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74 道案内、最寄り駅まで未来まで

「済みませんけど、駅までの道を教えていただけないかしら」

 秋晴れの朝、歩いて登校中に、シュレナは声をかけられた。

 少々しわがれていたが、のんびりした優しい声。


 交差点の歩道で振り返り、ハッと息をのむシュレナ。

 たくましい大柄の女性が立っていたからだ。赤い長袖を羽織り、黒いズボン。

 太い首と広い肩幅。生来の体格だけではあるまい。明らかに鍛え上げられている。

 片手にはつえを突いていた。脚が不自由なのだろうか。


「ええっと、も、最寄り駅でいいですか?」

 圧倒されつつ、シュレナはどうにか聞き返す。

 ここまで体が大きな人は、男性でも珍しい。

「ええ、いいわ」

 女性はにっこりする。顔は、古傷や脂肪でパンパンに張っていて、すごみがある。だが、線のように細い目には、愛嬌も感じられた。

 長めの茶髪を、後ろで縛ってある。年齢は中年くらいか。


 シュレナが道順を教える間、その細い目は、じっとシュレナの顔を見つめてきた。

 まるで観察されているようにも思えたが、それは、体格差があり過ぎて、威圧感を覚えたためかもしれぬ。

 信号機が青に変わると、互いに全く別の方向へ歩き出したので、それっきりではあったけれど、インパクトの強い一件だった。


 ケミホ中学校の文化祭以来、印象に残った出来事といえばそれぐらいであり、あとは無気力な毎日が続いていた。

 理学研究部の活動も休止状態。文化祭の失敗が響き、やる気を失っていたのである。


 そんなシュレナにとって、イリカ、ロタとの交流は、心が救われるひとときではあった。未来からタイムワープしてきた二人。

 とはいえ、二人とも未来のことは教えてくれず、ましてタイムマシンに乗せてはくれない。

(歴史改変にならない程度に、ちょっとだけでいいって言ってんのに)

 直接会っている時にも、メールでも、話をはぐらかされてしまう。


 そもそも、ロタはシュレナと余り会いたがらない。

 そこを何とかと頼み込み、今回、文化祭後としては三度目の、会う約束を取り付けた。

 既に十一月に入り、やや肌寒い、曇った土曜日の午前であった。


 いつもの喫茶店で待ち合わせたが、なぜか、ロタが一人で来たため、シュレナは不満の声を上げた。

「何で、今日はイリちゃん、いないの?」

「済まん。その代わり、特別ゲストをお連れしましたから。ちょっと待ってて」

 唐突にそう答えると、ロタは席を立ち、いなくなってしまう。

「は?」

 喫茶店奥の四人掛けテーブルに取り残され、困惑するシュレナ。

 この席は、入り口からは死角の位置にあり、壁などに囲まれ、個室状になっているのだ。


 そこへ、

「初めまして、シュレナさん」

 パンツスーツ姿の、大人の女性が、ロタと入れ替わりに、シュレナの向かいにやってきた。

(えっ!)

 驚きの余り、シュレナは椅子からガタンと立ち上がる。

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