第四十一話 「混戦」
「帰れなくなるって…なぜ?」
「…さっき俺は、警察の家宅捜索に遭った。
その時に一斉射撃されたんだが、
流れ弾がポータルに当たってた。」
「つまり機械が狂ったと?」
「そういう事だ。恐らくポータルを開き直しても、別の空間に連れて行かれる。」
「じゃあどうするんだ。」
「簡単だ。あの研究品を使う。」
「あれをか?『月夜の想い』はあるのか?」
「既に出来上がっている。だが最後の薬品が入れられていない。」
「…リミットは?」
「保って一時間。次に言いたい事は分かるか?」
「行きて帰ってきたらジュース一本だ。」
「いいだろう。」
……
…
研究所前 大通り
「以前異常ありません。どうぞ。」
『了解。そのまま巡回を続けてくれ。』
道路に蔓延る何人もの警察官。
誰にも見つからずに侵入するのは不可能だ。
だが、ここから更に人を呼ばれても、状況は悪化するだけだ。
「レスム、聞こえるか?」
『あぁ。バッチリだ。』
「研究所前だけで10人いる。」
『なら無線は切断しておこう。他には?』
「拳銃とかはどうにかならないか?」
『それは無理だろう。』
「じゃあ研究所内の状況とか。」
『そうだな。人数と大体の位置なら分かる。』
「まず何人だ?」
『熱源から察するに2人だな。』
「位置は?」
『ポータルは地下一階だから……
あぁ、間違いない。一階と二階に計2人だ。』
「わかった。無線が切断できたら言ってくれ。」
「それはもうとっくに終わってる。」
「流石、出来る奴は違うな。」
「まあな。」
物陰から出てきたノート。
一斉に警察が振り向く。
既に拳銃は握られている。
「止まれ!!貴様を逮捕する!!」
「やだね。俺は俺でやらなきゃいかんことがあるのよ。」
「やはり話は通じないか。総員!発砲準備!!」
全ての隊員の指が、トリガーにかけられる。
「コイツはやるしかないな。」
「撃てーッ!!!」
前回と何ら変わりはない弾幕が視界を覆う。
一弾目は大剣で弾き飛ばす。
続けて二弾目。宙へ逃れる。
三弾目を叩きつけた衝撃で、少し上へ浮上する。
「怯むな!!狙えーッ!!」
「そんな物騒なモンは、早くしまってくれ。」
大剣は構えられた。
そしてただ一点を狙う。
その一点とは
「…間違って手まで切ったら謝るわ。
一式居合『死の詩』!!」
空中にも関わらず、一気に速度を上げて斬りかかる。
一瞬、ノートが見えなくなる。
警察の手のリボルバーは…
変化しない。何も起こらない。
「と思ったか?」
「貴様いつの間に!?」
ノートは敵の背後に達していた。
もう行動は終えていたようだ。
警察は咄嗟に銃を構える。
だがそこで異変に気付いた。
「!? なに!?」
銃の上半分だけがズレ落ちた。
鉄特有の音が遠く虚しく響き渡る。
「これ以上一歩でも動いてみろ。恐らく、永遠の自由が手に入るだろう。」
「それで止めると思うなよ!!」
「どう思うかは勝手だ。これは警告でしかないし、従うかどうかも勝手だ。」
右手に構えた大剣を両手で持ち直し、精神を締め付ける。
その姿には、決意に満ちたオーラがあった。
「もっとも、お前らに負ける俺ではないがな。」
「!!」
次に警官が目撃したのは、光り輝く二本の剣だ。
「弐の型…『双竜』
…三式居合
『極彩色』!!」
ノートが一振り大剣を振れば、警官の拳銃が輝き始めた。
色鮮やかに。
しかし冷酷に。
「最後はたった一つの振動でいい。」
剣を突き立てる。
大地が大きく揺れる。
すると拳銃は脆くも崩れて灰になった。
「じゃあな。急いでるんだ。」
警官たちは、立ち尽くすしかなかった。
目の前には人間離れした犯罪者。
だが動けなかった。
「…」
「おい!何を突っ立ってる?早く増援を呼べ!」
「それが…返答がなくて…」
「まさか、この一瞬で本部を叩いたのか?」
「あの力量ならあり得るかと。」
「やむを得ん。危険だがお前一人で本部まで行ってきてくれ!」
「了解!」
リミットは残り30分。




