表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
64/86

64 イリカ号発進

 三次高。正式名は「三次元高速道路」。

 要は、スカイカー、空飛ぶ自動車専用の空中道路である。


 近年、飛行機能を備えた車は急速に発展。実用化が待たれていた。

 二年前から、主要先進各国と足並みをそろえ、我が国も実証実験をスタート。三次高は、まさしく官民を挙げた壮大なプロジェクトであった。

 昨年度、都心の数箇所に限定し、試験的に導入が始まっている。まだ、定められた二地点を、一方通行しか出来ない。


「飛ぶのは三回目だが、やっぱ怖いなあ。海は初めてだし」

「大丈夫だよ、ロタ。私も見ているから」

 助手席のイリカが励ます。


 ロタは、飛行用のアクセルを更に踏み込んで、慎重に高度を上げていく。

 飛行機能付き特別仕様車「イリカ号」は、四つのタイヤをゆっくりと内側へたたみながら、夜の高層ビルの狭間を飛ぶ。

 このエリアは三次高として使われているため、ビルとビルとの間は広めにあけられており、しかもきれいに直線状だ。ここは湾岸の都市。このまま海の上空へと抜けられる。


「前方に一台飛んでるよ。車間距離、気を付けて」

「了解」

 イリカの警告に、ロタが返事をする。


 海面には、十メートルおきに装置が二個ずつ浮かべられ、レーザー光を夜空へ照射していた。細く、左右に二本ずつ。「この内側を飛べ、はみ出すな」という目印である。

 右の窓越しに外をちらりと振り向けば、眼下に港と貨物船の明かり。

 次に、スピードメーターに目をやると、既に時速九十キロを突破。飛行の動力は、車体上部のプロペラと、後部の小型ジェットである。


「行き先と三次高が、偶然一致してよかったよ。本来なら、陸地の道路をぐるりと回らなきゃならないのに、こうして、真ん中の海を突っ切れたんだから」

 しみじみと語るロタに、

「すごい近道だよね」

 イリカも同意した。ロタは、

「イリカのおかげだよ」

 これで、所要時間は大幅に短縮。


 このワゴン車「イリカ号」は、一年半前、イリカ納品と同時期に受け取った物。

 イリカのメカ動力部を造ったマノウが、ハヤミたちと協力し、ついでに製作してくれたのだ。

 飛行機能も付けてくれたので、せっかくだからと、ロタは教習所で「特認免許証」を取得。これで三次高を利用できるようになったわけである。

 なお、現在はまだ、この免許を持つ者は少ない。制度が試行されたばかりで、皆、様子見をしているようだ。


 左右のガラス窓を、外のレーザーの光が何本もパパパパパッと高速で後ろへ流れていく。例えるなら、地下鉄から見るトンネルの壁の明かりのように。


 やがて、湾の向こう側の陸地が、前方に見えてきた。

 海沿いのコンビナートの照明や煙突、その向こうには堤防と街明かり。

(西アラタバシ四丁目は、真っ正面に見えてる街だよな。シュレナさん、今行くぞ。無事でいてくれ!)

 ロタは着陸態勢に入った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ