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84 イリカ製作チーム、里帰りと新任務

 首都圏から遠く離れた、南方の県。

 その山奥にある町工場。

 大企業ではないが、部品やロボット技術の高品質ぶりには定評がある。


 社長のマノウは五十代男性。かつて、イリカの機械部分を造った技術者だ。今は別件の業務で外出中。


 広い作業場の片隅には、パイプ椅子やソファー、テーブルが配置され、簡易な応接スペースとなっている。

 イリカも含めると、ここに五人が向き合って座っていた。

 ほかの四人は、ロタ、ハヤミ、リモリ、クミマル。


 イリカは紺色のセーラー服姿。椅子の足もとには、イリカ用の電源設備が置かれ、イリカの背中につながれている。「この電源、久しぶりに出したよ」と、先ほどリモリは笑っていた。

 イリカはこの町工場で造られたので、言わば里帰りでもある。


 里帰りといえば、リモリにも当てはまる。マノウは父親であり、この工場は独身時代の住みかであったから。

 出産が近いため、そろそろ実家へ荷物を取りに帰りたかったのだ。今回の作戦は、良きタイミングではあったと言える。

 リモリは、ゆったりしたワンピース姿。ソファーに座っている。


 昨日、イリカとリモリは、一日早くこちらへ来ていた。本日の作戦自体に、直接は関わらなかったので。ダブル帰省だ。

 マノウが車で迎えに来た。片道十時間も掛かったらしいが、三人で、イリカ製作の思い出話に花を咲かせたそうである。


 一方の、ハヤミとクミマル。共に首都圏在住。

 今朝早く、クミマルの事務所兼自宅を、ハヤミが訪れた。そのあと、二時間ほどを掛けて、クミマルが、ハヤミの顔に特殊メイクをして「三十年後のシュレナ」に変装させたのである。


 今、ハヤミが、今日の喫茶店でのシュレナとの会話、その内容を語り終えたところだ。

 ハヤミの顔へ付けられていた特殊メイクは既に落とされ、普段の顔に戻っている。


 パイプ椅子に腰かけたロタが、腕を組み、

「我々にもう会えないということを、シュレナさんが自ら悟ったのがすごいな」

「あれは私も予想外でした」

「ハヤミ先生の話にちゃんと付いてきて、今回の対面の趣旨も理解したわけですしね」

 ハヤミの応答に、リモリが同意する。ロタは、

「元々、頭がいい子だからね。大人とも普通にしゃべれるし」

「相手が未来の自分だから、リラックスできたというのもあったわよね。もし、ハヤミさんが素顔で会いに来てたら、きっと緊張してうまく話せなかったと思うわ」

 クミマルの指摘を受け、ロタも納得し、

「なるほど。まさしく、クミマルさんの特殊メイクの完成度のおかげですな」


 「三十年後のシュレナ」のメイクは、夏祭りで撮った写真が基となっている。

 また、作りかけの顔デザイン案をイリカに見てもらい、イリカの人工知能の記憶と照合、修正してもらったのも良かった。

 さらには、クミマルがシュレナに直接会えたことが大きい。

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