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悪逆の女帝 “スクラップミストレス”  作者: 黒一黒
第1章 悟りを開いた者たち
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 §   §   §


「随分と好き勝手にしてくれたじゃないか。ええ?」


 本土から遠く離れ、周りは見渡す限りの海。太平洋の只中に浮かぶ島。

 遥か(いにしえ)、戦国より前の時代。元は罪人の流刑地とされてきたこの場所は、現在では国の手が入り、その様相を一変させている。


 島の面積は本土の首都を凌ぎ、島の内部であらゆる社会活動が完結できるように作られている。

 即ち、この島に一度入ってしまえば、外と交流を持つ必要はないということ……しかし裏を返せば、外に出す気はないとも取れる。


「教師、及びクラスメイトへの脅迫、並びに暴行。しかも一人は頭蓋を割る重傷だ。荒っぽいことが日常茶飯事の学園(ここ)でも、転入初日にここまでやらかした奴は過去いなかったぞ」


 始まりは日本に多く点在する島々と同じように、千に満たない住人と、特徴的な島の形、自然だけが取り柄のありふれた孤島だった。

 しかしある時、島は国によって買い上げられ、島民は移住を余儀なくされる。

 詳しい説明がされぬまま追い出されるような形になった島民たちだったが、その後の補償が手厚かったこともあり、ほとんど不満は出なかったという。


「人的被害だけではないぞ。教室の床や壁、椅子机を含む数々の備品の破壊。

 およそ三十分にも満たない短さで、いったいどれだけ損害が出たか……修繕費にいくらかかるか考えるだけで、今から頭が痛い。どうやったらここまでの横暴さを発揮できるのやら」


 国が島を保有するようになってからの変化は急激だった。


 どのような技法が使われたのか、一月後には島は現在の大きさと遜色ないまでに拡大しており、半年後にはインフラまで整備されていたと記録されている。

 噂では人工精霊(タルパ)を使用できる覚者(かくしゃ)を労働力として使用したのではとされているが、噂の域をでない……が、現在の島の用途を考えれば、あながち眉唾なだけの噂とも言い切れない。


「確かにこの学園は日本国籍の覚者(かくしゃ)であれば、誰であろうと受け入れる。しかし、それは何をしてもいいという免罪符ではない!

 この落とし前、どうつけようというんだ?」


 現在の島民、実にその八割が(カルマ)を抱える覚者で構成されている。というよりも、覚者以外の島への上陸は厳しく取り締まられていた。

 残りの二割に関しても、国が認可した特別な資格を持つ公務員のみに限定される。


 つまりここは、超常の力を駆使できる覚者を、一般人の社会から隔離しておくための檻に他ならない。

 事実、日本で業の発現が確認された覚者は皆、特別法によって十五日以内に島への護送が義務づけられていた。


「聞いているのか!? 界昧弥(さかいまいや)!」


 とどの詰まり、遥か以前の世より変わらず、(ここ)(カルマ)を背負う罪人たちが、その果てに流れ着く地獄だった。


「変わらずに良い味だ。ダーニャ」

「恐れ入ります」


 しかし、そんな事実は意味をなさない。


 獄中でなお優雅にティーカップを傾けながら従者を労う昧弥に、ダニアは一歩下がって侍りながらわずかに頬を緩めて小さく頭を下げる。

 まるで余人が入り込む隙など存在しない二人の空間。しかし、その完璧な絵図を崩壊しようとする意志に満ちた怒号が部屋を揺るがした。


「話を聞け!」


 ダンッと、拳が木板を打つ音が怒号に重なる。

 緻密に美しい彫刻が施されながらも、重厚な頑強さを感じさせる木製のテーブルが、その一撃によって悲鳴を上げて震えた。


 その騒音を横目に、昧弥は鬱陶しそうに口を開く。


「大きな声を出すな。そう怒鳴らずとも聞こえている」


 昧弥は足を組みながらアンティーク調の洒落た作りの木椅子に腰かけ、ゆったりと背もたれに体を預けて声の主を睥睨する。


 やや赤みを帯びた茶髪が高い位置で括られ、ポニーテールの毛先が肩甲骨の辺りで揺れる。

 仕立ての良さが一目で分かる黒のスーツで身を包んだ道祖夕里(みちのやゆり)は美しい顔を怒りに歪めながら、鋭い視線で不遜に座ったままの昧弥を見下ろした。


 元は涼しげな印象の美麗な顔立ちであろうに、今は見る影もなく怒りによって燃え上がり、物理的な圧迫感を生じさせているほどだった。

 しかし、そのような怒りの熱風程度で昧弥を揺るがせる筈もなく、胡乱な目を向けていたかと思うと、何かを悟ったようにはたと顔を上げた。


「いや、違うか。大きな声を出しているつもりはないのだな? これはすまない、貴様のことも労わってやらねばならなかったようだ。

 ダーニャ、彼女にも紅茶を。ああ、言わずとも分かっているだろうが、温めでな? あまり熱いものを出して、ぽっくり逝かれては敵わん」

「承りました」

「いらんッ!」


 まるで反省の見えない態度に道祖(みちのや)は怒鳴り返し、大きく息を吐きながら頭痛を和らげようとするように米神を指で揉むように押さえた。


「その態度だけでも問題だというのに、お前という奴は……いったい何なんだッ!?」


 聞きようによっては悲鳴とも取れる声を上げながら、道祖は全身の力を抜くようにドカッと椅子に座り直し、机の上の資料に目を向ける。


 そこには、昧弥がこの島に上陸するにあたり、先んじて調査された彼女の(カルマ)人工精霊(タルパ)についての情報が纏められていた。


      ☆      ☆      ☆


ツイッターやってます。

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イラストなんかも載せてますので、

お暇な時にでも覗きに来ていただけたら幸いです。

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