祭りの詳しい工夫とかは……
「……ってなわけで、りんご飴が美味かったわ」
「「 そ、そうですか 」」
2人が何か言いたげな顔でこちらを見てくる。
「それで、祭りの詳しい工夫とかは……」
「あぁ、りんご飴の飴生地を作る時、
鍋の中のグラニュー糖は出来るだけ混ぜない方が
艶のある飴になるそうだぞ」
「知ったこっちゃないですよ、そんなことっ!!」
カティは耐えきれず、ついにはぐわっと身を乗り出して叫び出した。
「そもそもなんですか!?
ずーっと、りんご飴りんご飴……
アナタが好きなのはよぉく分かりましたけど、頼んでおいた祭りをより良くするための情報が
ちっともないじゃないですか!!」
「まぁ、タケルも楽しんでたみたいだし……」
サラが隣で立ち上がったカティをなだめる。
「本当に、りんご飴以外の話題とかは」
「一切ない」
「……そうですか」
淀みのない返事にカティはなにかに諦めたように
ストンと椅子へ戻った。
いくら俺とはいえ、流石にこの空気に耐えれるほど
強靭な精神は持ち合わせていない。
「とは言ってもだな、祭りの知識なら
知ってるものがあるし、なにか問題があるなら
少しぐらいなら役に立つ事を言えると思うぞ?」
今更な苦し紛れの一言だが、
「仕方ないですね、せめて質問には真面目に答えてくださいよ?」
よかった。どうやら許してくれたようだ。
「じゃあ、早速聞いてもいい……?」
「もちろんだとも」
あえて大きな挙動で頷いて見せる。
一拍置いて、そっとサラが口を開く。
「屋台ってどんなものを売ってるの?」
知らないことを聞かれはしないかと心中ドキドキだったが、意外にも答えやすそうな質問だ。
「どんなものと言われるとなぁ」
手短に、食べ物やその場で軽く遊べるような
オモチャとかかな。
と答えるのは、おそらくサラが聞きたい
答えではないと思う。
とは言っても、食べ物ならばたこ焼きと焼きそば、それとかき氷ぐらいしか思い浮かばないし、
オモチャなんかも水ヨーヨーだとか、お面だとかしか思いつかない。
どれもこの村で実現可能なのかが不明なので
つい言葉に詰まってしまう。
答えやすそうと感じておきながら
結局は、
「食べ物ならその場で手軽に食べれて美味しいもの、遊びならくじ引きとかだな」
などと曖昧な返答に終わってしまった。
「食べやすくて美味しい……」
「今屋台を運営しようとしている人達は、何を売ろうとしているんだ?」
「えっと……村で取れた果物とか、パッコとかかな」
「パッコ?」
「小麦粉を牛乳で薄く伸ばして焼いた生地に、フルーツなどを包んだお菓子ですね。わかりやすく言えば、クレープです」
聞いてみると、この村で今話題沸騰中の
お菓子だそうだ。
作るのも簡単で誰でも手軽に食べれるのが
好評らしい。
「というか、牛いるんだな」
てっきり俺が施さなければ一切発展しないと思っていたのだが、案外そうでも無いらしい。
「そうですね、タケルがここにいない時でも
時間は流れているので、徐々ではありますが
発展していきますよ」
流石に大きな変化などはあなたが
もたらさない限りありませんが、
と追加の一言。
自然と時間が過ぎ、人が生活し、村が発展するという事実に、ゲームの中の世界だということを忘れてしまいそうになる。
俺が住む世界とは違う、もうひとつの世界と
言われても納得だ。
今更な現代の進歩に驚いていると、
アドバイスを求めるポータの視線を感じる。
「美味しそうでいいんじゃないか?」
「じゃあ、やっぱりパッコは確定だね」
「しかし、パッコだけというのも少し味気ないですね」
「そうなんだよね……」
何かいいものはないかと悩む2人。
俺の世界で簡単に作れて人気なものと言えば……
「かき氷とかどうだ?」
「かきごおり?」
「氷を細かく削って、甘いシロップを
かけた料理……かな」
「そういえば、そんなのもありましたね」
「氷を、細かく……」
カティは知識はあるようで、頷いているが
サラはイマイチ全貌が想像出来ていないような
様子だ。
「氷って美味しいの?」
なるほど、
どうも、この世界の人々は氷が
こっちの世界より馴染み深いものではないらしい。
確かに飲み物を冷やすにしろ、食材を冷やすにしろ
魔法で全部こと足りるしな。
魔法がある故のこちら側の様な発展とは
違った魔法中心の進化をしているのだろう。
おそらく、氷など魔法で生み出されるものの一つ、
ぐらいの認識しかない。
ならば、言葉で説明するより
見てもらった方が良さそうだ。
「1度作ってみようか」
*
折角だから、とカティは村の人を呼び
村の役所のような建物の一室を使って
かき氷を作ってみせる事となった。
作るといっても削って甘い蜜をかけるだけなので
そう大したことはしないのだが、
普段は姿を見せない俺が、久々に顔を見せるやいなや料理を振る舞うと言うのだから
物珍しさで集まるのも無理はなく、
大きくぐるっと囲われる程度には人が集まった。
うぅ、人の視線が……
「さて、バシッと決めちゃってください!」
人の気など露知らず、エプロン姿のカティは
調理開始の合図を出した。
「で、では用意するものを出していきます」
3分で料理を紹介する番組の
如く、自分が持てる最大限の愛想を顔に
貼り付けて説明を始める。
「なに怒ってるんですか?」
なんて言葉を気にする余裕など無いまま、
予め用意していた氷と、果物から作ったシロップを
机の上に置いていく。
「この氷は、魔法によって出現させたものでは
ありません。水を冷やして作ったものです」
たった数分程度の
お手軽、異世界お料理教室が始まった。




