63 次に頼るべき相手・ひらめき
ハヤミは勤務時間中だそうで、一旦電話を切った。
事情をあれこれ尋ねず、即答してくれたことが有り難かった。ロタ、及びイリカを信頼してくれているのだろう。
(その代わり、後日、ちゃんと説明の機会を設けなければな)
そんなことが頭をよぎる中、ロタはワゴン車を発進させる。
「とにかく出発。どうするかは、走りながら考えるしかない」
「そうだよね」
と、助手席のイリカがうなずいた。
屋根が黒、他は銀色のワゴン車・イリカ号は、夜の国道を走り抜けてゆく。
真正面に、都市の湾岸に架けられた巨大ブリッジがきらめいているが、今のロタには夜景に見とれる余裕などなく、むしろいら立ちを覚える。
「ミカエ区っていったら、あの大橋を渡って、更に向こうだろ」
ロタのつぶやきに、
「うん。まだまだ、その先だよ」
と、イリカ。ロタは、
「道がすいてても、二時間は……」
「かかるよね」
「警察に連絡すべきかなあ」
「有力な選択肢だよね。問題は、何て言うかだけど」
イリカの指摘に、ロタは数秒黙る。三台ほど、対向車線のヘッドライトとすれ違う。ロタはカーブに沿ってハンドルを回しつつ、
「隠さず真実を告げるか。知り合いが危険な目に遭ってるらしいと」
「で、番地を言うわけだね」
「そう。せっかく、イリカとハヤミさんがつかんだ情報だ」
「ベターかもね」
イリカも認めた。
「どこか、車を停められる場所を探そう。運転しながらじゃ危ない。イリカも探してくれ」
「了解、ロタ」
ロタも決心がついた。迷っていたのは、こんなあいまいな根拠で警察が動くかという点。
もう一点は、シュレナがあえてロタへメールしてきたのは、内々に済ませたいのではないかということ。
(そうも言っちゃいられまい。シュレナさんの安全が優先だよな)
その時であった。
「待って、ロタ。今気付いたけど、この道なら、三次高が使えるよ!」
隣のイリカの叫び声に、ロタも、心をイナズマに撃たれたような驚き。
「ああっ、そ、そうだよ!
三次高がある。何で思いつかなかったんだろう?」
「次の次の交差点を右折だよ」
早くも、頭を切り替えているイリカ。
(さすがだな)
感嘆しつつ、ロタは「よし!」と指示通りに曲がる。キキッとタイヤが鳴った。
やがて、ワゴン車は上り坂の突き当たりに停車。
制服姿の男性係員が駆け寄り、
「特認免許証を拝見します」
「こちらです」
ロタが、運転席のドア窓からそれを手渡すと、係員は手元の機器をかざして確認し、
「結構です。お気をつけて」
と、カードを返却。
ワゴン車は、巨大ゲートをくぐる。その先は狭い道路。
遅めの速度を保ち、運転席頭上のレバーを引くロタ。
ウィーンッ、ゴン、キュルキュル……
車体の四隅からプロペラが出現。特別仕様車イリカ号は路面から浮上し、都会の夜空へ飛び立った。




