56 説明責任とは何か
シュレナの嫌味を聞きとがめ、
「言い過ぎ、シュレちゃん!」
さすがに、サミヤがたしなめてきた。
が、教頭は微笑して、
「一理あるね。裏を返せば、説明責任は最重要だということ」
けんかにならずに済んだので、シュレナも一旦は素直に教えを請うことにして、
「説明責任って、つまりどういうことですか?」
中学生のシュレナにとって、分かりそうで、もやが掛かった単語だ。
教頭は、
「要するに、後から理由を聞かれた時に、きちんと言葉で説明できるように、あらかじめ筋道を立てておくこと」
「理論武装……」
「そうとも言うね」
シュレナの口から思わず出た言葉に、教頭はうなずいた。
引き続いて、シュレナはせりふを発する。
「私のロボットを文化祭へ出すことは……」
教頭は再び首肯し、
「どうしても、外部の目からは奇異に映るよね。前例はない、うちは工学系の学校でもない」
(前例、前例ねえ……)
怒る元気も失せてきた。
黙っているシュレナへ、教頭は締めくくる。
「まして、市民ギャラリーで問題を起こしたわけだ。
この状況でロボットの展示を認めると、保護者や来賓から説明を求められた時、返答に窮する。たとえ事故を起こさなかったとしてもだ」
(けっ)
小さく舌打ちするシュレナ。せめてもの抵抗として、
「でも、やはり、やり方が雑でしょう」
しかし、その論についても教頭なりの答えはあったようで、
「それはそうなんだが、雑だと言うのなら、そもそも論としては、理学研究部の創部の経緯から考えても、丁寧だったとは言えないよね」
「えっ。何。どういうことですか?」
妙にスラスラした口調が不気味だ。シュレナが警戒し、身構えると、教頭は続ける。
「さっき、私が一理あると言ったのは、このことなんだよ。
昨年度、あなたが部を立ち上げたいと申し出た時にも、やはり、職員室では異論も出たんだ。一年生の、それもたった一人の活動に、プレハブの部室を与えるなんて、優遇し過ぎだとね。女子一人で、安全面でもどうかと。
でも、ゆっくり検討する余裕もなく、その場の雰囲気や勢いで許可したんだ。サミヤ先生のプッシュもあったし」
シュレナとサミヤの目が合う。軽くうなずくサミヤ。
「あれも雑な対応ではあったのだよ。もし、まともに検討していたら、あれも不許可だったかもしれない」
淡々と述べる教頭。
シュレナには予想外の説明であった。
「お、恩着せがま、そ、それとこれとは……」
言葉が途切れる。言い返したかったが、全くのこじつけでもなさそうだ。
多忙でラフな雰囲気の職員室だからこそ、恵まれた部室をもらえた。
ただし、文化祭の出展申請も、後回しにされた。
背中合わせで、どちらも成り行きにすぎない。
それなりにつじつまは合っているし、その事実を理解する聡明さも、シュレナは持ち合わせていた。




