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歩けば何処かに辿り着く  作者: 河内 胡瓜
契約
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03-62.隔絶

周囲から野太い声が上がる。

その声が石の壁に反響して空に消えていく。

とにかくうるさい。

頭がズギズキする。


オレは頭をなでた。

ゴワゴワした感触で、自分がフードを

ずっぽり被っているにに気づく。


フードを取ろうかと思ったけど、

周りの このクソうるさい声を

ちょこっとでも防げるような気がして、

フードの隙間から手を突っ込んだ。


頭のてっぺんから後頭部。

そこには たんこぶ とかキズみたいなのは無い。


フードを深く被り直す。

周りの声のボリュームは下がらない。

寝不足の朝みたいに頭が重い。


アミーさんにポーションを掛けてもらって

完全に治ったはず・・・なんだけどなぁ。


−−−−−


アミーさんの|工房〈アジト〉で診察(?)された後、

「何かを試してみる」って手を取られて・・・

そこから記憶がボンヤリしてる。

何があったっけかなぁ。


温かい何かに包まれて、

ドッグドク身体の中に血が巡って、

頭が ぼーっとして・・・


キェエエエイ!って声とともに

誰かに飛び蹴りを喰らったような?


うーん。何があったか、よく思い出せない。


なんだか頭がグラングランしてて、

それを言ったらアミーさんが、すぐに

ポーションを掛けてくれたことは覚えている。

アミーさんの慌ててるの、初めて見たなぁ。

そのあと、何か甘くて熱いものを飲まされて・・・

あれもポーションだったのかなぁ。


アミーさんは必死に

何かを叫んでいたような気がしたんだけど、

なんて言ってたんだろ。

それも断片的でよく思い出せない。


その時、アミーさんの他に誰か居たような?

アミーさんが、その人に向かって

何か言ってたような?言ってないないような?


時間が経つにつれてイメージが薄くなってく。

あれは夢だったかもしれない。

たまに見る、すっごいリアルな夢。

よく考えると、そんなん有り得んだろって感じの。


・・・で、気付いたら、ここに居るってワケ。


つまり、自分でも良く分からない。

改めて周りを見回す。

この建物には見覚えがある。


"決闘場”


白黒付けられない揉め事を

暴力で解決する場所だ。


あの時立った石舞台を

今度は下から見上げる場所に立ってる。

周りには人、人、人。


ーーーーッ!!


怒鳴り声は続いてる。

−−−−−


決闘場。


ウルワンの街の中心から少し離れたところ、

石造りの巨大な建物がある。

ウルワンの冒険者ギルドが取り仕切る、

一大娯楽施設だ。


ウルワンを拠点とした冒険者は多く、

イザコザが絶えない。

一々、冒険者ギルドが間に入って仲裁するとなると、

時間と労力がいくらあっても足りない。

出会えば揉め事を起こし、

報酬を巡ってパーティ内でも争いが起きる。

その問題を解決するシステムが、"決闘"だ。

勝った者が正しい。

単純明快だ。


決闘は当初、街の中や外で

好きなように行われていたのを

ウルワンの街の冒険者ギルドが資金を出して

専用の建物を作ったそうだ。


表向きは冒険者同士の戦いで、

周りに被害が出過ぎるのを防ぐためとか、

冒険者ギルドが管理することで、

出た結果についてガタガタ言わさず、

後腐れをなくそうと言う名目だ。


でも実際は、冒険者ギルドが、

決闘賭博の胴元になることで資金を集め、

ウルワン内の発言権を高めるのが目的だった。

・・・と、ヘルミオネさんが言ってた。


オレは、以前、|決闘場〈ここ〉で、

獲物の横取りって因縁を付けてきた

オッサン2人と戦うことになった。

冒険者ギルドとしては

ここで戦わせることが意味があるんだろう。

納得と言う意味でも、収入という意味でも。


−−−−−


「冒険者!!冒険者だっ!!

 汚らしい冒険者どもが、

 この麗しき侯都ウルワンを破壊するために

 反乱を起こしたのだ!!

 こんな議論に何の意味があるっ!

 一刻も早く冒険者どもを全員縛り首にしろっ!!」


怒鳴り声。

空気がビリビリ震える。


「まず、冒険者全てが悪いわけではありません。

 街の治安を守り、ウルワンの発展に寄与している

 冒険者をここに集まる皆様もご存知のはずです。

 これは一人の冒険者に罪を着せて、

 |この街〈ウルワン〉を内部分裂させようとする計略です。

 今回、関与したと思われた冒険者は、

 たまたま運悪くその場に居合わせただけで、

 事件の犯人では、ありません。」


対して凛と澄んだよく通る声。

しかし言い終わる前に周りからヤジが飛ぶ。


「そんなわけあるかー!」

「冒険者を根絶やしにしろー!!」


"たまたま運悪くその場に居合わせた冒険者"とは、

オレのことだ。


オレの精神衛生を考えたら、

ヘルミオネさんの言う通り、

この場に来ない方が良かったんだと思う。


何にも知らず、後で結果を聞くだけで良かった。

良かったはずなのに、オレは|決闘場<ここ>にいる。


「責任を取らせろー!」

「殺せー!」


ヤジの声は空に散っていかず、

|決闘場〈まわり〉に熱気が溜まっていく。

人が多い。口々になんか言ってる。

観客の一人が石舞台へ這い上がろうとして、

兵士に槍で殴り飛ばされても観客の声は止まない。


あの石舞台にオレはいない。

・・・やっぱり当事者のオレが

あそこに立つべきだったんじゃないか?


「黙れッ!!!」


男の声が、その熱気を揺らした。


横で大声でヤジを飛ばしていたオッサンが、

ビクッとして黙る。

石舞台に這い上がろうとしていた男も、

それを石突で迎撃していた兵士も止まる。


周囲のザワザワが急に収まった。

重くて静か。

周りの人の息を吐く音が聞こえるくらい。

肌に感じる熱い空気と緊張感。

オレもゆっくり息を吐き出す。


ガツンッ


大きな音が決闘場に響く。

音のした方に注目が集まる。


一段高い石段の上。


豪華に飾られたイスに、男がゆったり座っている。 


その前には、男を守るように

全身を鎧で固めた男が立っている。


さっきのは、座っている男の声だったのか、

それともこの鎧の男の声だったのか。


鎧の男が、一歩前に出た。


石畳に鞘に入った大剣が打ち付けられる。


ガツンッ


石畳に音が響く。


「我々が知りたいのは、

 "誰か"、この街を攻撃したのか、だ。

 ウルワンを攻撃しようなどと考えた、"愚か者"

 二度とそんな馬鹿なことを考えられないように、

 頭を潰す。それだけだッ!」


ガツンッ!!


さっきよりも大きな音が石畳に響く。

空気感が変わった。

ウォー!とかワー!とか歓声が上がるが、

さっきみたいな無責任なヤジは飛ばない。

石舞台に上半身を乗せてた男は、槍で殴られ

力なく落とされた。


周囲の目は、石舞台の上の2人に集まる。


一人はヘルミオネさん。

いつもの冒険者ギルドの制服ではなく、

薄い蒼色の服に白いマントが、

陽を浴びて輝いている。


もう一方は、オレを一方的に犯人にしようとした、

あのオッサン・・・じゃ、無かった。


白髪のがっしりしたオッサン。

不機嫌な顔でヘルミオネさんを睨みつけている。

ギラギラと装飾がされた上等な服を着てる。

偏見かもしれないが、

オレはとても仲良くできるような気がしない。


「では、閣下の仰る様に

 さっさと結論を出しましょう。

 ウルワンの聖なる城壁を爆破した冒険者。

 まずは、その犯人を出してもらおうか。

 今ここで犯人を"公開処刑"することこそが、

 ウルワンに再び平穏を取り戻す唯一の道。

 無駄な議論など必要ない。

 頭を潰してそれで終わりだ。」


「お待ちくだ」


ヘルミオネさんが言い終わる前に、

ジイサンが話を遮ってくる。


「・・まさか、逃がしたわけでは無かろうな?

 冒険者ギルドは、|冒険者〈ゴミ共〉の管理も

 ろくにできんのか?」


ジイサンは腕を組み、ヘルミオネさんを見下ろす。


ふぅ。


クソうるさい決闘場で、

ヘルミオネさんの小さなため息が聞こえた気がした。



用語説明∶

・たんこぶ

こちらの世界の医学的には「頭部の皮下血腫」、「皮下浮腫」のこと。


・アミー

錬金術士


・ポーション

この世界のポーションは一瞬でケガが治ったり、欠損部位が治ることは無い。

精神的な病に効くのかは不明。


・胴元

こちらの世界では博打の主催者だったり、サイコロ博打の親だったり。

一方この世界では、主催者を指すようだ。



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