第六十話 「鋭利な目」
「ノートを城内に入れるのはマズイな…!」
彼が腕を広げ合図すると、地上から闇が滲み出てきた。
「ネガモルト!!ソイツを始末しろッ!!」
「いや無駄だ。」
走るノートの影が揺らぐ。
これまでこれを幾度と見てきたガルフィスはすぐに分かった。
振り返ったその先。
ネガモルトもいないその先。
彼はその先の未来を走り抜けていた。
「今のは輪廻か…!」
…
後方に銃を構えるクロブは、今やっと分かった。
「そうか!さっき歩いていた時間に別の時間軸の自分を走らせておいたのか…!!
いざという時に自分の位置を変えられるように!」
「そうはさせない。逆行!!」
ガルフィスの目線の先はノートだった。
「…?」
走り抜けていく痛覚。
瞬間、違和感に気付いた。
前に進もうとする意思が足にリンクしていない。
「お前の動きのベクトルをイジった。もうマトモには動けまいッ!!」
「ノート!!」
クロブの拳銃が火を吹く。
三発のマグナムがガルフィスに向かって牙を剥く。
「そんな物で視線を変えるとでも?」
彼は振り返りもせず、銃口を背後に向けた。
流れるように拳銃が火を吹く。
徐々に近づき合う弾。
ついに爆発音が辺り一帯に轟かせた。
彼は見えていない筈の弾を正確に射抜いたのだ。
「な!?」
「…この程度、普通分かる。
聴覚であれ何であれ、感じ取れない感覚はない。
さっきのは間合いがメンドかっただけだ。
特にお前の『爆風マグナム』。
火薬のニオイが染み出てる所為でよく分かったよ。
一番の手掛かりだった。
起爆点は弾の先端。
そこを射抜けばいくらでも防げる。」
全て見切っていた。
狂った感性だけでなく、高い戦闘能力も垣間見えたこの瞬間だった。
「よくまあベラベラと話すなぁ…そんなんじゃ、周りだって見えないぞ?」
「何を言って」
瞬間、彼の目元を弾丸が掠める。
「な…ッ!?」
それこそ1秒もかからずに頭を下げた。
しかし避けきれない。
「ッグァ…ぁ!!!」
紅の群れが流れ落ちる。
手で押さえようにも、その隙間から零れ落ちていく。
「ァッ…しまッ…!!」
目の前に視線を戻すも、ノートはいなかった。
…
「『だるまさんが転んだ』って感じだな。その技。」
「…キサマ…今のは…!!?」
「跳弾さ。この速さじゃ普通狙える技じゃないが、『疾風マグナム』の風があればイケる。」
「つまり…最初の三発は…囮…ッ!?」
「正解だ。囮に爆風マグナムを使ったのは爆発音に銃声を紛らわせるため。
簡単な話、お前の視線さえ外せればなんでも良かったのよ。」
右手に銃をクルクルと回し、気怠そうに笑った。
「……お前は、生かしておいてはならない…」
それまで見せていた背を返し、ハッキリとクロブを認識した。
「やっとその気になったか?」
「全くもってやる気は湧かない。だが、この目の代償を払ってもらう……!!」
彼は目を見開いた。
その時。
地鳴りが聞こえ始めた。




