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37 二足歩行に資する頑丈な両脚

 シュレナが絶句しているところへ、

「見てみる?」

 と、前かがみになるイリカ。髪の毛は後ろで縛ってあるようで、垂れてはこなかった。片手で、イリカは自分の浴衣の裾に触り、膝の近くを小さく広げる。

「そっ、そんな、いいですよ……」

 目をそらすのも失礼な気がして、シュレナの目が泳ぐ。

「むやみに見せる気はないから安心して。話題がそっちに行ったから、ついでですよ」

 そう答え、青と緑の瞳をシュレナと合わせ、優しくほほえむイリカ。巨体であるため、かがんでも顔の位置はシュレナより上だ。


(そんなこと言ったって……)

 助けを求めるように、思わずロタの方へも視線を走らせると、

「シュレナさんにとって、少しでも勉強になったらいいなと思ってますから。滅多にない機会ですし、怖くないのならば、遠慮はしないで」

 と、ロタも勧めてきた。真顔ではあるが、物腰は柔らかだ。


 初めて会った時の、例のケープと謝罪、握手の件もある。

 そのため、三人の空気はどことなく気まずく、シリアスではある。

 だが、ロタとイリカの態度からは、率直な善意が伝わってもきた。

 既に、「この辺りまでは見せてあげよう」などと、ロタとイリカの間で打ち合わせでもしてあるのかもしれぬ。


(チャンスだよね。変に気を遣わず、ここは話に乗ろう)

 そのように決めたシュレナは、

「怖いとかはないです。よろしければ、じゃあ……」

 イリカは、キュルッと首をきしませながらうなずいて、

「分かりました。どうぞ」

 開きかけていた裾を、更に左右へはだけさせ、膝を露出させる。

 平静を装おうと身構えていたシュレナだが、ハッと息をのんでしまった。その音は、二人にも聞こえていたに違いない。


 正直、人間の脚には全く見えなかった。

 例えるなら、太いパイプに人工皮膚をかぶせたような外見である。

「脚、上げるよ」

 頭上からイリカの声。シュレナがちらりと上を見ると、街灯に照らされたイリカと目が合った。

 シュレナは「はい」と言おうとしたが、その前に、イリカの膝からウィーンッとモーター音が立ったため、再びそちらへ目をやる。イリカが、左足を少し持ち上げたのだ。


 膝の位置には、丸みを帯びたサポーター状の柔らかな部品が使われ、太ももと、すねから下をブリッジのようにつないでいた。

(あっ、すごい!)

 これまで隠れていた継ぎ目が、人工皮膚から姿を現した。膝を上下に挟むように、銀色の横線が入る。骨格の一部が見えているのだ。キリキリキリと、回転音も。

「膝の両側面には歯車が入ってるの。今のは、それが回った音です」

 イリカは解説した後、足をまた下ろした。手を放すと、浴衣の裾がパサリと戻り、脚を覆う。

「あ、ありがとう、ございます……」

 圧倒され、何とか一言だけ返せたシュレナ。

「御覧になってみて、どうでした?」

 ロタが問いかけてきた。

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