30 プールといえば、夏といえば、祭りといえば
水着の上からシャワーを浴び、外のプールサイドへ出る。
水泳用帽子のすき間から水が垂れて、首筋がひんやりした。シュレナの肩がブルッと震える。
「既に涼しいんだけど。もう、シャワーで十分じゃね?」
「プール、来月からでいいよねー」
前の女子二人が話している。他の人も、少々肌寒く感じているようだ。しかも、この二人の水着はワンピース型。太ももまで出ており、なおさら寒そうだ。
プールサイドに、水着の紺色がズラリと並ぶ。三十名ほどの女子。短パン型のセパレート水着は、シュレナも含めて半分ほど。今は過渡期なんだろうなと思う。
過渡期といえば、このプールも数年後には閉鎖されるとのうわさがある。
プールは維持費が大きく、どの学校にも負担となっているらしい。少子化の影響もある。
実際、近隣の学校では、スイミングスクールのプールを借りている。
(ここのプールも結構ボロいしなー)
老朽化によるでこぼこを、裸足の裏に感じつつ、準備体操をするシュレナ。
教師は年配の女性である。
天候は、いまだ薄曇り。時折、日が差すが、暑いという感じではない。
だが、準備運動をすると汗ばみ、プールの水も、シャワーほどには冷たくはなかった。
整列し、ビート板のバタ足から始まり、クロール、背泳ぎと、皆で順番に泳いでいく。シュレナも、人並みには泳げる。
授業終盤には、自由時間も。
シュレナは、泳ぐでも遊ぶでもなく、水にのんびり漂う仕草。
「プール入ると、夏が来たって感じですなあ」
平泳ぎで寄ってきたユツコが、おどけた口調で話しかけてくる。
ソフトボール部で鍛えた腕がたくましい。水着はハイカットで、スクール水着というより競泳水着に近い。
「めっちゃ早いよね。あと一月で夏休み」
シュレナが答える。うなずいたユツコが、ザバッと水から上がり、プールサイドに腰かけた。
「日焼け跡」
「見んな」
シュレナの指摘に、苦笑いのユツコ。
ソフトの練習で、ユツコの太ももにはハーフパンツの跡が付いていた。脚の付け根までがやや色白だ。肩も。あとは小麦色の肌。
「夏休みといえばさ、シュレは八月のお祭り、行くの?」
地元で有名な夏祭りのことだ。
「行く。ユツコは部活?」
「うん。今年はレギュラーだし無理」
「残念。前回はギリ間に合ったのに」
去年、祭り終了間際に二人は合流し、少し遊べた。
ユツコは、
「ガイチ君とか誘ったら?」
「ガイチねえ……」
今度はシュレナが苦笑いする。
クラスメイトの男子で、ルックスも良く、仲も悪くはない。
ちょっかいを出してくるのも、「シュレナに気があるからだ」というのが、最近のユツコの説だ。
もっとも、ガイチを含め、シュレナには好きな男子はいない。
(あっ、でも、お祭りに誘いたい相手ならいるじゃん!)
ふと、シュレナは気が付いた。




