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50 応援要請、少女から老人へ

 数時間後。同じ日の夕方。

 ロタは一人、シュレナと電話で話していた。

 場所は、公園のベンチ。そばには大木が植えられ、暑い日差しをさえぎってくれている。周囲に人は少ない。

 足もとには、品物が入った買い物袋が二つ。


 家から電車で三駅ほど行ったところの、ショッピングモール。

 ここで一人、買い出しをしていた時、シュレナからメールが届いたのである。あの夏祭り以来の連絡であった。

 用件は、「大事な話があるので、今すぐ電話で直接話したい」とのことだったため、近くの公園へ移動し、スマホで電話をかけたのだ。


 最初の十分ほど、ロタは、ほぼ、シュレナの話の聞き役であった。

 電話越しのシュレナの声音は、一応、落ち着いてはいた。だが、時折、震えたり早口になったりし、怒りや動揺を抑え込んでいる様子がうかがえた。

 実際、聞くほどに気の毒な内容であった。

 何と、今日、文化祭へのロボット出展を不許可にされたという。原因は、春の文化展示会だそうだ。


 一通り事情を聞き終えたロタは、

「驚いた。ひどい話ですね。かける言葉が思い浮かばんな……」

 正直な感想であった。

「ですよね。で、明日、朝、教頭先生と話し合うんですけど、出来レースみたいな感じなんですよ!」

 と、スマホを通したシュレナの声。

「要はガス抜きか。不許可は既定路線だと」

「です。何か、いい方法、ないですかねー?」

(さて、どう答えたものか)

 ロタは頭をかく。電話だから、自分の仕草を見られる心配はない。対面で頭をかいたら非礼だが。


 言葉を選びながら、

「んー。虫型ロボットの誤作動は、人間でなく、あくまでイリカが手を近付けたことが原因だったわけだから」

「はい!」

 ロタがちょっと話を区切っただけで、元気よく相づちを打ってくるシュレナ。きっと、わらにもすがる思いで聞いているのだろう。

(そんな前のめりに聞かないでくれよ……)

 これがロタの胸中ではあったけれど。

 ロタも、約四十年サラリーマン生活をしたのだ。その経験から言って、これは覆せない気がした。理不尽ではあるものの、とりたてて珍しい事例ではない。


 ロタはゆっくりと、

「私がイリカを連れてケミホ中学へ出向き、その辺を御説明すれば、あの虫ロボットが人間には無害であることを納得させられるかもしれないとは、思わなくもないんですけどね」

「それはダメじゃないかと。お二人が学校に来たら、大騒ぎになりますよ。特にイリちゃんは」

 即座に否定してきたシュレナ。

「まあ、そうか。俺たちとシュレナさんの関係も、説明しにくいしな」

 内心、却下されてロタはホッとしていた。

 正直、

(市民ギャラリーの件が再燃したのなら俺にも責任はあるだろうけど、文化祭のことまで責任持てないよな。それは学校側が決めたことだろ)

 シュレナには悪いが、これがロタの本心だった。

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