47 新学期、始業式、部活動、顧問
八月、最終週。夏休みが終わり、二学期となった。
シュレナにとって、中学二年生の夏休み最大の思い出は、何といっても、イリカ・ロタと行ったあの夏祭り。
ただ、家族旅行など、他にも楽しい行事はあった。
また、時々は登校し、理学研究部のプレハブ部室で活動もした。主な内容はもちろん、虫型ロボット、通称「シュレナビートル」の改良。
十月初めの文化祭へ向けての準備だ。この小さなロボットを展示するのである。
「ユツコ、更に日焼けしたねえ」
朝、ケミホ中学校の廊下を歩きつつ、横のユツコにシュレナが話しかける。始業式が開かれるため、全校生徒が体育館へ移動中。
制服は、シュレナが長ズボン、ユツコは短いスカート。いずれも紺色。
二人とも、上は白い半袖ブラウスである。
ユツコがシュレナの方に顔を向けると、ショートカットの髪が耳を滑るように揺れた。
夏休み中もソフトボール部の練習があったためだろう、ユツコはひたいからあごまできれいに日焼けしていた。二つの黒々とした瞳は窓からの光を映し込んで、こちらも美しい。
「そっか。一学期より焼けてる?」
「かなり」
「自分じゃ、分からんのよね」
「ちょっとずつ変化するもんね」
「うん。そう言うシュレは色白だねえ。外、出なよ、外」
シュレナは苦笑交じりに、
「学校来ても、私は部室にこもりっきりだったからなー」
「熱中症、気を付けなよー。あのプレハブ、冷房ないんだよね?」
「ない。ボロい扇風機だけ。この前なんか、途中から制服もジャージも着てらんなくて、ほとんど下着で作業してた」
それを聞いたユツコは、歯を見せて「カーッ」と声を出し、
「アホか。盗撮されっぞ」
「だね。私もどうかと思ったし、それ一回きりだよ」
シュレナはうなずいた。
始業式と、各教室での掃除や連絡が済めば、本日は午前中で下校できる。
シュレナは部活のため、一人、校舎離れのプレハブへ。
弁当を平らげた後、ビニールシートを床に敷いて、部品を並べ始める。虫型ロボット改造の準備だ。
その時、ノックの音がして、顧問のサミヤ先生が入ってきた。
白衣姿。やや恰幅の良い、女性理科教師。
シュレナは立ち上がり、
「あっ、先生、二学期もよろしくお願い……」
します、まで言おうとして、口がもつれた。
いつになく、サミヤの表情が張り詰めていたからだ。
(えっ。私、怒られるようなこと、何かしたかな?)
だが、説教する前の顔ではない。
むしろ、
(言いにくいことを言う前の顔?)
サミヤはドアを閉め、床の部品にちらりと目を落とし、
「シュレちゃん、ごめんなさい。落ち着いて聞いてほしいんだけど」
(何。いきなり謝られた!)
サミヤとは一年以上の交流だが、このような前置きは初めてだ。ざわり、と首筋の辺りがうずく。
続く言葉。
「悪い知らせがあるの」




