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第十四話 寄り道

朝。


目を覚ます。


七時二十分。


少し早かった。


カーテンを開ける。


窓際の花を見る。


昨日より開いている。


「おはよう。」


水を替える。


朝食を作る。


トーストを焼く。


卵を焼く。


紅茶を淹れる。


いつもの朝だった。


――――――――――――――――――――


家を出る。


駅へ向かう。


信号が赤になる。


止まる。


車が二台通る。


青になる。


歩く。


駅へ着く。


電車に乗る。


座れなかった。


今日は立ったまま窓を見る。


――――――――――――――――――――


駅を降りる。


事務所へ向かう。


途中で、右を見る。


小さな喫茶店がある。


古い看板。


少し色褪せた扉。


私は立ち止まる。


時計を見る。


まだ時間がある。


扉を開ける。


――――――――――――――――――――


「いらっしゃいませ。」


店内は静かだった。


カウンターに二人。


窓際に一人。


奥の席は空いている。


そこへ座る。


「ご注文は?」


「紅茶ください。」


「かしこまりました。」


店員が離れていく。


壁の時計を見る。


十時三分。


――――――――――――――――――――


紅茶が来る。


カップを持つ。


一口飲む。


「美味しい。」


店員が笑う。


「ありがとうございます。」


私はもう一口飲む。


窓の外を見る。


自転車が通る。


犬を連れた人が歩いている。


小さな子どもが母親の手を引いている。


紅茶を飲む。


――――――――――――――――――――


時計を見る。


十時二十八分。


カップを置く。


会計をする。


「ありがとうございました。」


「ごちそうさまでした。」


店を出る。


駅へ向かう。


――――――――――――――――――――


事務所。


「おはようございます。」


「おはよう。」


仕事をする。


打ち合わせ。


確認。


修正。


昼食。


午後も仕事。


――――――――――――――――――――


夕方。


帰宅する。


花を見る。


少し元気がない。


水を替える。


夕食を作る。


食べる。


片付ける。


――――――――――――――――――――


夜。


配信。


「こんばんは。」


『こんばんはー』

『今日なにしてた?』


「仕事。」


『それ以外は?』


「喫茶店に行った。」


『珍しい』


「うん。」


『どこの?』


私は少し考える。


「駅の近く。」


『店の名前は?』


私は黙る。


「……忘れた。」


『また忘れてるw』


「うん。」


『紅茶美味しかった?』


「美味しかった。」


『じゃあまた行けばいいじゃん』


「そうする。」


『店の名前分からなくても?』


「場所は分かるから。」


『なるほどw』


コメントが流れる。


私は少し笑う。


――――――――――――――――――――


配信が終わる。


机の上を片付ける。


花を見る。


黄色い花が揺れている。


スマートフォンを手に取る。


検索画面を開く。


さっきの喫茶店を検索する。


店名が表示される。


一度見る。


画面を閉じる。


――――――――――――――――――――


布団へ入る。


目を閉じる。


朝の花を思い出す。


喫茶店の紅茶を思い出す。


明日は、どちらも今日とは違う。


「おやすみ。」


部屋の明かりを消す。

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