第六十一話 「歪んだ空間」
「地鳴り…!?」
「俺の能力は、ベクトルを狂わせる能力だ。
どこぞの人と同じような反転ではない。
これ…重力に使ったらどうなると思う?」
「…!!」
思考の瞬発力が勝り、銃が三度火を吹く。
「手遅れだ…!!」
弾丸は急に進路を曲げ、地面を削り止まった。
「駄目だ…!これじゃ軌道もクソもない!!」
「お前の負けだ!!クロブ!!」
そこら一帯の家屋が引き抜かれていく。
それら全てが瓦礫となって飛んでいく。
「……待て考えろ。ベクトルを狂わせるのは分かった。 ならどうやって狂うんだ?
ランダムか?もしくは波形状か?」
彼はもう一度、横一線に三発ほど弾を撃った。
「狙撃マグナム…もし波形状に狂っていくなら、なだらかに軌道が乱れていく筈だ…!!」
注意力を研ぎ澄ます。
全ての弾丸が左下を向いた。
そして地に着く間際、若干だが、上を向くようにして落ちていった。
「大体わかった…だが今のをどうやって…!」
だが彼に考える猶予は無かった。
民家が単なる岩のように雪崩れた。
「…大した事ないな。」
瞬間、クロブに覆い被さっていた瓦礫が弾き飛ばされた。
「…?」
瓦礫が正面に小さなドームを作る。
続けて弾が放たれる。
「驚いたな。まだ生きてるのか。」
「当たり前だ。死ぬのはお前を倒してからだ。」
返答は確かに瓦礫の中から聞こえた。
ガルフィスは身構えた。
…しかし、クロブの弾は瓦礫の中に刺さって終わった。
「…おいおい待ってくれ。そんなんで仕留めるつもりだったとか言わないだろうな?」
「あぁ。言わないさ。」
「ならどうして?」
「確認したかったのさ。重力の狂う空間をな…」
「何…?」
クロブの手には、まだ硬く握られる拳銃が一丁。
スロットが一つ右に回った。
「……宣言しよう。」
「?」
「これから、俺の弾は重力を受けない。
そしてお前の体を射抜く。」
「何を馬鹿なことを。」
「どっちが馬鹿なんだろうな?」
拳銃から弾が放たれる。
今度はガルフィスの頭をめがけ、一直線に。
「無駄だって言っただろ?」
弾は、狂わされた空間に突入した。
…
だが、弾は落ちなかった。
「な…!?」
「お前自身も知らなかったんだろ。その能力の穴だ。」
凄まじい速度故にガルフィスの避けは間に合わない。
弾は彼の頭を掠らせた。
紅い花の蕾が咲きかけた。
「ッ…なにィ…!!」
何の変哲も無い弾。
なのに弾道がブレない。
「さあ、どうする。」
「ナメんな…!!」
突然、大きな揺れがクロブを襲った。
立つことすらまともには出来ない。
次に彼の目の前にあったもの。
それは割れ抉られた大地の破片だった。
「…!!!爆風マグナム!!」
「死ね……クロブ…!!」
宙を舞う大地は宙を割く物に変わる。
大量の空気を押し退け突っ込んでくる。
遮る爆風は、全く効いていない。
そのまま落ちて、大穴を開けた。
さらに段々と埋まっていく。
一体どんな体勢で居ようとも、恐らく大地はクロブを潰して離しはしないだろう。
「やったか。」
「いや……やってない。」
彼の姿は彼の真後ろ、その上空を飛んでいた。
片手には拳銃、額には紅い汗がしたたり、体勢を崩したまま浮かんでいる。
「まだ死ねない…!」
彼の拳銃はまた火を吹いた。




