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対決 2

 帝釈天(たいしゃくてん)が決闘の開始を宣言した。

その瞬間、牛頭馬頭(ごずめず)が動いた。


 二人は帝釈天に対し、瞬時に一列に並だのだ。

帝釈天から見ると牛頭(ごず)しか見えなくなった。

馬頭(めず)が牛頭の後ろに隠れたのだ。


 その体制で牛頭は帝釈天に向かって駆けだした。

帝釈天はユックリと体を斜に構えた。

空手の型に似ている。


 牛頭(ごず)が間合いに入り、(こぶし)を突き出す。

同時に牛頭の後ろから馬頭(めず)がジャンプをした。

牛頭を飛び越えてきたのだ。


 帝釈天は牛頭の突きを、右手の挙で受け止めた。

その瞬間牛頭はすかさず後ろにステップする。


 馬頭は空中で足を振り上げた。

そして、そのまま打ち据えるかのように(かかと)を振り下げる。

帝釈天の脳天を狙った()りである。

まともに人間が喰らえば死ぬだろう。


 だが、帝釈天は軽く後ろにステップして下がった。

帝釈天のいた場所に馬頭の蹴りが地面に炸裂した。


 ドスッ!


 馬頭は地面に穴をあけ着地をした。

着地すると同時に立ち上がり帝釈天と対峙(たいじ)する。

帝釈天からは馬頭の後ろにいた牛頭が見えなくなった。

だが、牛頭に動く気配はない。


 帝釈天は感心し言葉をかける。


 「見事だ。」

 「何を余裕をカマしていやがる!」

 「まぁな、だが結構な破壊力だ。

 素直な感想を述べただけなんだが?」


 帝釈天が言い終わる前に、馬頭(めず)が突然しゃがんだ。

その馬頭を飛び越え、牛頭(ごず)が回し蹴りを放つ。


 「おっと!」


 帝釈天は上体を後方へ反らし回避する。

牛頭は空中で一回転して地面に着地した。


 「おお、いいコンビネーションだ。

 危ない、危ない・・。」


 「くそ~! 良く言うぜ。

 余裕で(かわ)しておいて!」


 「まあ、そういうな。

 もし、まともにくらっていたら危なかったぞ。」


 「気にいらね~な!

 なんだ、その余裕は!」


 そう牛頭(ごず)はいうと同時に、帝釈天の右サイドに移動した。

それに合わせ馬頭(めず)は立ち上がりながら、(あご)をねらって右手を振り抜く。

帝釈天はステップで牛頭(ごず)がいる逆側に、瞬時にずれた。


 その帝釈天にめがけ牛頭は頭を狙って回し蹴りを出した。

帝釈天は軽くバク転をして数歩先に立つ。


 だが、その時、帝釈天の顔が一瞬曇った。


 「くっ!」


 その様子を牛頭馬頭(ごずめず)は見逃さなかった。

牛頭が帝釈天に言い放つ。


 「やっと効き始めたか。」


 その言葉に帝釈天は応えない。

肺に空気をいれようと深呼吸をするのだが息ができないのだ。


 帝釈天は人間と桁外(けたはず)れな肉体を持っている。

その分、基礎代謝が大きいのだ。

そのためバク転や急激な動きをすると、常人の倍以上の酸素を必要とする。

そのため毒が一気に回ったのだ。


 だが、帝釈天の様子を見て牛頭馬頭は目を見張る。


 「何故・・倒れない!」


 呼吸ができず、体が酸素を急激に必要としているはずだ。

(もだ)え苦しんで倒れないはずがないのだ。

なのに、なぜ平然と立っていられる?


 確かに帝釈天の顔色は悪くなっている。

だが寸分の隙もないのだ。

近づいたら反撃に()うのは間違いない。

呼吸もできないのに、なぜ動けるんだ。

化け物め!

そう牛頭馬頭(ごずめず)は思った。


 牛頭馬頭は互いに顔を見合わせた。

その一瞬の隙を、帝釈天は見逃さなかった。


 一気に間合いをつめ、回し蹴りで二人同時に蹴り倒した。

それを喰らった二人は空中を飛んだ。

そして数メートル先の地面に激突して、数回跳ね帰りながら地面を転んでいく。


 牛頭馬頭は強力な回し蹴りに、脳震(のうしん)とうを起こして気を失った。

でも、それは一瞬の事だった。

すぐに意識は戻った。

だが、立ち上がろうとしても意識が朦朧(もうろう)として、立ち上がれない。


 虚ろな意識の中で、牛頭(ごず)は帝釈天のいる場所を見る。

すると帝釈天は片手を地面に着け、ひざまずくかのような体制だった。


 「なんて奴だ。

 毒を喰らっても、なおあの回し蹴りかよ・・。」


 「牛頭(ごず)、大丈夫か?」

 「ああ、大丈夫だ馬頭(めず)。」

 「立てそうか?」

 「直ぐには無理だ。」


 「俺もだ。

 だが、今、帝釈天様に止めを刺さないと・・。」

 「わかっている! 分かっているのだが・・。」

 「くそう! 神だけのことはあるな。」


 馬頭が恨めしそうに帝釈天を見ていると、帝釈天の横に何かが現れた。

それも突然に。


 「次元転送・・か?」


 馬頭は回らない頭で、この現象を冷静にそう解析した。


 現れたのは人のようである。

肌は赤茶色だ。

この世界ではあまり見慣れない肌色だ。


 顔は・・・少年ではないか!

少年が次元転送だと?

そんなバカな!

そう思いじっと帝釈天ら二人の様子を見た。

いや、見るしかなかった。

動けないのだ。


 帝釈天の傍らに現れた者は、立ったまま腕組みをする。

何故、すぐに帝釈天を助けぬ?

帝釈天の助っ人ではないのか?


 その者はあろうことか、帝釈天を見て笑い出したのだ。

帝釈天は苦しそうな顔をしながら、その者と何か会話している。

まるで笑っていることに抗議しているようだ。

だが、呼吸のできない帝釈天が話すことなどできるはずがない。


 それにしても・・。

信じられん。

呼吸ができない帝釈天をなぜ助けようとしない?

このままだと帝釈天といえども命が危ないはずだ。

神とは命を粗末にするものなのか?


 そう思っていると、その助っ人は牛頭馬頭(ごずめず)に向かって歩いてくる。

まずい!

まだ体が動かない!

このままでは、止めを刺される!


 恐怖で牛頭馬頭は後ずさりしようとする。

だが、体は動かない。

このままではやられる。

そう思った。

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