第18章 親子の再会
この物語の最終章です。やはり最後はハッピーエンド。
第1節
開化天皇が大倭国に着いて、崇神天皇が新たな天皇に就任した宮殿の居間での集まりが終わり、それぞれに思いを噛みしめながら宮殿を出た。そこには、開化天皇に付いてきた1000人程の竪穴式住居も用意されていた。息長遼瀬依にも宮殿の側に住まいがあり、そこに入ろうとした時、その入り口に。そこには、物部日向馬がいた。
「リョウセイさん、高島宮でお会いして以来ですね」
「あぁ、ヒュウマさんですか」
「では、新しい家に入って、おしゃべりをしましょう」
息長遼瀬依は、瓜破の里に本住まいがあるのですが、物部一族が仮住まいとして用意してくれていた。
「リョウセイさんと別れてから、私の家族のことを聞かれましたね それが頭の中で残っています」
「あの話ですか」
「今度、会うときに話しますと言われました」
「私も、何時かはヒュウマさんのお父様とお母様にお会いしたいと思っていました」
「何故ですか リョウセイさんと私の父上、母上とは何か関係があるのですか」
「私の母は黄咲美姫といいます 五所の里に濊の鍛冶職人を連れて行って、その後、母が危篤だと聞いて、瓜破の里に帰りました そのときに母上から私に告げられました」
「お母様は何と言われたのですか」
「私も自分の耳を疑いました あなたは私の実の子ではないと」
「リョウセイさんの実のお母様がおられるのですか」
「母上はそこまで言わずに息を引き取りました」
「それは」
「それから、母上の葬儀を行ったときに会った人が、その謎を教えてくれました」
「それが私の母上と関係があるのですか」
「そうです 私が生まれたのは東国の物井の里でした」
「私と同じではないですか」
「私の実の母上は、阿木沙都姫です」
「なんですって わたしの母上がリョウセイさんのお母様」
「驚いたでしょ ヒュウマさんと兄弟なのです」
「えぇ なぜ、二人は別れたのですか リョウセイさんは息長だし、私は物部です」
「どうも、二人は双子だったらしい それで、或る日に私の母が私を攫った」
「それで、息長一族になったのですね これで謎が解決しました 私の父上と母上に会われますか」
「会いたいです」
「では、布留の里に案内しましょう」
第2節
物部日向馬は、息長遼瀬依を連れた布留の里に戻った。この里では、布留川から水路を造り田んぼに水が流れるようにしてあった。物部一族は、普段、この地で農作物を作り、稲の栽培をして、自給自足の生活を送り、いざ戦いになれば男子は戦場に行き、または、災害時には破損した所の改修にも参加して、みんなで協力して作業をしていた。物部日向馬の父、物部伊那部も年齢を重ねて老人になっていたが、元気に農作業に精を出していた。たまに、布留川に出て、昔、松島湾の千賀ノ浦で父親と魚釣りをした経験もあったので、川魚を捕らえることができた。
そんなのどかな土地に布留の里があった。そこに息長遼瀬依がやって来た。
「いいところですね」
「父上がこの地に来て、かなり手を加えたからね あの水路もそうだよ この地に来てもう30年ほど前になる」
「そんなに」
「まだ、私も若かった 」
「今のミカドが生まれたころか」
「そうなるか」
「それにしても、ミカドがこの大倭国に来るのが遅い そう思わないか ヒュウマさん」
「私もそう思う」
「この歳になって、兄弟と巡り会うなんて」
物部日向馬と息長遼瀬依は、共の父親・母親の住居に向かっていた。
「ただ今、戻りました」
「あれ、後ろにいる人は」
「父上は」
「あの裏山で薪を採ってくると言って出て行きました もうすぐに帰ってくると思う」
「もう歳だから、無理しなくても」
「私もそう言ったのだけれど ミカドが大倭国に来たので、みんな集めて祝いの祭りをするのだと言って聞かないので」
「あぁ、紹介するよ 息長遼瀬依さんです」
「ヒュウマとよく似た人がいるものだ」
「お会い出来て幸せです」
阿木沙都姫は、その人が物井の里で攫われた遼瀬依とは気づかなかった。もぉ、遠い昔のことだった。攫われた子のことは、生涯の苦にはなっていたものの、歳月がたって、会うことが出来ないと諦めていた。
「さぁ、入って、入って、家には何もないけれど」
庵の周りに座った日向馬と遼瀬依は、母親の驚いた顔を見たくて、目を合わせ、ニタッと笑みを浮かべた。
第3節
物部伊那部は、裏山から薪を担いで帰ってきた。そして、祭事場に薪を肩から降ろして、薪を組んだ。集落の人達を祭事場に集まるように声を掛けた。伊那部の住居に。
「おぉい、お祝いだ 祭事場に来い みんなが集まるぞ」
そう声掛けた時、日向馬の姿が見えた。
「ヒュウマ、帰っていたのか」
「ミカドを纒向の里にお連れする役目を終えました ミカドが宮殿に入られて、今後のことを話されて、今、帰ってきました」
「役目、ご苦労であった いよいよこの国もミカドの世の中になる めでたいことだ それを祝って、祭事場で炎を上げて、みんなで祝おう」
「父上、もう一つめでたいことがあります ここにおられる方は」
「息長遼瀬依です」
「息長一族の人か 何故、ここにおられる」
「母上も、聞いて欲しい」
伊木沙都姫も入り口まで出てきた。
「昔、父上と母上には二人の子がいましたね」
「物井の里で双子を産んだ そのとき、ヒュウマとリョウセイという男の子だった」
「そうだった」
「しかし、その一人が人さらいにあった 残ったのはヒュウマだけに」
「ヒメは悲しがって、父も至る所、探し回ったのだけれど、見つからなかった だいぶん昔の話だけれど」
「ここにおられるのが、もう一人の」
物部伊那部と伊木沙都姫は、声を合わせて。
「リョウセイ」
「はい、リョウセイです」
「夢みたいな」
「わぁ、うれしい」
「家族が揃ったことになります 私もリョウセイさんからその話を聞いたとき、全く信じられなかった」
「ヒュウマには、兄弟がいることを伝えてなかったからね」
3世紀の出来事を合わせて、物部一族と息長一族の家族を中心に描きました。




