メイドがやってきた
~1年後~
俺は10歳になった。
背も少し伸び身体もしっかりしてきた。
あれから本当に色々と変わった。
本当に去年の俺はなんて純粋無垢だったんだ。
今の俺はあるきっかけで前世の記憶を思い出した。
俺ことジーク=コンティーナは、実は元日本人である。
前世では自営業という名だけの使い勝手のいい外部の従業員。
取引先にはいいように働かせられ、自分の仕事が回らなくなるので従業員を雇うが結局は仕事のフォローで寝るまを惜しんで働く。
いつか田舎でゆっくり暮らすんだと憧れていた。
そんな記憶が急に蘇った。
最初は意味が分からなかったが
自分は転生していたんだと理解した。
まぁ記憶が戻るの少し遅くないか?とは思うが
そこは気にせず、こんなチャンスは二度とないと思い
今度こそゆっくりと自分のしたいことをして過ごしてやると誓ったが・・・
コイツがいることを忘れていた。
俺の前世の記憶を戻した犯人。
レオバルト。
通称レオだ。
そんな事を思っているとアイツが来た!
アイツって呼んでることに何故って?
今の俺の状況を見てもらえば分かってもらえるだろう
そう、この縄でグルグルに縛られ木に吊るされている。
なんでこうなったかって?
俺が聞きたい・・・
話は1年前にさかのぼる。
出会ったばかりのレオは本当に良い人だった。
年も近く執事というよりは
どこか頼れる兄という感じだった。
あの頃は楽しかった。
ボロボロの屋敷を少しずつ二人で直していき
なれない大工道具の使い方など丁寧に教えてくれた。
金槌の使い方や木の切り方。
記憶の戻る前の俺からすればどれも初めての体験で楽しい毎日だった。
レオのおかげでボロ屋敷もすっかり最先端の屋敷に
まるで古民家をリフォームしました!的な感じで
昔の良さを残しつつ素材の良さを前面に出した優雅な家に早変わりした。
執事なら出来て当たり前と言っていたが・・・絶対嘘だ。
話が少しズレたがこのころは上手くやっていた。
おかしくなったのは剣の稽古をしてからだ。
「貴族たるもの外敵から民を守る為に強くなくてはいけません」
ということで剣の稽古をすることになった。
少しは自信があった。
父親からも稽古をうけ、筋は良いと言われていた。
だが・・・
「何ですかその構えは!それに軽い!!軽い!!軽いですぞ!!」
ボコボコにされた。
その日は次の日の昼まで目を覚まさなかった。
それからは地獄だ・・・
「そんなんでは誰も守れませんぞ!何回殺せたことか・・・」
目を覚ますと説教をされ地獄のトレーニングが始まった。
俺が雇い主ですよね。
そんな疑問を打ち消すかのように
朝から晩まで毎日毎日・・・
思い出しただけでも寒気がする。
これはまた別の機会に話そう。
まぁ今はまだ思い出したくないって事だ。
そして縄で巻かれている理由だが…
サンドバッグなんですよね
野生の格闘オークの
格闘オーク?って疑問ですよねー
こいつらはオークの癖に鍛える事、主に何かを殴る事が趣味で
太い木や岸壁を見つけてはトレーニングのように飽きるまで
ひたすら殴り続ける。
ここまで言ったら分かってもらえるだろうか・・・
その殴られる側の役を今やってるわけで
やりたくてやってるわけではない。
朝、目を覚ましたらこの状態だった。
いや、普通の人だったら死ぬよ。
そんな間にもオークがグフォグフォ言いながら殴りつけてくるし、
いや、今の俺でも少しは痛いよ。
「飽き、ふぉまで待、ふぉっかー」
そんな事を思っていると
木の間からメイドが見てる…
ものすごく見られてる・・・
いやオークだよ。
早く逃げないと危ないよ。
まぁいざとなったら助けるけど・・・
って近づいてきちゃ駄目だよ!!!?
案の定、オークはメイドに気づき醜悪な笑みを浮かべる。
あぁ、コイツらはお約束の女好きだ。
「ブフォッー!!!」
オークがメイドの方へ飛びかかる
「やべっ!にげ・・・」
ブシュー‥
ポテッ…
オークの首が下に転がってきた
あれ?
「大丈夫ですか?それともお楽しみを邪魔してしまったでしょうか・・・」
メイドはもの凄く申し訳なさそうに首を傾げながら問いかける。
「・・・って!えっ!いやいや全然大丈夫です!
お楽しみとかじゃなくて、朝起きてたらこの状態で・・・って意味わからないですよね!
くっそーアイツ!アイツのせいだ!マジ覚えてろ!」
「大丈夫ですか?」
「あっ!すいません・・・ってこんな格好がまず失礼ですよね。
降りるので少し離れてください。」
そういって体に力を入れる。
ミシミシミシ・・・ブチンッ!
縄が勢いよく切れる。
俺は手を握り、開き、感覚を確認する
って今はそれどころじゃないな。
「もしかして誰かと逸れたのですか」
俺はメイドに質問した。
ここは人が滅多に訪れる事のない森の中だ。
そんな森にメイドが一人・・・
違和感しかない状況だが取りあえず聞いてみることにした。
「探し人がこの辺りの村にいると聞いて・・・」
「そうなんですね!良かったら今から村に戻るので案内しましょうか」
「いいんですか!ありがとうございます!」
メイドは前かがみで俺の手を握りブンブン上下に振る。
色んなものが揺れている。
俺は理性になんとか打ち勝ち、メイドの手を放し村に向かう事にした。
俺も大人になったもんだ!
当たり障りのない会話をしていると村が見えてきた。
村に入ると肉屋の親父に話しかけられた
「今日は早い帰りだな!
ってそういうことか・・・なんかあったら頼って来い!」
親父は俺の横にいるメイドに気づき何か察したようだ。
そう、この村には基本人は訪れない。
辺境もまた辺境。
訳アリのやつしか来ることはない。
来るもの拒まず、去る者追わずの村だ。
人間生きていれば一つや二つ言いたくないこともある。
王都の方の街の噂では
最後の村や、終焉の村、島流しの村、罪人の村、ゴミのたまり場
言いたい放題だ。
終焉の村はちょっと良いなとは思ってる。
なんか取り方によってはラスボス前の村みたい的な。
まぁそんな事も考えつつ、メイドさんと話しながら自宅へ帰ってきた。
「あのー・・・ここって…」
メイドが気まづそうに尋ねる
そうだよね。メイドさんからすれば村の領主っぽい人の家にいきなり連れて行かれてる感じですよね
流石に貴族の屋敷とは思わないだろうが…
「あっ!すいません。ここ俺の家なんで気にしないで・・・」
「見つけた!!!!」
メイドは急に大声をかけ涙を流し走っていく。
俺は驚きメイドの走る先を見ると・・・
「お前かよ!!!!」
咄嗟に突っ込んでしまった…
それは俺を縄に巻いて森につるした張本人。
レオパルドがいた。
あぁ・・・あぁ・・・嫌な予感しかしない!!!
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