表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
73/86

73 夢へ一口

 ハヤミの提案に、ロタは数秒の沈黙。

 が、絶句したのとは違う。気分は落ち着いていた。

 どこかで、その展開を期待していたのかもしれぬ。


 リモリやイリカを見やるも、誰もしゃべらない。

 やはり自分が決めるべきだなと、ロタは言葉を発する。

「そうしていただけるのなら、シュレナさんにとってこの上ないことでしょうけど……」


 何せ、ハヤミは人工知能にかけては国際的な科学者である。理系を志す若者にとって、尊敬と憧れの対象だ。

 ロタは考えがまとまらず、フワフワした心持ちのまま、思いついたことを述べる。

「んー、ハヤミさんとシュレナさんが会うための段取りといいますか、口実みたいな物は、いかがいたしましょうか?」


 ハヤミはほほえむ。ロタの困惑ぶりを、少し面白がってもいる様子だ。

「口実なら、ロタさんの知り合い、というつながりで、説明は付きそうですが」

 リモリが明るく笑って、

「いいですね。ハヤミ先生の特別出張授業ってわけですね」

 ハヤミはうなずくが、リモリは真顔に戻り、

「あっ、でも、ハヤミ先生は有名人ですからねー。一介の中学生といきなり御対面というのも、釣り合いというか、何だろうな、世間的にちょっとどうなんだろ」

 と、今度はあごに指を当てて考え込む。

 ロタは、

「誰かに目撃され、ネットに写真が拡散されたら、あの女の子は何者だ、とかなるかもな。あるいは、シュレナさん本人が有頂天になって、あのハヤミさんから褒められたと吹聴するかも」

 ハヤミも少々思いとどまったらしく、

「なるほど。シュレナさんはまだ子供ですしね。しかも、精神が弱っている状態」


 ずっと黙っていたイリカが、強めの口調で、

「その案の最大の問題点は何かといえば、ロタと私が未来人だというシュレちゃんの世界観を、崩してしまうこと」

 ロタは、そこについて余り意識していなかったが、

「言われてみれば、そうだわな。ハヤミさんに会わせる以上、俺が十年前にイリカ製作をハヤミさんに依頼したことは、説明せざるを得ないからな」

「全てが勘違いだと分かった時、シュレちゃんは恥ずかしがるだろうし、傷つくと思う」

 と、イリカは青と緑の目を細めて、つらそうな表情を作る。


 一同がしばし沈黙した後、

「いっそのこと、シュレナちゃんの幻想に、私たちも一口乗るか」

 妊娠でふくらんだおなかをさすりながら、リモリが笑った。

「一口乗る?」

 聞き返しつつ、

(あっ、何かひらめいたな)

 と悟ったロタ。

 リモリの瞳には、出会った十代の頃のような、得意げな輝き。


 リモリは、

「この作戦には、クミマルさんの力が不可欠だなあ」

「クミマルさん?」

 お次はハヤミが問い返す。

(おっ、懐かしい名前が出たな)

 イリカの外見を造った人物である。


 リモリは皆を見回して宣言する。

「イリカちゃん製作チーム、再集結だよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ