49 突破したい子供、地ならしする大人
サミヤは説明を続ける。
笑みこそないが、さっき部室に入ってきた時に比べれば、顔つきの険しさは薄らいでいる。
シュレナにはそれがしゃくに障った。一番言いにくいことを言い終わったので、安堵しているのが明らかだったからである。
「シュレちゃんが今言った通りだよ。
春の市民ギャラリーの件が尾を引いてたの」
シュレナも引き下がれぬ。
「けど、翌日にはすぐ報告したじゃないですか。それも朝一で」
虫型ロボットの誤作動と、出展の自主中断の件だ。
サミヤは首を縦に振り、
「それはそうだね。あれは偉かった」
(褒めてくれてもうれしくねえよ)
内心、毒づきながらも、言葉遣いは丁寧に、
「職員室で、横で教頭先生も聞いてましたよね。あの時は私、何も言われなかったのに!」
「あの場ではね」
「意味わかんないですよ。何で今さら!」
サミヤは深めに息を吸うと、
「実はね、その翌日だったかな。市民ギャラリーから学校へ、問い合わせの電話があったんだよ」
「えっ。く、苦情の電話ですか?」
初耳だった。
今度は、首を横に振るサミヤ。かすかにほほえんだように思われた。
「安心して。違うから。
ただ、ロボット出品から誤作動、自主回収の件まで、ケミホ中学側はちゃんと把握してるのかを確かめたかったみたい」
「信用ないなあー」
「シュレちゃん、中学二年生って、世間的にはまだ子供なんだよ」
「で?」
「あの文化展示会でロボットを出すのは極めて異例で、ギャラリー事務局でも許可するか、もめたんだって。子供が作ったロボットを展示させて、もし他の展示物に傷でも付けたらってね。
そんな中、誤作動が起きて」
シュレナはぽつりと、
「それ見たことか……」
「……という言い方は、してなかったけどね、電話では。
でね、教頭先生も怖がっちゃって。何か起きたら責任問題だから。それでも何とかならないかと、私は思ったのだけど」
話が途切れたので、シュレナは少し考えてから、
「せめて、私からも教頭先生を説得させてくださいよ」
渋られるかと思いきや、意外にもサミヤはあっさりうなずいて、
「そう言うだろうと思ってね。セッティングしといたよ」
「本当ですか!」
「明日の朝七時半に、職員室にいらっしゃい。教頭先生も悪いとは思ってるようで、話し合いの場をつくることは了承してくださったから」
(さすがはサミヤ先生。こういうところ、好きだなあ)
感激し、率直にそう思う。
一方では、
(やけに手回しがいいよねー。もう、望み薄なんだろうな。大人同士で、話はついてるのかも。汚い汚い)
とも読んでいた。中学二年は、確かに子供だ。が、世間の悪意はそれなりに感じ取れる年齢でもある。
だからこそ、
(このままで済むと思うなよ。私には、未来人っていう強力なブレーンがいるんだから!)
シュレナは作戦を練り始めていた。




