表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
118/120

「2月、ながいすとらっぷな橋渡し」2.きさらぎの布・布話


「「『ドレスぞ!』」」

「「『……じゃなくて』」」

「「『ドレスドオムライス!』」」


 育生いくお、ゆかり、ラビィの、花山はなやま家の三人が声をそろえる。


「美しいな!」

「素敵ね!」

『綺麗!』


 それぞれの前に置かれた白いお皿の上には、艶やか黄色に麗しドレープのドレス・ド・オムライス。


「「『いただきます!』」」


 三人は勢いよくスプーンをオムライスに向かわせ、いったん止まり。


「「『――やっぱり、いただきます!』」」


 少ししてからそう言って、今度はそれぞれスプーンでオムライスをすくった。


 優月ゆづきの前にあるお皿にも、ドレス・ド・オムライス。

 三人に続こうとして、しかしやはり、手に持ったスプーンを、オムライスへとすぐに動かせない。


(なんかこう……)

 オムライスといってもいろいろなタイプがあるが、最初にスプーンを入れるのに、ちょっと思いきりがいるものが多いような気がする。


 この状態でいったん出来上がった、美のようなものを感じて、スプーンを進め、くずしてしまっていいのか、ためらうというか。


 そう思いつつも、おいしそうだな、きっとおいしいだろうなとも思うから、はやく食べたくて、えいやっとスプーンを入れるのだが。


(というわけで)

「いただきます」

(えい)

 下端のほうをスプーンですくう。


 コトハとちゃも、えいっとか、失礼しますとか言いながら、コトハと茶それぞれの分のドレス・ド・オムライスに、スプーンを進めている。


 精神を持つモノが物の姿のままで飲食可能なよう、飲食物関係にコトハが機能付与済みなので、薄いピンク色のうさぎのぬいぐるみであるラビィも、茶運び人形の茶も、飲食可能だ。


(おいしい)

 くずすのがもったいないからと、見ているだけにしなくてよかった。そう思える味だ。


「「『おいしー!』」」

 花山家の三人が声を弾ませる。


「昔ながらのとか、切ってとろーりとか、美しいドレープのとか……それぞれのオムライス、それぞれのよさがあるなぁ。これもおいしい」

「そしてどれもうまくつくるの難しいと思うのに、これほんと……綺麗」

『昨日の素敵なドレスも、今日のおいしいドレスも、どちらも嬉しい』


 育生、ゆかり、ラビィと、三人それぞれ感想を述べつつも、どんどんと食べ進めてもいる。


 コトハ、茶、優月も、相づちを打ったり感想を言ったりしながら、食べ進めていく。


 おいしかったーとみんなで食べ終わり、飲み物を楽しむ。

 育生と茶は温かいほうじ茶、ゆかりと優月はホットカフェオレ、ラビィとコトハはホットチョコレート。



「「『ではでは、見ていただけると嬉しいです』」」

「ぜひぜひ、拝見できると嬉しいわ」

「拝見するのが楽しみです」

 花山家の三人の言葉に、コトハと優月が返事をする。


 昨日、花山家が、珠水村しゅすいむらでテイクの貸衣装サービスを利用したときの写真を、これから見せてもらうのだ。

 利用時の話は先に少し聞いたりもしているが、写真は優月もこれが初見である。


 食器類をいったん片づけた丸テーブルに、画面が見えるよう画面を上にして、育生がタブレットを置いた。


 位置としてはコトハと優月に近いあたりに、コトハと優月が正しい上下で見やすいような向きで置かれたタブレット。


 画面に表示されている写真は、花山家の四人、育生、ゆかり、ラビィ、ゆなが一緒に写っているものだ。ラビィは、ぬいぐるみとして参加した。


 向かって左に育生、右にゆかり。二人の間にゆながいて、ラビィは育生が左腕で抱いている。


 育生とゆかりは、クラシカルな印象のベージュ基調のパンツスーツ。

 育生のほうのタイやポケットチーフ、ゆかりのほうのブラウスやコサージュは、紺色。


 ゆなは、紺色の長袖膝丈ワンピース。襟とカフス部分、前面に縦に三つ並んだボタンは、ベージュ。


 ラビィは、紺色のノースリーブワンピース風の服。胸元にベージュの布ブローチ。


 ラビィが着ているのは、ぬいぐるみや人形用の貸衣装だ。


 サービスを提供する側としては、さまざまなサイズや種類のぬいぐるみや人形に対応するには、充実度はまだまだこれからという方面。

 そう、前に貸衣装関係のメンバーから優月は聞いたことがある。


 けれど今できる範囲で、ほかの三人と雰囲気や方向性を合わせたものになっていると、写真を見て優月としては思った。

 合わせたものにしやすいよう、それぞれの衣装を選んだのかもしれないが。



 一着目は、スタジオ内で一定時間、撮影を担当するメンバーに撮影してもらえるコースを、セットで選んだとのこと。


 コトハが画面を操作し、二枚目以降の写真へ。

 衣装はそのままで、いろいろなパターンでの写真がある。


 育生とゆかりの立ち位置を逆にしたもの。

 育生、ゆな、ゆかりが手をつないで立ち、ゆかりが空いているほうの腕でラビィを抱っこしたもの。

 育生、ゆな、ゆかりが横に並んで立ち、ゆながラビィを抱っこしたもの。

 ゆなとラビィが椅子に座り、育生とゆかりが後ろに立っているもの。

 などなど。


 育生とゆかりとゆなが、キリッとした表情をしているものもあれば、微笑んでいるものも、とっても笑顔のものも。



 育生やゆかりやラビィが、撮影時のことなどを話したり。

 写真を見て思ったことを、コトハや優月が口にしたり。

 茶にもよく見えるよう、コトハが何度かタブレットを持ち上げて、画面を茶のほうに向けたり。


 そういったことをしながら、みんなで写真を見進めていく。



「次あたりから、畑中はたなかさんご家族との写真です」

 ゆかりが言う。


 畑中家。

 畑中 さとし、さち、そして聡とさちの娘である、まそら。


 ゆなが村で出会って仲よくなり、よく一緒にすごしているのが、まそらだ。


 まそらは、ゆなと同じ年度の生まれで六歳。聡とさちは三十代、育生とゆかりの数歳上だ。

 穏やかな雰囲気の人たちというのが、優月が畑中家の三人に抱いている印象である。あと、聡もさちも、わりと長身だと思う。


 ゆなとまそらが仲よくなったことをきっかけに知り合った両家族だが、親たちも気が合い仲よくなって、今では両家族みんなで仲よしである。

 今回の貸衣装サービスも、両家族で一緒に利用した。



 衣装を借りて撮影会をしたいねという話は、数か月前から両家族でしていたそうだ。

 それをこの二月に、おもにスタジオでするという案を出したのは、ゆなとまそらだという。


 少し前のクリスマスやお正月、もしくは少しあとの、花がたくさん咲いてくる頃に、外で撮影じゃなくていいの? と親たちは気にしたそうだが。


 比較的利用者の減るこの時期なら、余裕を持って衣装を選びやすいだろうし、自分たちが着たい時間帯に、着たい衣装が借りられ済みという確率も減ると思う。着替えや撮影も、おそらく落ち着いてできる。

 そういったことを二人は言ったそう。


 もちろん、利用者が多くいそがしいときであっても、テイクの人たちはちゃんと対応してくれると思うので、あくまでも自分たち側の余裕として、というようなことも、二人は言い添えたとのこと。


 そして、スタジオなら天気を気にしなくていいし、温度等の調節もしてもらえる、と。


 二人でいろいろと調べて考え、出した案だった。


 それに……いそがしい時期より利用料が安くなっているときなら、予定していた二着にプラスして、もう一着着たいなとお願いできるかなって……。

 二人はそういったことを、控えめな口調で言ったそうだ。



「というわけで写真、三着分あります」

 育生が笑みを浮かべて言い、楽しみだわ、とコトハが微笑む。

 優月と茶も大きく頷いた。




お読みくださり、ありがとうございます。


次の投稿は、5/2(土)夕方~5/3(日)朝あたりを予定しています【2026年4/26(日)現在】

(状況によっては、それよりあとの、(土)夕方~(日)朝あたりになるかもしれません)


今後もどうぞよろしくお願いいたします。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ