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イデア  作者: 天汰唯寿
第2部 「守護の旋律」
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第三十一話 「盛衰の時」

「衰えたか?ノート?」


いや衰えた筈は無い。

というより、べリックの本領に圧倒されている。



「まだ序の口よ。」

「それならいいんだが。」




「ノート!」


痺れを切らしたラスターが口を開いた。


「ここはもう、先に旋律を取ろう!

ヤツの実力が分からない以上、スキを見つけることは出来ない!」


「…いい判断じゃないか。」



べリックがボソッと一言呟く。



ノートを除いた一行は散り散りに駆け出した。



させまいとばかりにダガーを舞い上げる。




ラスターを狙ったと思われる一本は、

大剣によって落ちた。



両者の目が合った。



刺すような眼差し。


一つの煌き。



火花を散らすとは正にこの目だろう。


「目が合っても、青春は感じねえな。」

「同感だ。」



言い放ったべリックは、ラスターを追った。



「!待て!」


その声は聞こえてはいないだろう。






「先に旋律を取ろう!」






ラスターの言葉がフラッシュバックする。





ノートは、三人とは別の方向へ駆け出した。


それがラスターの望みと知ったから。











「…ハッ。来ると思ったよ。」



崖際。


ラスターに後ろは無い。



目の前には一人の獣。




「ここからどうするおつもりですか?」


「そうだな。隙を見て逃げようか。」

「そんな事出来るとでも?」



不可能に限りなく近い。

太陽の剣(サンシャイン・ソード)で逃げようにも、発動が遅い。

対して相手はダガーを投げるという

単純かつ素早い攻撃を持ち合わせている。



もし、一瞬でも

相手の意識を何処かへ遠ざけられたなら…




「奇跡は起きませんよ。」

「奇跡は自らで作り出すモノだ。」


「その名言は、一生語り継がれないでしょうね。」




またダガーが振り撒かれた。

今回は量が比較にならない。


けれども、やはりダガーはラスターに届く手間で力尽きた。







一息ついたのが間違いだった。


次に目を開けた時、前方には大量のダガーが向かってきていた。



「ッ!」


片手で軽々と扱う槍。


ダガーの大半を弾き返した。





数本はラスターの胴体を仕留めていた。


「…ッ!」


口からは赤い花弁が散る。



ヨロけた体を気合で立ち直し、

槍も構え直す。


ふと顔を下げただけだった。

目の前からはダガーが向かってきていた。




「!…反射する最上の光(リフレ・ライテスト)!」


視界が光に塞がれる。

突き刺さる大量のダガー。





メキメキという異音が聞こえた。

「…!?」


見れば、至る所にヒビが入ってきていた。






「さて、いつまでそれは保つだろうか?」



もう寿命は来ていたらしい。


砕け散っていく光。



無情なガラスの割れる音に重ね、

風を切る音も聞こえた。











気付けば、ラスターの体は言う事を聞かなくてなっていた。







全身に風を感じた。






ラスターはそのまま倒れていった。





「まったく、この程度で国王とは。」






宙に浮かぶベリック。

対比するように、ラスターは地に倒れ伏せていた。













突然乾いた銃声が突き抜けた。


ベリックに向けての発砲だった。




「…それは……敵討ちのつもりかい?」


「何で……ラスターを殺した?」

「おいおい、先に問い掛けたのはこっちだぞ?」



「…お前は、ノートへの逆恨みで此処に来たんじゃないのか!?」



「逆恨みねぇ…ま、そうなんだけどさ?





俺は気分屋なのさ。

ノートとの決闘するのに、観客は要らないだろう?

だからまず、要注意人物であるラスターを仕留めたのさ。」














「……さ…ま…」

「なんだい?言いたい事があるならハッキリ言ってくれ。」



「…貴様……!!」




その眼は、ただ一つ、憎むべき相手を見つめていた。



冷やかに、冷酷に、


挙げればキリがない。

複雑に絡む感情の中、



一筋の「正義心」だけが眩い光を見せた。







「お前に何が出来る?」


「それは…やってみてから決めてくれ…!」





指を掛けたトリガーは、発砲の時を待ちわびていた。

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