39 プレゼント、少女型ロボットから理系少女へ
イリカは、浴衣風ケープの襟元へ片手を入れ、薄い封筒を取り出す。水色。
イリカの手は複雑な動きは出来ないが、中指と薬指の間へ封筒を器用に挟み持ち、シュレナに差し出す。眺めとしては、手のひらの上に封筒が突き出ている感じだ。
「はい、これ、プレゼントです」
「はあ。ありがとう、ございます……」
イリカへ答えるシュレナ。突然の展開に困惑し、口調はうつろである。
イリカの指から、封筒をもらう。まるで、郵便受けのすき間からシュッと抜き取ったような手応えであった。
軽い。中身は紙一枚程度か。
「あけていいんだよね?」
「もちろん」
とイリカ。ロタもうなずく。
のり付けはされていなかった。夜の暗さではっきりとは見えないが、封筒は無地で、何も書かれていないらしい。
入っていたのは、ハガキよりやや小さな厚紙が一枚。
「写真だ」
シュレナはつぶやいて、街灯にかざし、
「これって。ええっ!」
息をのむ。
写っていたのは、男一人と、大きな金色のロボット一体であった。
シュレナは、目の前の二人を三回ほど、交互に眺め、
「これっ、もしかしてっ。イリちゃんとロタさん?」
「さっすがー」
「一発で分かったか」
イリカ、ロタが、ほとんど同時に答える。そろって笑顔だ。
(うわあ。これ、すご過ぎるよ。伝説の序章じゃん!)
シュレナは、胸の高鳴りを抑えつつ、写真と二人を見比べて、
「ロタさん若い!」
「七年くらい前の写真だからねえ」
ロタがはにかんだ。
「イリちゃんは、目が一緒だ」
青と緑のオッドアイのことを述べたのである。
「そうだね」
シュレナのコメントに、イリカが首肯する。ロタに比べるとクールな反応。
写真は、室内で撮られた物であった。
天井が高い。壁や床は、コンクリート。広い倉庫か、工場の中であろうか。
グレーのスーツ姿のロタが、カメラ目線で写っており、膝を浅く曲げて、何やらおぼつかない体勢で立っている。急にカメラを向けられたのか、引きつったような笑み。
その背後には、ごつい巨大ロボットが立っていた。
身長こそ二メートル以下に収まってはいそうだが、横幅がある。壁か、岩のような威圧感だ。万一、こちらへ倒れてこようものなら、写真のロタも、無事には済むまい。
頭は球体。髪はない。目は、だ円形。やや、つり目だ。ボコッと突き出ており、電球のようにらんらんと光っている。
鼻は、小さな突起。口は造形されていない。
シュレナは、
「イリちゃん、金色だったんだね」
「うん。顔だけベージュで」
「表面は合金?」
「そう。手にだけ、人工皮膚をかぶせたんだ」
首を縦に振るイリカ。
確かに、写真のイリカは、手だけがリアルであった。サイズは人の手の倍ほどあるが、外見は人間の手とそっくりだ。
そんなイリカの右手を、少し若いロタが、両手で握っていた。




