第三十話 「花々」
一行は、火山から城へ戻る所だった。
「そういえば、ラスターさん?」
「なんだい?」
「一応ガルフィスには会ったんですよね?」
「そうだな。」
「やっぱり、見たこと無いんですか?」
「あぁ。無かったな。
思うに、彼らはほとんど私達には無関係な人間達なのかもしれない。」
「へぇ…。」
「そうだ。次の目的地について話しておかなければな。」
枯れる事のない花園
一面、花に埋め尽くされたその大地。
いくら腕利きの庭師が庭園を作ろうとも
この花々を育てる事は不可能だろう。
それほど多くの花が咲いている。
しかし、これがただ綺麗なだけの花畑と思ったら大間違いだ。
「この辺りには、沢山の人が眠っている。
それと関連するかは分からないが
ここの花々は、全く枯れないんだ。」
「つまり、その人達の霊が花を世話してると?」
「さぁな。とにかく気味の悪い場所よ。」
幻聴か、談笑する声が聞こえる。
少なくとも四人の誰かではなかった。
無意識だった。
何故か身構えていた。
後ろから花をかき分ける音が聞こえた気がした。
「…ト……ノート!」
「あ、あぁ。」
どうやら、足が止まっていたらしい。
「気ィしっかり持てよ?霊に持ってかれるぞ?」
「またまた…」
しかし、どうも後ろから目を離す気にはならなかった。
「ところで、旋律はどこに?」
「この花畑の中心だ。」
「中心好きだなぁ。」
「でも、どうやってそこまで行けば?」
「こっちだ。」
声の主は、一行の右後ろから話していた。
「お前は…ベリック!」
「覚えていてくれて嬉しいな。ノート。」
ベリックは、空中に立っていた。
首元の傷が、風の吹く度にのぞかせる。
頭に巻いた包帯の切れ端が揺らめいている。
「この傷のお返しをしに来たんだ。まさか、忘れた訳じゃあるまい?」
「…ノート。かなり派手に暴れた様だな?」
「歯向かってきた方が悪いんだろ。
…あぁ、忘れてないさ。」
「そりゃ良かった。」
左手をスーツの内側に隠した。
次にその手は、迷わず真上へ振り上げられた。
また、短剣も迷わずノートへと向かう。
「ノート!」
呼ばれど身動き一つしない。
気がつけば風の切る音が聞こえ、
短剣はノートの顔を掠めていった。
「ほう、動かないか。」
「度胸試しは効かないぞ?」
「流石だ。それでこそ返し甲斐がある。」
そう言うと、ベリックは一掴みのダガーを振りまいた。
「そんなに雑じゃ当たらないな。」
ノートに届く少し手前で最後の一本が落ちた。
直後だった。
別の方向から一直線にダガーが飛んできた。
「何!?」
すんでで躱し、前によろけた。
上空に金属音が響いた。
落ちてきたのは大量のダガーだ。
「!?リフレクト!」
大剣を振るった。
二、三本が向きを変えて他の剣を弾く。
最後の一本までノートには刺さらなかった。
「そりゃそうだろうな。」
べリックはまたダガーを投げ飛ばした。
なんの事もなく、大剣を振るう。
力無いダガーが宙を舞う。
その影から姿を見せたのはもう一本のダガーだ。
「危なッ!」
人並み外れた瞬発力でダガーは弾かれた。
金属音が鳴る。
この花園には全く似合わない。
だが、確実に一歩ずつ
ノートの花は咲かされ始めていた。




