76 理科系女子、人生修正案
「未来の私」は説明を続ける。
「だからね、今日は、お互いの思い出話とか未来の話はやめましょう。余り共有できないだろうから。けど、住む次元は違っても、私もあなたも同じシュレナ。元々の資質や中身は同じなのだから、ざっくばらんに理科や科学の話をしましょう」
シュレナは、
「これから三十年で得る知識を、過去の自分に伝授する感じ?」
「そんな感じかな」
「でも、タイムワープの方法は駄目なんでしょ?」
シュレナの軽口に、フッと「未来の私」は笑い、つられてシュレナも吹き出した。
「まあ、そりゃあね。現代のこの文明でまだ解明されてない物は除外ね」
と、「未来の私」が首肯した。
シュレナは、
「で、ざっくばらんに話してどうするの。子供のうちから、早めに知識を身につけさせたいの?」
「うん、それもあるし。今、シュレナさんは将来への大事な分かれ目だから、私と話して、ヒントがつかめればと思ったの」
シュレナは合点がいって、
「なるほどねー。ロタさんにそれを頼まれたわけね」
図星を突かれたか、「未来の私」は苦笑いして、
「そういうことだね。未来は幾通りにも枝分かれするし、私とあなたが重なることはいずれにせよないのだけど、今のままでは、良くない未来へ行ってしまいそうだからね」
(文化祭の挫折で抜け殻同然になってる私を見かねて、未来人のロタさんが、私が道を誤らないように、未来の私を連れて来てくれたわけか)
そのように察したシュレナは、
「ということは、じゃああなたは、私の将来としては成功例ってわけね?」
遠慮のない物言いに、「未来の私」は苦笑したまま、しかし言い切る。
「うん、まあね。好きな科学の知識を生かした職業に就いているから、一応、満足してるからね」
「科学者?」
「そう」
「お仕事楽しい?」
「楽しいよ」
「何が一番楽しい?」
「科学技術によって、人間を再現してゆくことかな」
シュレナは少し身を乗り出し、
「それって、ロボットのこと?」
「第一義的にはね」
「ロボット造ってんだ?」
「今は人工知能の方が専門だけどね」
シュレナは、腰を浮かせて椅子に座り直し、
「今やってることも、役には立ってるわけか……」
今まで、部活や自宅で組んできたプログラムのことを、ふと思い出す。将来へつながっていくのなら、希望が持てる。
すると、「未来の私」は、シュレナのそのつぶやきに乗ってきた。
「シュレナさんがイリカちゃんにプレゼントしたホタルのロボット、見たよ」
シュレナはまた顔を前へ突き出して、
「えっ、あれ見たの。っていうか、イリちゃんを知ってんだ?」
「ちょっとね。で、あのホタルロボット、良く出来てたよ」
褒められたのはうれしいが、「未来の私」から言われると妙な感じもして、
「でも、あなたも私と同じくらいの年齢の頃、似たような物を造ったんでしょ?」




