第四十七話 「希望の光」
一瞬、場が静まった。
前回、あれだけの大敗を経験した。
次こそはと、これまで努力してきた。
とある犠牲を出しながらもだ。
表情が変わる事はない。
もう彼らは覚悟を決めていた。
「あぁ。そのつもりだ。」
「ま、このまま居ても何も変わりませんからね。」
「…よし。
じゃあまずは一旦街を鎮めなきゃな。
話はそれからだろ?」
「わかってる。」
……
…
城の門を潜ると、そこにいつもの街は無かった。
静けさなどとうに消え、罵声が飛び交う。
さらには至る所から黒煙が立ち昇っている。
「……中々酷い事になってんな。」
「どうする?こんだけあちこち散らばってると、一掃は難しいぞ?」
「そうですね…。何かヤツらをおびき寄せることが出来れば…。」
ノートは少し考えた。
ネガモルトは負の感情からなる魔物。
負の感情とは正の感情を拒むもの。
つまり、ネガモルトは正の感情を拒む。
ならばこの正の感情を使えばどうにかなるかもしれない。
だが正の感情と言えど、それは実体のない存在。
かなり困難な方法である。
だが彼はその取っ掛かりに気付いた。
「なあ。」
「?」
「あいつら負の感情から出来てるんだろ?」
「まあ…そうだな。」
「てことはさ、実体のないものに実体を与える方法はあるって事だよな?」
「…!!」
「それ前に魔道書で読んだことがあります!
確か、『闇もしくは光で出来た受け皿に、対象を注ぐ』とかなんとか。」
「それだ!」
「じゃあなんだ。こっちは正の感情の魔物でも作り出すってのか?」
「いいや。そんな必要はない。」
「じゃあどうするって言うんだ?」
「そもそも正の感情を作るとかって話は、それが負の感情の対だからって所から来てるんだ。
対になる二つのモノっていうのは、どんな時でも争いたがるんだ。
そう考えたらさ、ネガモルトはどう考えたって『闇の受け皿』から作られてるだろ?
なら、『闇』と対になる『光』を使えば、何かできそうじゃないか?」
彼の類い稀無い考察力が光る。
これを否定しようにも、それこそ時間の無駄だ。
しっかりと道理も通っている。
「ならやってみるしかないか。レド?」
「光…ですか。なら氷のレンズでどうにかできそうですかね?」
レドが手を差し出すと、次々に空気が凍りついていく。
何度か呼吸しているうちに、氷の粒はそこらの石と同じぐらいにまで大きくなり、10個程度浮かんでいた。
僅かな太陽の光をある一個の氷の粒に集める。
すると、みるみるうちに輝きが増してきた。
気付けば、通りにいた魔物達は皆こちらを見ている。
「…これは…上手くいったのか?」
「興味は示してるようだが。」
それまで顔だけが此方を向いていたが、完全に胴体も此方を向いた。
奴らはゆっくりと足を進める。
どうして歩けるのだろうと考えるぐらい太ったものだとか、逆に骨と皮しかないようなものだとか、全部が此方へ行進さながら蠢いている。
「さぁて、これをやったのはいいがどうする?
最大限の力で叩くか?」
「そうするしかないだろう。」
進路は正面の一本道のみ。
一体ずつ倒している余裕はない。
「さて、じゃあ行くか。」
「いや待ってください。」
「?」
「まだアナタは目覚めたばっかりだ。それに今回は敵も多い。
僕が行かせてもらう。」
レドはそう言って、一歩前へと踏み出た。




