペシャル抽選のことが気になりましての』〉
〈ソリさん『プレゼントさがしのお手伝いができれば、とも思いまして』〉
〈リースさん『もっと仲よくなりたい相手と嬉しいほうに向かうように、ボクたち、なにかお手伝いできたらって』〉
(えっ、えっ、それって。私とのこと、っていうより……)
「私のことを気にして、相談に行ってくれたの……?」
〈リースさん『えへへ。栞さん悩んでるから、ボクたちなにかできたらなって思って』〉
「そうだったんだ……私、一緒の部屋にいるのに、自分のことばっかりになっちゃってたよね、ごめんなさい」
〈リースさん『心配はしたけど、謝らなくていいんだよー』〉
〈ツリーさん『すごしていれば、そういうときもあるでしょうし』〉
〈家さん『責めたいわけではないんです』〉
〈リースさん『そうだよー。それに、いつもどういう風にしていてって、強制したいとかでもないんだ』〉
〈サンタさん『ただ、なにかできれば、なにかしたいとは思いましての』〉
〈トナカイさん『相談に行けそうだったので行ってみよう、と』〉
「ありがとう」
栞はしっかり口にし、スノードームと七色のトナカイたちに笑顔を見せた。
(そうだ、ちゃんと話しておきたい。あ、でもその前に)
栞はおとなりさんを見る。
「おとなりさん、おとなりさんとの最近のこととか、お互いの気持ち話したこととか、そういった話、ここで話してもいいかな……」
「いいわよ。ちょっと照れるけれど、どうぞ」
「ありがとう」
おとなりさんにお礼を言ってから、スノードームと七色のトナカイたちを見て、栞は話し始める。
「えっと、気になってたことは、詳しいことがわかって、気持ちが落ち着いたよ。プレゼントさがしは、そのときさがしていた理由でのは、しなくてよくなった感じで」
それにね、と言い、栞は続ける。
「もっと仲よくなりたい相手と、気持ちを伝え合って、これからもよろしくって、できたよ」
〈リースさん『そうなんだ!』〉
「いろいろ動いてくれてる間に、ごめんね」
〈リースさん『いいんだよぅ。嬉しいよ! やったー!』〉
〈トナカイさん、ソリさん『わーい!』〉
〈サンタさん『嬉しく思いますぞ』〉
〈家さん、ツリーさん、雪だるまさん『よかったです』〉
「ありがとう」
そろってぴょんぴょん跳んでくれている七色のトナカイたちに、栞は笑顔でお礼を言った。
お読みくださり、ありがとうございます。
次の投稿は、12/6(土)夕方~12/7(日)朝あたりを予定しています【2025年11/30(日)現在】
(状況によっては、それよりあとの、(土)夕方~(日)朝あたりになるかもしれません)
今後もどうぞよろしくお願いいたします。




