第十三話 「脱走」
「な…!」
相手は、あっけに取られている。
初めて、奴の意表を突く事ができた。
「守護者…か。」
「ついに発現したか。」
仲間の方も、少々驚いている様子だ。
だが、一番驚いたのは当の本人だろう。
「…は?いや、ちょ、何これ?今、無意識に技が。」
「自覚無し、か。
間違い無く守護者の力だ。」
「ガーディアン?」
「そうだ。」
「まさか、ここで来るとはね。正直誤算だった。
けど、そこまで素早く斬れるのかい?」
奴が使ってきたのはさっきの大量の弾丸だ。
しかも格段にスピードが上がっている。
一つ一つと避けていては、まず間に合わない。
「いちいち構え直す必要なんてないだろ?」
ノートは剣を片手に回転しだした。
なんとも単純だが、これが最善手だった。
弾丸はまだまだ飛んでくる。
素早く。
そして確実に。
跳ね返せど跳ね返せど
まだ飛んでくる。
「駄目だラチがあかない!」
「一旦逃げるぞ。レド、ノート!」
ノートは一目散に、後方のステンドグラスに走りだした。
レド、ノートも後に続く。
「逃がさないさ。鞭手!」
普通の人間ではあり得ない程腕が伸びる。更に相当巨大化している。
その代わり、細かい動きは出来ないようだ。
そこにラスターは気付いていた。
「跳べ!」
声が部屋中に響く。響いた声が戻ってきた頃には、真下を腕が空振っていた。
「小賢しい。」
ラスターはいち早く辿り着き、ステンドグラスを突き破り、宙を舞った。
レドも続いて空を舞う。
ノートは一度立ち止まった。そして、相手の方を向き直し、言った。
「悪いが、逃げさせてもらう。次は、その長っ鼻を折らせてもらいに行くからな。」
「は、ま頑張れよ。」
ノートも飛び出て行った。
城下町
兵士達の乱闘も終わりを迎えていた。
どうやら、勝ったのは自軍らしい。
空からラスターが降ってきた。
しっかりと着地も決まっている。
「さて、皆御苦労。
と褒めたいものだが、まずは此処から出るぞ。」
「標的はどうなりましたか?!」
「…結果的に言えば成功だ。だが、とにかく今は此処を出なければならない。」
兵士達の顔に「?」が浮かんでいる。
それはそうだろう。
「ふー。初めてやりましたよ、パラシュート無しのスカイダイビング。」
レドもしっかりと着地に成功した。
「さて、あとは彼だけですね。」
「もう少しで来るだろう。先に行こう。」
皆一斉に門へと走り出した。
「おいおい、先に行くのは酷いんじゃないか?」
一歩遅れてノートが到着した。
「ま、聞こえてないわな。」
ノートも彼らを目指して駆けていく。
その後、
一団は無事に帰還する事が出来たと言う。




